購買のお話 犬編
犬編の『犬』は、飼い犬に手をかまれるの『犬』です。
子奪い? 知りませんです。
暗い暗い大部屋。
十を超える畳が敷かれ、廊下とは襖により隔たれた一室。
部屋の隅には、紅い灯りを放つろうそくの立てられた燭台が置かれている。
怪しげなにおいが鼻腔を擽る。彼女はこのにおいが堪らなく嫌だった。
「よくぞ、集まった」
彼女の前方。
一段上がった上座に当たる場所に座る高齢の男性が言う。
彼こそが、山の上に建つ『屋敷』の当主だ。
もはや永くはないのだろう、こけた頬に枯れた体。
しかしその眼光は怪しく光り、ギラギラとした視線を送っていた。
そして下座に当たる大広間。
そこには人影が見えた。
佐奈の母である佐京。
佐玖の父である佐載。
佐代の父である佐穣。
当主の息子、そして娘たちである。
皆一様に、ひれ伏していた。
サラリと襖が開かれる。当主の視線はそちらを向く。
赤いポロシャツ、赤いショートパンツ。一児の母とは思えないほどに若い外見。
「…佐千、何用だ」
「ホントは来たくもなかったんだけどね。ま、最後だし」
榮の母、佐千だ。
佐千と当主との間には剣呑な空気が漂っているが、佐千はそんな事気にしない。
深夜という事も手伝ってか、一つ欠伸をしてどさりと胡坐をかいた。
佐千の弟たちと妹の三人は難しい顔をしている。
特に、隣に座る佐京は嫌悪感を露わにしていた。
「…姉さん、何の用よ。それに、最後って」
「最後は最後。もう時代遅れって残したでしょ」
そして父と娘、父と息子、母と娘らの後ろにも人影が。
怯えた表情を浮かべた佐代。きっちりと正座をし、体は僅かに震えていた。
深夜、父に起こされ正装に着替えさせられた。何の為かと聞いても黙りこくったまま。
手を引かれて入った部屋は、普段は固く閉ざされていた場所だった。
いつもは優しい父は、部屋に入った後も厳めしい表情を浮かべていた。
着慣れない和服に長時間の正座、そしていつもなら眠っている時間。
うつらうつらとしながら、祖父の前で座っていた。
その隣には、何か神妙な顔をしている佐玖が。
普段は優しい祖父が見せる初めての表情に怯えているのだろう。
紋付袴に身を包み、握り拳を腿へ押し付けていた。
そして俯き、畳へ顔を向けている佐奈。こちらも佐代に似た和服に身を包んでいた。
何かに耐えるように、彼女はジッと動かない。
スラリと、再び襖が開かれた。
足音を立てずに入ってくる一人の人間。
若草色の留袖を着た、烏の濡れ羽のような髪を腰ほどにまで伸ばした女性。
そして女性は当主の隣へ座る。
一挙手一投足にまで神経が通った、本物だ。
女性の表情に怯えはない、緊張もない。慣れているのだろう。
当主は続ける。
「かつてより名を馳せた一族の末裔。我らの祖が成した偉業への敬意をここに」
当主は天を仰ぎ、そして祈るように何かを呟いた。
「『伊那』は断絶し『茅野』は離縁『岡谷』は取り込まれ、残るは『諏訪』そして我らが血脈」
数百年前、五つの家があった。
人間を冒す『魔』を裁き、境界を定める立場にあった。
強力な後ろ盾があり、その恩恵もあって『魔』への調停も行っていた。
しかし、その後ろ盾はもはやない。消えてしまったのだ
後ろ盾の消えた家は、没落したり、業を棄てたり、他家へと統合された。
残るは、この場所に集まる二家のみ。
その末裔が、この場所にいる人間だ。
「そして我らが一族。今ここで『諏訪』とのかつてよりの盟約。その更改を行う」
当主の一族と『諏訪』との結ばれている盟約。
代々の当主と『諏訪』の跡取りとの間で結ばれる『助力の誓』
どちらかが存亡の危機に陥った際、どちらかが救援を行う。
百年ほど前から連綿と受け継がれている誓い。
当主の差し出した手。
肉のない、骨と皮ばかりのミイラのような手だった。
隣に座る『諏訪』の跡取りに差し出された、その手を。
若草色の女性は冷めた目で見つめる。
「当主」
『諏訪』の跡取りの言葉に、当主はピクリと視線を上げる。
「彼方の娘。彼方の孫娘。これまで双方が屋敷で見えなかった理由は」
鋭い視線を送る『諏訪』の跡取り。
普段の諏訪を知る者ならば、その変貌に驚くだろう。
諏訪は今『諏訪』の代表として、この場所に立っているのだ。
娘、孫娘。跡取りの小娘が言っているのは、きっと長女の事だ。そしてその娘。
忌々しい。
家を捨て、祖を蔑にした恥さらし。
自らの意思に反して動く気に入らない人形。
そして…
「答えられない、か」
スクリと立ち上がる女性。
興味も無いように上座から降り、襖をサッと開けた。
「盟約は結ばん。今後、屋敷にも決して立ち入らない。これまでだ」
「…後悔、するぞ」
「それは彼方だろう。神に見放された血族よ」
そう言い残して『諏訪』の跡取りは部屋を後にした。
その後を、当主は忌々しげに見つめていた。
『あの子もなかなか辛辣ね』
聞き知れぬ声。
その声は部屋全体に響き渡った。
困惑するは、佐京を始めとした三人の兄妹。そしてその子どもたち二人。
「…何者だ。姿を見せい」
当主は言う。
しかし彼の眼には何も見えていない。
異物も、何も。
『それもそうね。見えないままじゃ意味もないし』
そう声が聞こえた。
その直後、薄ら灯りの部屋の中。しかし確実に見えていた場所。
大黒柱を背もたれにして座っている人間の姿が現れた。
「少しばかり用事があってね。茶番が終わるまで待ってたの」
「何よアナタ!」
ヒステリックな金切り声を上げたのは佐京。
最重要ともいえる儀式を邪魔され、更には『諏訪』の跡取りとの盟約は交わされずじまい。
もう終わりだ。この家も、佐京の望みも。
八つ当たりだった。誰が見ても、娘から見ても。
「矢尾さん、お越しになられたんですね」
矢尾が来ることを、来ていた事を知っているかのように、佐千は言う。
「この家の行く末を、ね。まあ、予想通りだったけれど」
スクリと立ち上がり、矢尾は佐千の隣へ歩く。
「所詮、神様から見放された家だもの。見守られてる家と比べること自体、烏滸がましいわ」
「な、な…!」
言葉を失う佐京。
神様から見放された? 見守られている?
何を言っているんだ、この女は。
「さて、と。佐代、もう遅いんだから部屋に戻っていなさい。眠いんでしょう」
「え…あ、でも…」
「佐玖、連れてきなさい」
「んだよ…クソバ」
「何か、言ったかしら?」
矢尾の威圧感。
佐玖は怯んだ。
佐玖は佐代の手を取り、急いで部屋を出て行った。
「矢尾と…矢尾と言ったか!」
当主の反応は劇的だった。
困惑するのは佐京、そして二人の兄弟。
当主が、父が。
ここまで感情を露わにするなど、母が亡くなった時以来ではないか。
「そう、矢尾。私は矢尾。それ以外の何者でもなく、それ以外で呼ぶ事は許さないわ」
「何だ…何をしに来た!」
当主はきっと、矢尾と言う名に心当たりがあるのだろう。
「約束を果たしに」
そう言いながら、矢尾は佐千の前に立った。
「佐千さん」
「はい、なんでしょう」
「娘さん、随分とこの屋敷を嫌っていたわ」
「ええ、知っています」
佐千の二人の弟、そして妹は黙ったまま。蚊帳の外だ。
「あんなボロ小屋に押し込められても、不満を隠して何も言わない。もう諦めているんですよ、きっと」
「そうね。この屋敷に来るのも随分と渋っていたから」
佐千の娘は事実、屋敷へ嫌悪感を感じていた。
諦めていたのだ。
何を言っても変わらない。変わるはずがない。
涙を流した所で変わらない。変わるわけがない。
だから諦めた。
誰かに頼る事を、誰かを頼る事を。
「母が亡くなった時、あの子、風邪を引いたんです。それまで病気一つしたこと無かったのに」
佐千の母が危篤となった時、佐千の娘はどこかへ行っていた。
戻ってきたのは、母が亡くなってから。雨の中、ずぶ濡れになって戻ってきた。
それからだ。
佐千の娘が今までと打って変わって、大人しくなったのは。
暇さえあれば外に出て遊んでいたのに、部屋の中で静かに本を読むようになった。
短かった髪の毛も長く伸ばすようになった。
本当に同一人物なのか、母である佐千でさえ疑ってしまう。
つい最近になって伸ばしていた髪を切ったようだが、何を思ったのだろうか。
「よろしくお願いします。あの子を、幸せにしてあげて下さい」
「私は幸せにしないわ。勝手に幸せになるの」
そう言うと、矢尾は部屋を出ようとする。
止める者はいない。
佐京も佐載も佐穣も、そして当主も。
呆気にとられていたのだ。
自分たちには及びもつかぬ思考の片鱗を垣間見て。
「それじゃあね、もう二度と来ないわ。八意、いいわよ入って」
そう言い、矢尾は部屋を後にした。
そして代わりに部屋に入ってきた一人の人間。
「迷惑かけたね、矢尾」
真っ白いワンピースに身を包んだ子。反して黒い艶やかな髪は一括りに纏められている。
まだ第二次性徴を迎えていないのだろう、その子は両性的な外見をしていた。
白い子だった。
部屋の視線は全て彼/彼女へ集中していた。
当たり前だ。異物が呼んだ異物だ。警戒して当然だろう。
しかし、彼/彼女に怯えや恐れはない。
まるで愛しい我が子を見守るような優しい視線。
「だ、誰よあんた…」
「分からないの。ま、知らない方がいいわよ」
困惑する佐京に佐千はそう言う。
彼/彼女が何者かを知っているような言葉だ。
「お、おお…」
当主が跪く。その眼は感涙に支配されていた。
長年思慕していた相手に出会ったような、純粋な視線。
「ずっと…ずっと、お待ちしておりました」
「と、父さん? 何を言って…」
「永劫の時が流れようと貴方様を迎えるようにと。我らの罪を贖うように」
知り得るはずのない過去。当主の、何代か前の当主の時代。
『神様』の血を受け継いだ一族があった。
分家筋の当主は『神様』の庇護を望んだ。そして手に入れた。
『神様』の庇護を、後ろ盾を。
しかし、罪も同時に、脈々と受け継がれていた。
「そう。悪いけれど、私にはもう、何の権能もないんだ」
祈りが途絶え、望まれて。
人間へと転じて産まれ生きて。
『神様』であった時を全盛期とするならば、当時の1/100の力も出す事が出来ない。
信仰されない『神様』など、そこらに転がる草木にも劣る。
路傍の石と変わりない。
「君たちの『呪い』に成り果てたそれは、きっと虐げられた彼女や彼らの怨念だ。それを解くよ、今ここで」
きっと最後の『力』
ぐしゃりと、何かを握る仕草をする子。
彼女には分かった。そして視えたのだ。
自分たちの体から黒い線のような何かが抜き取られた。
それは白い子の手の中へと集約されていく。そして、消えた。
一瞬、白い子の表情が曇る。気のせいだったのかもしれない。しかし彼女には、そう思えた。
「『神様』は時代遅れだと、私は思っているんだ」
「そ、そんな事はありませぬ!」
「いや、その通りだ。何も与えない、胡坐を掻いてる奴ばかり。過去の栄華に浸ってね」
『神様』とは、神話で語られる存在だ。
その権能もその神話に則し、例外なく強大な力を持つ。
人間の『力』でどうにか出来る物でない。
信仰を無くすか、特殊な『力』で滅殺するか。
「時代遅れなんだ。矢尾もそう思っている。違いない。進んで人間に転じる者もいる。もう駄目なんだ、腐りきっている」
彼/彼女の根幹は諦観だ。
腐敗はずっと昔、それこそ彼/彼女が人間と交わる前から続いていた。
何を言おうが、どう諭そうが変わろうとしない。諦めたのだ。
人間へと転じずに人間と交わった『神様』の前例はない。
しかし子が産まれ、子が子を成し、孫が孫を成した。それはきっと、何よりも喜ばしい事だ。
「信仰は呪縛だ『呪い』だ。もう、必要ない」
断言する、小さな白い子。
全知である彼/彼女は、智慧を司る『神様』だった。
何かを創りだす事は不可能ではあるが、その智慧は健在だ。
何処かで何かをしているのだろう。
同じ境遇の同胞のように。
「さようなら、私の子孫。元気で」
そう言い、白い子は部屋を出た。
さめざめと涙を流す当主。
呆然としている佐京。
そして…
「さて、っと」
佐千は先ほどまでの邂逅など気にする様子もなく立ち上がった。
「私はもう寝るわ。用も済んだし」
「どうすんのよ! この家はもう終わりよ!」
またも、ヒステリックに叫ぶ佐京。
今まで信じ、そして支えとなっていた全てが否定されたのだ。
「知らないわよそんなの。言ってたでしょう、時代遅れって。棄てればいいのに」
「伯母さん」
部屋を出ようとした佐千に掛けられる声。
声の主は佐奈だった。
「珍しいじゃない、佐奈。私に話しかけるなんて」
こうやって面と向かって話すなど、何年振りであろうか。
妹の娘。父親は浮気をして離婚し、この屋敷で家事手伝いをしているとか。
出会ったのは十何年も前。佐奈が小学校に入る前だったか。
その後は数年ほど娘と交流があり、そして途絶えた。
そう言えば、と。
娘はどこか、小さい頃の佐奈に似ていると思った。
「…お願いが、あります」
「お願い、ね」
彼女は、佐奈は言う。
きっと生まれて初めての我がまま。
そして、最後の反抗。
「私を、養子にして下さい」
「佐奈っ!?」
「…いいわよ、別に。あの子も嫁いだし」
頭を掻きつつ、佐千はあっさりと肯定の意を返した。
一人の人生が今まさに、変わろうとしているというのに、負い目一つなく。
「お昼に出るから、それまでに準備しといてね」
「佐奈っ!」
ガシリと佐奈の肩を掴みユサユサと揺すぶる。
佐京の目には涙が浮かんでいた。
手塩にかけて育てた一人娘。
それがよりにもよって、憎むべき姉の下へ、養子などと。
権力者との縁談も控えているのに。なぜ、こんな時に。
今まで何も言わず、従ってきたのに。
「な、なんの為にっ! あ、あなたを育て―――」
「私は…私はっ! 母さんの道具じゃないっ!」
それは佐奈の、心からの叫びだった。
嘘偽りのない感情の高ぶりの発露。
線路を敷かれ手を引かれ、決められた道を歩み続けた。
不満を抱く事もなかった。
それが自分の生き方なのだと諦めていた。
だけど。
「母さんはっ! 私を見てくれなかった! いつもお爺様の言う事を伝えるだけ! 何も見てない! 分かってない!」
「そ、そんなこと―――」
「もう嫌…耐えられない。私、生きたいの…」
恐らく、生まれて初めての涙。
物心がついて以来、母親の言うとおりに生きてきた。
それは母親の為だった。
母親が自分自身の為に娘を道具のように。
だから、佐奈は自分の為に生きたかった。
自分で考え、自分で動き、自分の為に。
佐奈はフラフラと部屋を出て行った。
呆然としている佐京を置いて。
彼女を呼ぶ声を無視して。
そして夜が更け、日が明けた。
新しい朝だ。
少なくとも、屋敷に住む全員にとって、経験のない朝が来たのだ。
・当主
設定:
齢は八十を超える『屋敷』の長。
佐千を始めとする四姉兄弟妹の父親、佐奈を始めとする従姉妹兄妹の祖父。
戦後、混乱の最中貪欲に土地を増やしつつ財を成し、ある程度の影響力を手に入れた。辣腕として知られている。
かつてより、自らの家の未来を憂いていた。
『神様』は何処かへと消え後ろ盾は無く、伝わっている『力』を遺す事もままならない。唯一強い適性を見せた長女は家を飛び出し、理解を見せた伴侶には先立たれた。
理解者もいない中、あくまでも血族の長として家を守る為、病に侵された身を粉にして動いていた。その願いは、祖が犯した『罪』を清算する事。
幼い頃より夢見た『神様』との邂逅により、彼の願いは、その人生の果てに叶う事になった。
祖母の死の間際に聞かされた『やお』と言う名を畏れている。
・『諏訪』の跡取り
設定:
若草色の留袖を着た怜悧な女性。
その言葉は辛辣であり心を抉る。
『当主』との会話により、彼らとの親交を打ち辞めた。
『諏訪』の家では二十歳になった長女が跡を継ぐことが慣例とされている。
しかし彼女はそれ以前、現時点で渉外を一任されている。その才覚は高い。
あと数年も経てば、全ての決定権を持つようになるだろう。
公私混同はしない主義。
しかし同級の友人を、かつてからの親友を蔑ろにした『屋敷』への私怨から盟約を結ばず、屋敷を後にした。
・佐千
設定:
佐奈の伯母。
『最後』として、父である『当主』と『諏訪』の跡取りとで行われた会合に現れた。
矢尾との会話の中で、娘に対しての複雑な思いを吐き出した。
また、佐奈の『養子にしてほしい』との発言に即答したのは、寂しくなった自分の心を埋める為。
どこか見透かしたような事を言うが、それは彼女に異能があったから。
・佐京
設定:
佐奈の母。
姉への嫉妬(自分には出来ない事をいとも簡単に成し遂げてしまうから)から、娘をそう育てた。
彼女は娘を使っていたに過ぎない。それを娘がどう思っていたかも知らず、知ろうともせず、姉を見返す為に。
しかしその意思を無視した行動は結果的に、娘を失う結果となった。
・佐奈
設定:
佐京の娘。
幼い頃より、母に言われ、祖父に言われ、自分の本心を捨てて生きてきた。
最早彼女の心は限界だった。しかし数年ぶりに再開した従妹への本心の吐露、従妹の馬鹿みたいな笑顔を思い出し、これからの人生の取り返しを図る。
結果的に『自分の為に生きたい』と、母への初めての我が儘を言い、伯母の養子になる事で、造られた人生から外れようとした。
・矢尾
設定:
黒いドレスの女。
『約束を果たす』為に『当主』の前に現れた。
かくして彼女は約束を果たす事が出来た。
しかし本当に、救う事は、可能なのか。
・八意
性別:不明
職業:情報屋
好物:鼈甲飴
設定:
白い子。しかしそれは衣服の為。
矢尾の電話を受け、彼女の店の店員の家についてを調べ、矢尾へと報告した。
しかしその家が子孫の家だった為、無理を言って同行した。
何らかの『力』によって『当主』の血族に縫い付けられた『呪い』を引き受けた。
その正体は、人へと転じた『神様』
全盛期の1/100程度の『力』しかないが、全知と讃えられたその智慧は健在。
かつて、同族の腐りきった姿を見て『諦め』て、そのまま人間と交わった。
子が子を成し、孫が孫を成し、その子孫が『当主』の血族と成った。
その後は、近くの森に祠を創り、永劫に子孫を見守るつもりだった。たとえ信仰されずとも。
しかし、一人の少女から否定され、拒否され、受け入れられず、祠から立ち去った。
・佐千の娘
設定:
涙を流しても何を言っても何かをしても、何も変わらない。
誰かを頼る事も何もかも、全てを『諦め』た。
かつての活発な姿は見る影もなくなり、何かを信じる気にもなれず、かといって自殺する勇気もなく、日々を諾々と生きている。
きっとその生き様は、かつての日々を思い出そうとして諦めて、しかし取り戻そうと足掻き続けた結果なのだろう。




