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プロローグ2

2話目です!うん、やっぱりPC以外での執筆はきついですね。スマホで数千字は……。

 次に気付いたとき、見たことのない真っ白な空間にいた。自分が立っているのか寝ているのかも分からない。手足の感覚もない。本当に目で見ているのか、そう思い込んでいるだけなのかも分からない。


「ここはどこだ?俺はどうなっている?」


 そう声に出して(つぶや)いたつもりだった。しかし、その声は耳に届かなかった。今にして考えてみれば、すべての感覚がハッキリしなかったのだから、声に出したつもりになっていただけだ。実際に声に出していなければ、聞こえるはずはない。自分では冷静なつもりだったが、そうでもなかったようだ。

 と、その時


「あなたはトラックに撥ねられた後、道路に叩き付けられて即死したのよ」


 そんな女性の声が()()()()。『聞こえた!?』そう意識した途端、すべての感覚が徐々に戻り始めた。


 『真っ白い空間』と思っていたのは、間違いなく、どうやら、俺はその空間の中で立ち尽くしていたようだった。服は、白のワイシャツに黒のスラックス。最後の記憶にある、仕事帰りのままだ。


「あなたが立ったままでは話しにくいから、座ってくれるかしら?」


 改めて声をかけられ、その方向へ視線を向けると、艶やかな長い黒髪に、キリッとした一重の黒い瞳、紅を()いたように紅い唇、服装以外は『大和撫子(やまとなでしこ)』と言えそうな美女が優雅にティータイムを楽しんでいた。服装は、西洋の神をイメージするような、白いドレスのようなものだった。


「貴女は?」


 俺の問い掛けに、女性はティーカップをソーサーへ戻し、俺へと視線を向けた。


「私は、あなた方からは女神と呼ばれる存在よ」


「はぁっ!?」


 耳を疑った。というよりも、(にわか)には信じられない。日本で生きてきた俺にとって、神の存在はただのお伽噺(とぎばなし)だ。初詣は神社に行き、葬式は寺で行い、クリスマスを楽しむ。多くの日本人が、神の存在など感じたことがない。もちろん、俺もそんな一人だから。


「とは言っても、私は地球の神じゃないのよ。地球とは別の世界、一部からは『異世界』と言われる世界の神よ」


 その言葉に、俺は再度耳を疑った。『異世界』そんなものは、小説やマンガの中だけの空想だと思っていた。しかし、目の前の『自称・女神』を名乗る女性は『異世界の神』だと言う。


 医者で、リア充だと思われることも多い俺だが、実は結構オタクだ。高校時代は、年間300冊以上、今でも年間100冊以上はラノベを読むし、マンガも含めれば年間400冊くらいは読んでるかもしれない。

 今流行りの、『異世界転生・チート・ハーレム物』のネット小説も、結構好きだったりする。

 休日も、録り貯めしたアニメの鑑賞に忙しい。

 つらつらと、そんなことを考えている間にも、目の前の『自称・女神』は話を続ける。


「さっきも言ったけど、あなたは亡くなったの。けどね、前世の行いと、あとはあなたの希望を考慮して私の管理する世界に転生してもらうことになったのよ。地球の神からも頼まれたし、私自身もあなたの経歴を見て、転生させるに相応しいと思ったからね」


本当(マジ)かっ!?」


現実味がなさ過ぎて、半分以上思考の麻痺した状態でも『転生』という一言だけは聞き逃さなかった。


本当(マジ)よ。さっきも言ったけど、あなたには私の管理する世界に転生してもらいます。というわけで、詳細を説明したいから、とりあえず座ってくれるかしら?」


女神の言葉に従い、向かいの椅子に腰を下ろした。次の瞬間、(まばた)きをした(わず)かな間に俺の前に紅茶の入ったティーカップが現れた。


『憧れが現実になる』とりあえずは単純にそう思った。


 剣と魔法の世界、中でも魔法使いに憧れていたのだ。医者になってからも、何度『治癒魔法や蘇生魔法があれば!』と思ったことか。


「とりあえず、今までの記憶はそのまま持っていってもらうわ。その方が転生してもらう意味があるしね」


俺が色々と考えている間にも女神の話は続く。


「あなた、地球でも小説やマンガなんかで色々と読んでいたみたいだけど、ほぼ想像通りよ。所謂(いわゆる)『剣と魔法のファンタジー世界』。魔獣や魔物もいるし、エルフやドワーフなんかの亜人種もいるわよ。けどね、あなたが想像しているだろう世界とは少し違うところもあるのよ」


「ちょっと待った!急に色々と話をされても、事情が飲み込めない」


 こちらを気にせず話続ける女神を、俺は慌てて遮った。


「何?あまり無駄話をしている時間はないのだけど?」


 不機嫌そうにしつつも、いったん話を止めてくれた。


「最初から確認させてくれ」


 考えを整理するため、今度はこちらから話を続ける。


「俺が死んだ、というのは……本当、なんだろうな。トラックに撥ねられたところまでは記憶があるし……」


「それは本当よ。あなたは女の子を助けた代わりにトラックに撥ねられて死んだのよ」


「やっぱりな。ということは問題はその後だ。貴女が『女神』というのは本当なんだろうな?」


「それも本当よ。あぁ、紹介がまだだったわね。私は、あなたの暮らしていた世界とは違う、『アスクレピオス』という世界の管理女神。名前は『エルリーシャ』よ。好きに呼んでくれて良いわ。まあ、あまり(かしこ)まったのは好きじゃないけど」


 どうやら『死に際に見る幻』というわけではなさそうだ。だからといって、目の前に座る女神の言うことをそのまま素直には信じられないが……。そう思いつつも俺は言葉を重ねる。


「では、遠慮なくリーシャ様と呼ばせてもらおう。で、だ。今までの話を聞く限り、転生させてくれるというのも本当なんだろう?」


「呼び捨てでも良いんだけど……まあいいわ」


 リーシャ様がなにか(つぶや)いたようだが、俺の耳には届かなかった。


「何か言ったか?」


「いいえ。話を続けるけど、転生してもらうのも本当よ。さっきも少し話したけど、地球の管理神からも頼まれたし、私自身もあなたの経歴を見て私の世界に来てもらうのに相応しいと思ったの」


「それが分からないんだよなぁ」


 リーシャ様の話に俺は首をかしげる


「俺はただの医者で、技術者でもなければ農業系の知識を持ってるわけでもないんだが……」


 そう、今まで読んだ小説や漫画では、転生前が成人済みの場合、何かしらの知識や技術を持っていたことが多かった。逆に、未成年の場合は神の手違いで死んだり、地球にはそぐわない大きな魔力を内包しているから、なんて理由での転生もあったが……。

 ちなみに、未成年転生者は転生前に神に会うことも多いが、成人転生者は死亡即転生(幼児から)のパターンが多かった気がする。元医者の転生者、読んだことがない気がする。まあ、俺の勉強不足かもしれないが……。

 そう考えると、俺はレアケースなのかもしれない……?


「あまり時間はないんだけど……それも含めて詳しく話すわ」


 リーシャ様はそう言って話し始めた。


「まず、あなたに期待しているのは、技術系の知識でも農業系の知識でもないわ。その、医療に関する、というか、人体に関する知識よ。アスクレピオスはね、あなたが読んでいた小説やマンガなんかとは違って、初級の治癒魔法ならほとんどの人が使えるわ。中級になると使える人は各国に10人くらい。上級になると途端に人数が少なくなって、世界中探しても10人いるかどうか。蘇生魔法まで使えるのは、現状1人だけね。元々の素質として得手・不得手もあるし魔力量の違いもあるけど、もっと大きな理由は『人体に関する知識の差』なのよね。人間の体がどういう構造をしているのか、それが明確にイメージできればできるほど、治癒魔法の効果は大きくなるし、消費魔力は少なくなるの」


 ここまで聞いて、なぜ俺が選ばれたのかなんとなく理解できた気がした。


「イメージが明確なら、初級の魔力量で中級並みの効果になるわ。けど、いくらイメージが明確でも、元々の保有魔力量が初級を使えるくらいしかなければ上級並みの効果を出すことはできないわ。ただし、逆はありうるのよ。少しくらいイメージが明確じゃなくても、魔力量のゴリ押しで上級並みの効果を出すことはできる。その場合、イメージが明確な時と比べて10倍以上の魔力が必要になることがあるけどね」


 リーシャ様はそう言って『パチリ』とウインクをしようとして両目をつぶっていた。何とも締まらない……。


「で、俺が選ばれた理由はなんとなく分かったが、俺に何を期待する?何をさせたい?」


「そうね、期待するのはさっきも言った通り、あなたの医療や人体に関する知識。してほしいことは、治癒魔法、というか、それ以外も含めてこの世界の医療やその他技術を発展させること。あとはあなたの自由にしていいわ。あなたの希望、もとい前世の心残りも考慮しての転生だからね。ついでと言ってはなんだけど、転生はあなたの希望を考慮してもあるけど、こちらのお願いでもあるし、ある程度のスキル・称号は付けておいてあげるわ」


 そこまで言われると、断るのも気が引ける。憧れもあったことだし、、いくつかの条件を付けて受け入れることにした。


「分かった。リーシャ様がそこまでしてくれるのなら引き受けよう。ただし、いくつかお願いがある」


「引き受けてくれるのね!お願い……私に干渉できる範囲であれば、ある程度は聞いてあげる。ただし、私があまり世界に干渉しすぎると、バランスが崩れて大変なことになるから、最初から超級治癒魔法を使えるようにしてほしい、みたいなチートじみたものは無理よ」


「それは分かってるし、そこまでは望まない。自分で努力するのも、面白そうだしな。だから、俺がお願いしたいのは……」


俺は、いくつかのお願いを告げた。


「うん、それくらいなら大丈夫よ。じゃあ、もう時間もギリギリだし、さっそく転生の準備に入らせてもらうわ。次は転生先で目覚めることになるから。じゃあね」


 その言葉を最後に、俺の意識は徐々に闇に沈んでいった。


「あなたが死んだのは、こちらの手違いもあったのよ……ごめんね。今度こそ幸せに……」


 リーシャ様が、最後に何か(つぶや)いたみたいだったが、うまく聞き取れなかった。

はい、やっとプロローグの終了まで漕ぎ着けました!

次話から、転生先での物語スタートです。


さて、用語解説、とまではいきませんが、世界名について解説。

物語の世界『アスクレピオス』は、医療のシンボルである『アスクレピオスの杖』から取らせてもらいました。


どこかのアニラジで『ケリュケイオン』が医療と商業のシンボルと紹介されていて、最初は『ケリュケイオン』とするつもりだったのですが……。

よくよく調べてみると、どうやら間違いのようです。

ケリュケイオンの杖は二匹の蛇が絡み付き、上部に羽の意匠があります。

しかし、アスクレピオスの杖は、蛇が一匹絡み付いただけのとてもシンプルなものです。


欧米でも混同されることが多く、また、ケリュケイオンの装飾性の高さから、わざと医療のシンボルとして使われることもあるそうです。

この物語では、本来の意味を尊重し、アスクレピオスを医療のシンボルとします。


では、次回の更新もお楽しみに。


※中級治癒魔法、及び、上級治癒魔法を使える人数を修正しました。2人に1人が中級が使えるのは、ちょっと有り難みが薄れる気がして(笑)

 蘇生魔法に関しては、現状ちょっと迷ってます。ファンタジーだから、有りっちゃ有りなんですけどね。

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