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現世のお話 沙弥編

沙弥編の『沙弥』は、榮 沙弥の『沙弥』です。

 雨が降り続けていた。梅雨はとうの昔に過ぎ去ったのに。

 空が悲しんでいるようだった。ひとりの人間の死を、まるで。

 



―――




 山奥に建つ大きな屋敷。

 かつて、一帯を治めていた頃の名残なのだろうが、今は見る影もない。

 しかしそんな事情などは知る由もなく。

 山を見上げ、雨が降る音に包まれる縁側に足を投げ出す、一人の少女の姿があった。


 その顔色はどうにも優れない。

 沈むように暗く、普段の姿は息を潜めていた。


「おばあちゃん、大丈夫かな…」


 彼女が一週間前、屋敷に来てから、ずっと祖母の調子が悪いようだった。

 けれど、イトコも叔母も、叔父達の誰も気付いていない。祖父も同様に。

 しかし母親だけは妙に祖母の世話を焼く。いつもとは違う。


「おばあちゃん…」

「お婆さまが、どうかした」


 いつの間にか少女の後ろに立っていたのは、同じくらいの年頃の少女。

 しかしどこか自意識が薄い様な、儚げな印象が目立つ。


「さっちゃん…おばあちゃん、元気だった…?」

「いつも通り。朝食も、美味しかったでしょ」


 さっちゃん、と。

 そう呼ばれた少女は表情一つ変えずにそう返す。

 やはり気付いていないと、少女はどこか肩を落とす。


 去年、森で出逢い仲良くなった『たっちゃん』ならば気付いてくれるかもしれない。

 しかし、五月初めの連休で夏休みには来る事が出来ないと言っていた。

 一番の友だちと一緒にいられないのは寂しいが、わがままも言っていられない。


「さに子、何かおかしいよ。来てからずっと、お婆さまの事ばっかり」

「だって…おばあちゃんの具合悪いのに、だれも気付いてないんだもん」

「そんなに気になるのなら、お婆さまにお聞きすればいいのに」


 そう言われた、さに子と呼ばれた少女は気付いた。

 どうして今まで会いにいかなかったのだろうか、と。

 食事の時には顔を合わせるが、食事中は喋らないようにと躾けられている。

 それに、台所には食事を作る者以外は入ることも出来ない。精々が食器を持っていくくらいだ。


 それならば、いま逢いに行こうと。

 少女は立ち上がり廊下を駆けて、祖母の私室へと向かって行った。


「…つまんない」


 さっちゃんと呼ばれた少女は、お盆に乗せられた二客の湯呑みをつまらなさそうに見つめていた。




―――




「おばあちゃんっ!」


 ピシャリと襖を開けて祖母を呼ぶ。

 何度も訪れた事があるのだ。この屋敷の構造は知り尽くしていた。


「駄目よサヤ、襖はゆっくり開けないと。傷付いてしまうから」


 背筋を伸ばし正座をしたまま、そう窘めた祖母。

 サヤと呼ばれた少女も、背筋を伸ばしながら言う。


「ごめんなさいっ! お母さんは?」

「サチは麓のコンビニよ。夕方には戻るかしら」


 サヤの母親、サチは基本的に屋敷に寄り付かない。

 夏休みを始めとした長期休暇の間、十日前後ほど娘共々泊まる事はあっても、日中は事あるごとに外出している。


 それなのに。

 今回に限っては祖母の世話を甲斐甲斐しく焼く母に、サヤは違和感を覚えたのだ。


「ふぅん…ねえおばあちゃん、お身体の具合大丈夫?」

「身体の、具合?」


 虚を突かれたかのような表情をした祖母。

 しかし数秒後には、元の優しげな表情に戻ってしまう。


「そう、ね。おばあちゃんも長く生きたから。永く生きると身体も錆びついちゃうの。膝は痛いし腰は痛いし。誰が悪いって事じゃないの。誰もがこうなるの」

「わたしも?」

「そう、サヤも。いつか必ず。けれど、ね。お話したでしょう? 外の小屋で、一緒に眠った時に」


 寝物語で聞かされたお話。

 おばあちゃんのおばあちゃんがした、一つの約束。


「その人はね、ずっと生きているの。ずっとずっと生き続けているの。ずっと昔から、ずっと永く。ずっと独りで」

「わたしがずっと一緒にいるよ? その人と」


 だって『あっちゃん』に聞いたのだ。

 なんだって知っている『あっちゃん』に。


 しかし祖母は首を横に振る。

 そして駄々っ子をあやすように、優しく言う。


「ずっとはいられないわ。人はいつか亡くなるもの。そう、死んじゃうの。いつか必ず」

「おばあちゃん?」

「だから、ね。誰も、悪くない、の。寿命がきた、だけ」

「おばあちゃんっ!」


 祖母の身体が、ゆっくりと倒れる。

 サヤの眼には急激に何か(・・)が抜け出て行くように視えた。

 そしてそれが、生命を司る『力』なのだと直感した。


 苦しそうに倒れ伏す祖母に縋り付くサヤ。

 祖母の顔色は真っ青だった。

 今にもその命が消えてしまいそうな、危険な状態。


 いつか、社の辺りで動けなくなっていた時に『あっちゃん』から貰った、赤い飴の事を思い出す。

 痛くも痒くもないが、どうしてか身体が動かない。けれどその飴を舐めきったら、以前よりも身体の調子が良くなった。

 あの飴さえあれば、祖母の容態も快復するのではないか。


「まってておばあちゃん! あっちゃんにお願いしてくるからっ!」


 言うが早いか、サヤは障子戸を開け放ち裸足のまま駆け出した。

 まるで涙を流すか如くの、激しい雨の中を。




―――




「あっちゃん!」

『サヤか。どうしたんだい、こんな雨の中で傘も差さず。ああ、それに裸足で』


 ぬかるみを抜けてきた裸足は泥だらけ。雨中を走ってきたせいで濡れ鼠。

 余す事なく汚れきったサヤを、上から下までが真っ白な両性的な特徴が目立つ彼/彼女は優しく抱き締めた。

 自身の衣服が汚れる事を厭わず。


 あっちゃんと呼ばれた、彼/彼女はサヤの親友である。

 数年前、初めて祖父母の下を訪れた際、屋敷の探検に飽きて近くの森を探検した時に出逢ったのだ。

 社の屋根に座り多くの動物と戯れていたその時の光景を、サヤはとても幻想的だと思ったとか。

 それから、毎日のように社へ足を運び交友を深めた。

 何でも知りたい年頃のサヤに、どんな質問にも優しく丁寧に答えてくれるあっちゃん。

 二人の仲が深まるのは、当たり前のことだった。


『どうしたんだい? ここは隠れはするが、逃げはしない。そんなに慌てて来なくてもよいだろうに』


 あっちゃんがそう言うよう、この社は結界に閉ざされている。

 『悪意』を持つ者から隠れるように、空間を歪めてでも通さない。


『それにサヤになら結界が働かないんだ。以前来た…健のところの子もいないようだし―――』

「おばあちゃんが! たおれたのっ!」


 サヤがそう言うも、あっちゃんの表情は変わらない。

 ただ淡々と、サヤの話を聞くだけだ。


『そうか…彼女も、か。人がいなくなるのはあっという間だな』

「だからね、あっちゃん。あの赤い飴、もう一つちょうだいっ!」

『…前にも言ったろう。もう、ないんだ。あれは』


 それを聞き、サヤは呆然とする。

 あの飴がなければ、祖母を助けられないのだから。


「けどっ…! けどあの飴がないと、おばあちゃんがっ」

『人が死ぬのは、自然の摂理だよ。法則のままだ。それに抗うのは…きっと何よりも苦しい事だ。辛い事なんだ』


 サヤの目を見て、諭すようにあっちゃんは言う。

 しかし、サヤは聞かない。まるで駄々っ子のように。年相応とも言うべきか。


「おねがいあっちゃん! おばあちゃんを…おばあちゃんを、助けてっ!」

『ダメなんだ、サヤ。聞き入れておくれ。人は、人のままに死を迎え入れるべきなんだ』

「おねがい…おねがい、しますっ! あっちゃん…! ヤゴコロさまっ!」

『―――それを、どこで』

「わたしはっ! わたしはどうなったっていいからっ! おねがいしますっ! おばあちゃんを…おばあちゃんを助けてくださいっ!」


 雨で身体は濡れ冷えた身体は、しかし目元だけは暖かかった。


 心の片隅のどこかで気づいていた、その真実。

 口に出してしまったらきっと壊れてしまうから、彼/彼女の前では決して言えなかった事。

 あっちゃんが『神様』であるという事。あっちゃんが本当は『ヤゴコロ』という事。

 そして自分が生け贄になれば祖母が助かるのだと。サヤは心のどこかで感じ取っていた。


『―――ダメ、だ』


 しかしあっちゃん―――ヤゴコロは頷かない。

 まるで強い誘惑に抗うかのように歯を食いしばっている。そして強く握りしめた拳からは血が流れていた。


『戻りなさい、サヤ。せめて、最期は看取ってあげ―――』

「いらないっ!」


 髪を掻き毟り大声を出してサヤが言う。

 癇癪を起こした幼子のように涙を流し、叫ぶように。


『サヤ、聞いてくれ。僕は―――』

「聞きたくないっ! あっちゃんなんていらないっ! きらいっ!」


 両耳を強く塞ぎ何も聞きたくないという風に。聞く耳を持たず。

 サヤはまるで逃げ出すように、社から走り去っていった。




―――




 泥まみれにずぶ濡れのまま、屋敷に戻ったのはいつの頃だろうか。

 朦朧とした意識のまま混濁する視界を繋ぎ留め、息を切らせて屋敷にたどり着いた。

 

 しかし何か、違う。

 言葉では言い表せない、第六感で僅かに感じ取ることができる違い。


 誰か(・・)いない。


 そんな漠然とした感覚。


 祖母の部屋。

 飛び出してきた障子戸を開けて部屋へ入る。

 泥は水で落としてきたが、相も変わらず濡れたまま。


 室内は暗かった。外が暗いというのに、明かり一つない。


「おばあ…ちゃん…?」


 カチリと明かりを点けると、部屋の真ん中に祖母が横になっていた。

 布団をかけ、胸に手を組み合わせて。

 どうやら、眠っているようだった。


「ごめんなさい、おばあちゃん。あっちゃんから、飴、もらってこれなかった」


 それに、酷い事も言ってしまった。

 『いらない』『きらい』そんな心にもない事を。

 謝らなければ。けれど、祖母の事の方が、大事だった。


「けどっ! わたしが食べた飴は―――おばあちゃん?」


 何か、変だった。

 静かだった。サヤの声と息遣い以外聞こえない。サァサァと雨の音と。

 頬に触れる。冷たい。雨の中を走ってきたサヤよりも、ずっとずっと冷たい。


「おばあ、ちゃん」


 死んでいた。


 きっと、サヤが部屋を出て行った直後に。


 ―――わたし、の、せい、だ。


 サヤの身体から、黒い靄が上り立つ。常人ならば視る事すら叶わないナニカ(・・)


 自分自身を憎み、自分自身を怨む。それは例えるのならば、短絡した回路だ。

 他人に向けるべき『悪意』と『怨み』のその全てを、自分自身へと向ける。

 それは『呪い』を発生させ、自身を冒す。それは『魔』とも『妖』呼ばれる存在へと、自身を変貌させる。


 極めて強い適性を持ちながらも、修練を受ける事無く持て余していた才能。

 最上位の神から授かった神の雫。それにより埋め込まれた素質。

 

 それらが今、発露しようとしていた。最悪の形で。


 肩ほどまでの黒い髪からは色素が抜け落ち、白へと。まるで『神様』を忘れないように。

 両手の爪がギギと音を立てて伸びる。全てを傷つける為に。

 泣き腫らした跡の残る双眼…虹彩は、血のように真っ赤に染まる。

 

 そして変貌が終わる寸前、サヤの頬に何かが触れた。

 温かい、手が。


『誰も、悪くないわ』


 祖母の声だった。

 向こうが見える透明な、しかし間違いなく。


『サヤも、神様も、誰も。誰も悪くないの』


 どこまでも優しく。慈愛に満ちた表情。

 生前と変わりなく。


『怨んでいいの。けど、誰も憎んじゃダメ。約束』


 サヤの手を取り、そう言う祖母。


 サヤの変貌が止まった。

 そして徐々に、元の姿へ戻っていく。

 白髪は元の黒髪へ、長く伸びた爪は縮み、真っ赤に染まった虹彩は茶へ。


 サヤはただ、涙を流していた。


『約束よ、サヤ。誰も憎まないで。そうすれば、きっと大丈夫』


 指切りげんまん。

 感触はない。ただ、その温かさだけが伝わってくる。


『さようなら。今まで、ありがとう』


 その言葉を最後に、祖母の姿は消えた。消えてしまった。

 そしてサヤは理解した。


 これが、最期の別れなのだ、と。


 サヤの意識は、プツリと途切れた。




―――




 目が覚めたとき、彼女の本質は変わっていた。

 今まで活発だった面影など欠片もなく。自分から何かをやろうと思う事もなく。


 イトコは変化した彼女を訝しんだ。

 問う事はできず、気持ち悪いと結論付けた。

 母親は変化した彼女に気づいていた。

 しかし問う事はせず、ただ黙っていた。


 彼女はただ、受け入れていた。

 きっと自分が何かをしたから、大切なものをなくしたのだと。そう無意識の内に感じ取った結果だろう。

 依然として、尋常ではないものは視えていた。だから目を逸らした。

 

 約束は憶え続けていた。あっちゃんと呼ばれた『神様』との約束も、祖母との約束も。

 自身を怨むと、自身を憎みたくなった。けれど祖母との約束があった。

 

 だから『神様』を怨んだ。

 『神様』なんていないと自分に嘘を吐き信じ込ませる。

 いないものを怨む。そうすれば、憎まずに済んだ。

 それは八つ当たりの類だった。


 目を逸らし続けたまま、数年が経った。

 いつの間にか、大学へと進学する事となった。

 長いようで短いような、不思議な感覚だった。


 あれから一度だけ祖母の屋敷に行ったが、祖父に庭の古びた小屋にいるように言われた。

 理由などわからない。ただ、言われたから。思い出を壊したくなかったからか、小屋を抜け出し山で暮らしていたが。

 それからは祖母の墓参りにだけ行って、屋敷に泊まった事はない。

 あれ以降『神様』の気配は消えてしまった。きっと、いなくなってしまったのだろう。


 古びたアパートを借り近くを散歩していた時、懐かしい気配を感じ取った。

 幼い頃に迷い込んだ、社の雰囲気を。


 自然と、足が動く。

 路地を越えた先には、大きな看板を掲げた店があった。

 近くの塀にはアルバイト募集の張り紙も見つけた。


 ―――ここなら、逢えるかな。また。


 そんな一途な思いを持って、来た道を引き返していった。

 これからの生活で、贖罪を行えると信じながら。

・サヤ(沙弥)

 設定:

 幼い頃の、榮 沙弥その人。

 夏休みに祖母の屋敷へ遊びに連れられるも、どうしてか祖母の様子が気になった。

 母はいつもとは違い祖母を気にかけ、自分自身もどこか違和感を覚える。

 問いかけるも、直後に祖母は倒れ伏す。助ける為に『赤い飴』を懇願するも叶う事はなく、心にもない酷い事を言ってしまった。

 祖母を助けられず、親友とも逢う事は叶わなくなった。

 自分を自分で『呪い』続け『魔』に堕ちかける(あるいは『妖』へと転じかける)も、祖母の最期の言葉により『呪い』をかけられ、人の姿に留まる事ができた。

 しかし結果として、彼女の本質は変化してしまい、それまでの活発的な面は消え失せてしまった。


 数年前、初めて祖母の屋敷へ遊びに連れられて行った時、森で遊んでいる最中に急に体が動かなくなった。

 たまたま出逢った『あっちゃん』に『赤い飴』を貰い食べ終わると、それまで以上に身体が動かせるようになった。加えて、聞いた事には優しく、何でも答えてくれる『あっちゃん』とはそれ以降、親友以上の関係となる。

 心のどこか、無意識的な領域ではその正体に気付いていたが、関係を壊してしまうかもしれないと恐れ、表には出さない様にしていた。だが、森で出会った友人には躊躇なく言ってしまう辺り、本当は間違いなく、確信していたのかもしれない。

 

 元来持っていた才能、埋め込まれた素質。

 違世界では片方がなくとも遺憾なく、その才を発揮していた。


・祖母

 設定:

 沙弥の祖母。

 自分の身体の事は承知しており、命が短い事も知っている。

 娘のいつもと違う態度から死期が近いという事も分かった上で、普段と変わらない生活を送っていた。

 

 隠していたハズの自らの身体について。孫娘から尋ねられた瞬間に全てを察し『誰も悪くない』と伝えた後に気力が尽き、倒れ伏した。

 どういう訳か、死後その『魂』はその場に留まり孫娘に『呪い』をかけ、人の姿に留めた。

 その後、その『魂』は黄泉へと向かったらしい。


・あっちゃん(ヤゴコロ)

 設定:

 山の上の森に住む神様。古来から存在する、天津神の一柱。

 変わらぬ日々を無為に過ごしていた時、閉じていたハズの『結界』内に人の気配を感じ取る。

 訝しみ調査に行くと、そこには倒れ伏す少女の姿が。一目でその運命を見抜くも自身を削ってまで(心境は不明)少女を助け、親友以上の関係となる。

 尊敬はされるが敬われず、信頼されるが妄信はされない。そんな心地よい関係を続けていきたかったのかもしれない。

 しかし少女に『祖母を助けてほしい』と願い乞われ、対価としてその少女のその身を御供されるも拒絶。彼/彼女の言葉が少女に受け入れられる事はなく、その後姿を黙って見送った。

 その後、経緯は不明ながらも『社』から去ったようだ。


 元は高天原に存在していたが、何らかの理由で地上に降り人と交わり子を成した。

 その人は沙弥の遠い遠い先祖であり、彼/彼女は沙弥の血縁である。同様の神は、少数ながらも存在するとされるが、仔細不明。

 その叡智は、違う可能性の異なる世界まで及んでおり、全てを知り尽くす。


 なんでも知っているが、なんでも出来るわけではない。


・『赤い飴』

 設定:

 赤色を呈する透明な結晶体。沙弥が食べた物の直径は5cm程。

 とても美味らしく、食べた後に沙弥はもう一つと催促したとか。もうないらしい。

 

 その正体は『沙弥』の数年後の姿を幻視した『ヤゴコロ』が創り出した、神の雫。

 時代や場所によって、賢者の石ともエリクシールとも仙丹とも呼ばれたとかなんとか。

 創り出す『神様』の位階によっても大きさなどが異なり、沙弥が食べた物は最高クラスの逸品。大きさとか、透明度とか。

 服用者が望めば不老も叶え得るらしい。


 服用者の『魂』を高次位階へと押し上げる。有り体に言えば『神』へと近づける。

 また同時に、服用者の抵抗力を限界までに高め、風邪などの病気をはじめ、食中毒などとは無縁になる。

 しかし『世界のバグ』『歪み』とも称される『法則』に対しては、その症状を抑え込む程度にしか効果はない。最終ステージである『二十歳になると死ぬ』という症状に対しては、無力である。

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