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記憶 明けたり

 

 テレビに顔を出さない日なんてないんじゃないかというくらい、すっかり業界人となった茉莉さんが無期限休暇を発表したのは、まだ梅雨入り前の温かい頃だった。

 会見で理由を訊かれると「虹の先へ行くんだ」と意味不明な発言を残し、その一言がまた記事の大見出しとなった。ファンはもちろん茉莉さんの音楽を聴いたことのない人だって、頭の上にハテナを三本は浮かべただろう。

 でも誰もが納得せざるを得なかった。だって、そんな意味不明なことを言う茉莉さんがものすごく優しい笑顔をしていたからだ。



 リッチー、ロニー、コージーの三人が再結成することは叶わなかった。

 いつか再結成したときが本当の虹になる瞬間だと彼女は言っていた。なら、ぼくら三人が再結成したときはどうなるんだろう。その三人の先へ行けるんだろうか?……なんてそれはさすがに図々しいか。

 でも、その先へ行ってみたいと思った。虹の先になにがあるのか……それはぼくたちのペースで確かめに行けばいい。悲しいことしか待っていないとしても、この三人でならそれもいつかは楽しい記憶へと変わるはずだから──




 5月12日


 また同じ日衣の言葉で、ぼくらは集まった。

 あの頃から少しだけ大人になったぼくらは、ここから再スタートする。

 また振り回されっぱなしになるんだろう……。それでも仕方が無いか、Risingは日衣がいなきゃ存在しないバンドなんだから。でも今度は、もうなにも心配することはない。ただ精一杯ぼくたちらしく生きていくんだ。

 消えたり待ったり逃げたり泣いたり怒ったり……そうして不器用にすれ違いながらもようやくつかんだものたちを、もう二度と手放さないように。



あとがき



読了していただき、ありがとうございました。


迷い、戸惑い、不安、焦燥、劣等、様々な想いで埋め尽くされ、居てもいい場所から逃げ出した……そんなこの春、夏の想いを整理し答えを出すために書き始めた物語でした。

書き終えた今、答えはまだ出ていません。

でも、ただ“戻りたい”と純粋にそう思いました。それは日衣もそうだったと思います。

こんな情けない自分を好いてくれる人がいて、自分のために存在する場所があって、自分がなにをしようがなにを言おうが、その人たちはその場所でいつまでも自分のことを待ってくれている……それを心のどこかで分かっているんです。

ただ、素直になるだけでよかった。それだけでした。

それだけなのに、それがどんなに難しいことなのかを深く思い知りました。きっと日衣のような意地っ張りな性格の方ならもっともっと難しいですね。

でも素直になることに敗北や引け目を感じるのなら、まだその相手を本当に慕ってはいない証拠なのかもしれません。

素直になることに嬉しさを感じることができるように……そして、それがその相手への少しばかりの恩返しとなるように、わたしは努力していきたいです。なにもない、当たり前のことすらできないこんなわたしでもそれだけはできるはずです。その想いだけは変わらず持ち続けていきたいです。


最後に、この物語の主軸とさせていただいたリッチー•ブラックモアとRainbow。復活、本当におめでとうございます。いつかまた来日してくださることを願って待っています……。

たくさん大事なことに気づかせ教えてくれた待ってくれていた方たちに、これからも進み続けていくRisingの三人に、そして読んでくださったあなたに、心からの感謝を申し上げます。


陽詩麗

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