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1-1 異世界への転生1

しばらく更新できず、すみません。

Side M


「まだか!まだ産まれんのか!」


広い部屋の中で、若い男性が落着きなくウロウロと歩き回っている。


「旦那様、落ち着いてください。旦那様がいくら焦っても、状況は変わりません」


そう、(いさ)めるように話す男性が、もう一人。

こちらは、先ほどの男性より少々年上のようである。


「それは分かっている!だがな、もう丸一日だぞ?いくらなんでも時間がかかりすぎだ!」


初産(ういざん)とは時間がかかることが多いのです。それほど心配されずとも、オルバ様もおりますし、陛下が上級治癒魔法を使えるアリシア様を派遣してくださったのでしょう?」


「クラウス、そうは言うがな、システィナにとっては初めての出産なのだ。心配にもなるだろう」


男性は、ため息をついて、どかりとソファーに座り込んだ。


「旦那様、何か飲物と、軽食を準備させましょう。昨夜から、何も召し上がっていないようですので」


「いらん。そんな気分ではない」


「旦那様がやつれていては、子供を産んだばかりの奥様に余計な心配をかけますよ?」


 そう言って、クラウスと呼ばれた男性は部屋に備え付けのベルを鳴らそうとした。その時、ドアをノックする音に続き、返事をする間もなくドアが開かれ、息を切らせたメイドが飛び込んできた。


「旦那様!お産まれになりました!」


 丸一日、待ち望んだ知らせだった。


「本当か!」


 男性は、その知らせを聞くと止める間もなく部屋を飛び出していった。


「旦那様、お待ちください!すぐにはお会いになれません!」


 そう叫ぶメイドの声など、一切耳に入っていないようだった。


Side F


 時は少し戻る。


 同じく広い部屋に、こちらはベッドが置かれ、光が入りすぎないよう窓辺には衝立(ついたて)が置かれ、少々薄暗くなっている。

 ベッドには、白いナイトドレスを着た女性が横たわっていた。その周りには、メイドが数名と、老婆(ろうば)が一名、黒いローブを着た女性が一名。

 ベッドの上でメイドに手を握られている女性は、額にびっしりと汗を浮かべ、荒い息をついている。


「オルバ様、大丈夫なのでしょうか?あまりに時間がかかり過ぎている気が……」


手を握るメイドが、老婆に顔を向けそう問いかける。


「問題ないさね。多少時間がかかっちゃいるが、初産なら、これくらいかかることも珍しくないからね」


 ベッド脇に座る老婆は、そう言葉を返した。


「それにのう、アリシア殿がおるから、多少何かあっても、問題なかろうて」


 そう言って、ベッドを挟んで向かいに立つローブの女性に目を向ける老婆。


「オルバ様、さすがにそれは買い被りですわ。」


 ローブの女性、アリシアはそう言って小さく笑みを漏らし


「と言いたいところですけど、陛下からも頼まれていますし、私もだてに中級治癒魔法が使えるわけではありません。王妃様達のお産にも立ち会いましたから、何かあれば全力で対処させていただきますわ」


そう言葉を続けた。


「お二人がそうおっしゃるのであれば……」


とメイドが安堵の息をついた時、ベッドの女性がひときわ苦しげな声を上げた。


「システィナ様!」


慌てて声を上げるメイド。


「慌てずとも大丈夫よ」


それを止めるオルバ。


「もう間もなくよのう。ほれ今じゃ、いきむんじゃ!」


 ベッドの女性は、その声に合わせて、メイドの握る手に力を込めた。

 次の瞬間、部屋中に赤子の産声(うぶごえ)が響き渡った。


「ふむ、無事に産まれたようだの。ほれ、待ちくたびれておるじゃろうから、旦那様へお知らせしてこい」


 オルバは、ドア付近のメイドへ指示を出すと、産まれたばかりの赤子を抱き上げた。

 

「アリシア殿、いったん後をお任せして良いかのう?わしは、この子を産湯(うぶゆ)()けるからの」

 

「お任せ下さい。どちらにしろ、あとは(わたくし)の出番でしょうから」


 オルバは、赤子を部屋の隅に用意されていたお湯の入った(おけ)へとつける。泣き叫んでいた赤子は、気持ちよさそうに目を細めるのであった。


ベッドの側に残ったアリシアは、横たわる女性に声をかける。


「システィナ様、お疲れ様でした。これより、治癒魔法を掛けさせていただきますわ」


「アリシア、お願いするわね」


女性は、疲れ切った顔に薄く笑みを浮かべた。


「では。」


アリシアはローブから杖を出しシスティナへ向けると、何やら詠唱を始めた。


「我は願う この者に大いなる癒しの力を『完全治癒(オールヒール)』」


 システィナの体が、一瞬光に包まれる。それが晴れると、先程まで青白かった顔に仄かに赤みが差していた。


「それではシスティナ様、お召し替えを」


メイドが汗で濡れたナイトドレスを脱がせ、準備していた新しいナイトドレスを着せようとしたとき……


「産まれたんだな!」


 ノックもせず、廊下につながるドアから男性が飛び込んできた。


「旦那様、ダメです!システィナ様はお召し替え中です!」


 後ろからメイドの叫び声が聞こえてきたが、少々遅かったようだ。部屋中の視線が、男性へと向けられた。それは、大いに怒気(どき)(はら)んだもので……


「ノックぐらいせんか!このバカモンが!」


怒鳴りつけたのはオルバであった。オルバに抱かれていた赤子は、すでにメイドの手への渡されていた。


「す、すまん。あまりにも時間がかかったものでな、産まれたと聞いて慌てたのだ」


「アルバート、おぬしが慌ててどうする。ほれ、いったん廊下に出て待っておれ」


オルバは、アルバートを廊下へと押し出し、ドアを閉めた。


「オルバ様、ありがとうございます」


「なんのなんの。一時(いっとき)すれば落ち着くじゃろうて」


「ふふ、そうですわね。ではメアリ、急いで続きをお願いできるかしら。あまり待たせると、落ち着いた

アルバートがまた暴走するわ」


システィナはくすくす笑いながら着替えの手を止めていたメイドへと視線を向けた。


「あ、はい、システィナ様。すぐに」


メアリと呼ばれたメイドは、テキパキと着替えの続きを手伝うのだった。


―――――――――――――――――――――――


数分後……


「システィナ様、お子様でございます。立派な男の子でございますよ」


オルバからメイドへ渡され、産着(うぶぎ)を着せられた赤子が、システィナの手へと渡された。


「ありがとう。あら、髪の色はアルバートと同じね。眠ってしまっているから、瞳の色は分からないけれど」


「はい、きれいな金髪でございますね。それでは、旦那様をお呼びします」


その頃廊下では……相変わらず、アルバートが落ち着きなくドアの前をウロウロしていた。


ドアを開けたメイドは、その様子を見てそっとため息をつき


「旦那様、システィナ様のお召し替えが終わりました。お子様は寝ていらっしゃいますので、お静かにお願いいたします」


そう声をかけた。


「おお、やっと終わったか!待ちくたびれたぞ!」


「お静かにお願いいたしますよ」


メイドは、再度そう告げると、アルバートを招き入れるべく、ドアの内側へと下がった。


「システィナ」


メイドの忠告通り、アルバートは静かにベッドへ近寄る。


「アルバート、オルバ様とアリシアのおかげで無事に産まれましたよ。男の子です」


システィナは腕の赤子をアルバートへと差し出し、アルバートは恐々と受け取った。


「うむ、あまりに時間がかかったので心配していたが、二人とも無事なようで何よりだ。オルバ殿、アリシア殿、後ほど応接室へと来てくれ。改めて礼を伝えたい」


そう言って、向かいに立つ二人へ深々と頭を下げた。


「礼などいらんよ。わしは仕事をしただけだしのう。それに、貴族家の当主が、そう易々と頭を下げるもんではない」


「そうですわ、アルバート様。私も陛下に頼まれましたのと、システィナ様の友人としてお手伝いしただけですもの。改めてお礼など必要ありませんわ」


「しかし……いや、分かった。では、用意してある食事だけでも、食べて帰ってくれ」


二人の言葉に、一瞬躊躇(ちゅうちょ)したものの、アルバートはそう返した。


「分かったわい、それだけは頂いて帰ろう。後日、また様子を見に来るからの」


「私も、お言葉に甘えましょう。システィナ様、私も後日また伺いますわ」


「はい、オルバ様、アリシア、待っていますね」


「重ね重ね、本当に世話になった」


アルバートは、出ていく二人を見送りシスティナへと向き直った。


「システィナ、よく無事に産んでくれた。時間がかかるとは聞かされていたが、心配したぞ」


アルバートは、腕の中の赤子をシスティナへ返すと、そっとベッドの端に座りシスティナの肩を抱き寄せた。とたんに、システィナに抱かれていた赤子がぐずり始めた。


「あらあら、お腹が空いたのかしら?アルバート、しばらく向こうを向いていてくれる?」


「あ、あぁ……」


顔をそらしたアルバートの後ろで、小さく衣擦れの音がして、すぐにチュパチュパと何かを吸うような音がし始める。


「産まれたばかりだけど、よく飲むわね。いっぱい飲んで、大きくなるのよ」


それからしばらくして……


「アルバート、もう良いわ。それよりも見て、この子の瞳。私よりも少し濃いけれど、ブルーだわ」


アルバートは、すっかり機嫌のよくなったわが子の顔を覗き込む。


「本当だな。髪は俺と同じ金髪、瞳はシスティナ譲りのブルーか。これは、将来期待できそうだな」


「アルバート……それはさすがにまだ分かりませんけど、まずはこの子の名前、考えてあるのでしょう?」


「それもそうだな。あぁ、この子は『アレクシス』だ」


「アレクシス、立派な名前ね。強く(たくま)しく育って、幸せになるのよ」


そう語りかけるシスティナは、すっかり母親の顔になっていた。

家族には内緒で執筆しており、家族共有のため、なかなかPCを立ち上げることができませんでした。

仕事中に少しずつ書き溜めしておりますので、間は開くと思いますが、更新はさせていただきます。

また、数ヶ月中には自分用のPCを購入できればと思っています。


まあ、やっぱり私は小説を読むのが好きなんだな、と思う、今日この頃です(笑)


さて、言い訳はここまでとして、パパさんとママさんが出てきましたよ!

貴也、改め、アレクシス。これからどう成長し、どんな人生を歩むのか、ご期待ください!(←自分でハードルをあげる奴がここにいまーす(笑))

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