白昼夢のお話 後編
「う…」
日が昇って間もなく。睦月が目を覚ました。
彼女の体は幾度もの再生と破壊を繰り返し、きっと人間の限界点を超越した強度を手に入れたのだろう。
なぜなら、生きているからだ。
「起きた? ご飯、出来てるわよ」
「ごはん…ご飯!」
小屋の中にはご飯の炊けた甘い匂い、味噌汁の香ばしい香りが漂っていた。
食い意地が張っている睦月が、気付かないわけもない。
―――ぐぅ~~~~…
これまた大きな音が小屋に響く。もちろん、睦月のお腹の音だ。
「お、お腹減りました!」
「分かってるわよ。多めに炊いたから存分に食べなさい」
余程お腹を空かせていたのだろう。獣のようにガツガツと掻っ喰らっている。
しかし、その荒っぽさに反して米粒一つ、味噌汁一滴をも飛ばしてはいない。
なんという執念なのだろう。
おひつが十分ほどで空になり、味噌汁も同時に底をついた。
ケプリと一つゲップをして大きくなったお腹を擦っている。その顔は幸せそうに綻んでいた。
「気分はどう? 生まれ変わった気分は」
「あ…そうです八尾さん! すっごく苦しかったんですよ!
「二本も飲むからよ。一本でも十分なのに。欲張りさん」
「む、むむむ…も、もうっ!」
照れ隠しなのだろう。睦月はバシン! と床を叩く。
―――メキメキ! ボゴン!
木製の床が悲鳴を上げ、バキバキと砕けて穴が空いた。
「へ…へ?」
「あらあら、こんなにしちゃって。知らないわよ」
何が起きたかわからない。そんな表情で床と自分の腕を交互に見る睦月。
彼女の視線は八百へ向く。
「な、な、なんですかこれ!?」
「貴女が壊したんでしょう。お盆でも置いときましょうか。直すのは後ね」
「せ、説明を! 説明を求めます!」
「説明? 必要なの?」
「はい! 是非とも!」
ふう、とため息を吐く八百。
何を説明してほしいと言うのだ。
火を見るよりも明らかだと言うのに。
「死にかけて死んで生き返って。それを何度も繰り返して、貴女の体はとてつもなく強くなったわ。それこそ、人間が何年鍛えても辿り着く事の出来ない程度には」
「は、はぁ…」
「気を付けなさいよ? その辺の人間と握手なんかしたら粉々よ」
「こ、粉々!?」
「その気になれば丸太も振り回せるんじゃないかしら」
「あ、それは元々…」
てへへ、と照れたような小声で言う睦月。
八百は鍛えても鍛えても筋肉が付かない。精々、米俵一俵を持ち上げられる程度だ。
随分昔には躍起になって鍛えた事もあったが、全てが無駄に終わった。
それ以降は技と理合も磨く事に集中していた。今は実戦でも活用する事が出来る程度には磨き上げる事が出来た。
「ま、精々気を付けなさい。下手をすると妖怪とも間違われるから」
「え、ええっと…どうすれば?」
「慣れなさい。それだけ」
「ええっ!? な、慣れろって言われても…」
「貴女、人から立ち上がる事を教わった? 指の動かし方は? 脚の動かし方も」
「お、覚えてません…」
「そう、覚えていない。慣れるというのはそういう事。食事をしている時はお椀を割る事もなかったし、それを思い出せば?」
「う、うう…八百さんは鬼です…」
「あら残念。私は人間よ。少し丈夫だけれど」
三角座りをしてのの字を描きイジケる睦月。
全く、拗ねるのならば聞かなければいいのに。
『…睦月様。御迎えに上がりました』
睦月がようやく拗ねから立ち直った頃、扉の向こうから声が聞こえた。
八百には聞いた事のない声。無理もないだろう。屋敷の敷地へ侵入し、一日程度しか経っていないのだから。
「あ、入ってください」
そう言って睦月が扉を開ける。
すると入ってきたのは人間の女。何やら陰険なにおいのする人間だ。
少なくとも、八百には友好的に接したくない部類の範疇だ。
「…其方の御方は」
「あ、その…師匠です! 色々とお世話になりましたので!」
チラリと八百を見る女だったが、すぐに視線を外した。
「…そうで御座いましたか。睦月様、当主様の召集で御座います」
「え…どうして急に?」
「…存じ上げません。急を要すると、言付けを受けました」
その後も何言か話し、女は睦月に頭を下げて姿を消した。
「あの、八百さん」
「さっきの人間、誰?」
「本宅の女中さんです。あの…顔、怖いですよ?」
「ふうん、そう。で?」
「本宅の方に用事が出来てしまって。少し空けますけれど…」
「いいわよ、別に。私は私で暇を潰しているから、ゆっくりしていらっしゃい」
「はい! 行ってきます!」
そう言って、睦月は手を振って小屋を出て行った。
彼女の背を、八百が優しげな眼で見つめていた。
「阿吽」
『ハッ!』
『…』
「潜りなさい。極力気付かれないように」
『承知シマシタ!』
『…!』
『阿吽』は少し離れた本宅にノシノシと歩いて行き、影にトプリと沈んだ。
さて、これで本宅の構造は知れるだろう。
八百は小屋に入って座り込み、式神を一枚飛ばした。
あらかじめ抜いておいた睦月の長い髪の毛を巻きつけてある。彼女の近くを付かず離れず保つだろう。
目を閉じ、意識を落とす。式神へ接続したのだ。
―――
本家の一室。
そこには十三人の人間が一堂に会していた。
皆同じような式服を着た、しかしあつらわれた細工と基調となる色は全員違う。
睦月は一番近い場所で落ち着かぬように正座をし、少し離れた対面には皺だらけの老婆が。
下座には他に十人、二列に分かれて皆それぞれ正座をしている。
ある者は面倒臭そうに、ある者は薄ら笑いを浮かべて、ある者は眠っていた。
一段繰り上がった上座には、金糸をあつらえた式服を着た壮齢の男性が仰々しく座っていた。
「皆の者、よくぞ集まって貰えた」
その声に、皆が一様にそちらを向く。
きっとお偉いさんなのだろう。眠っていた者も目を覚ましたようだ。
「それで、当主様、本日は、何用で、我々を、御呼びになったので、御座いましょう」
皺だらけの老婆が途切れ途切れに言葉を発する。
彼女が着ている式服は薄紫が基調となっている。
「如月殿。他でもない。師走の行方が知れぬ。そして恐らく、奴は死んだのだろう」
ザワリと、室内がどよめく。
如月と呼ばれた老婆は、信じられないと言った面持ちで。
「当主」
面々がザワザワ動揺している中、一人が当主へ問いかけた。
白髪が目立つ中年の男性。式服は濃黄が基調となっていた。
「文月、申してみよ」
「あの小僧が夜に出歩くなんていつもの事でしょう。何日も帰って来ないのなんてしょっちゅうだ。暦位に上がってからもそれは変わっていない。どうして死んだと?」
確かに、と面々も頷く。
師走は女遊びに明け暮れていた。女中を手籠めにして妊娠させ、それを境に屋敷を追い出す。
当主はそれを揉み消すのに手を焼いていた。それは周知の事実。
しかし如月と呼ばれた老婆は、憎々しげな眼で文月と呼ばれた男性を睨みつける。
「その疑問も尤もだ。だが、女中の一人が奴の使役する式神を発見した。その中の一枚がこれだ」
当主は女中に合図を送り、一枚の紙を持ってこさせた。
その紙を面々が確認する。
「血が…」
誰かが呟いた。それはその場にいた全員が思った事だった。
「死体は?」
「女中と弟子たちを総動員させているが、未だ見つかっていない。持ち去られたと見ても良いだろう」
文月はそれだけ聞き、何かを考え込む仕草をしている。
「そして、この式神が見つかった場所が問題だ」
当主は睦月の方に視線を送る。
「…睦月。お前の小屋の前で発見された」
「え…え! なんでですか!?」
バンバンと畳を叩く睦月。どうやら加減は憶えたようだ。音が出るだけで破れはしない。
「何か、知っている事は有るか? 有るのならば、申し開きをしてみよ」
「そ、そんな事言われましても。昨日は、その、ずっと眠っていて…」
「キィイィイイイエエエェェエエェ!」
狂ったように甲高い声が響く。
如月と呼ばれた老婆が跳び上がり、睦月に向けて短刀を突きだしたのだ。
その顔は、鬼のような形相を取っていた。
「あわわ! 危ないですよ!」
しかし流石と言うべきか。
白刃取りの要領で刀身を挟み込み、ボキリと圧し折る。
それでも老婆は怯まない。詰めた距離から更に追撃する。
「鬼子め! 鬼子めぇええぇえええ! キサマが師走を! 師走をおおおおぉぉぉおおお!」
如月の袖からは、老婆の身の丈を超すほどの大斧が取り出された。
きっと式神召喚の応用だろう。
振り被り、睦月へと振り下ろそうとする。
―――キュパッ、ガギョン!
瞬間、大斧が砕けた。
単純に、睦月が殴り砕いただけのことだ。
老婆は尻餅を着き、信じられないように自分の得物を見呆けた。
そして一呼吸置いて腰を抜かし、怯えた表情で後ずさった。
「ひ、ひいいいぃいいぃぃ! 化物! 化物おおぉおぉお!」
僅かに離れた場所で命のやり取りをしているなど意にも介さず、文月は呟くように言った。
「あの小僧、嬢ちゃんに執心だったからなあ。どう思うよ、皐月、長月」
「死んだのなら、暦位が一つ空いただけの話。我には関係のない事」
「それもそうだね。弱かったから死んだ。強かったら死ななかった。流石は師走。弱い弱い」
皐月と呼ばれた、濃赤が基調となった式服を着た大男は我関せずに。
長月と呼ばれた、濃白が基調となった式服を着た優男は嘲るように。
「そっちの方々はどう思う。師走が死んで、何か不都合はあるかい?」
文月の言葉に一番に答えたのは、薄黄が基調となった式服を着た女性だ。
「アタシも長月と同意見だ。弱いのが悪い。以上だ」
文月の向かい側に座っていた女性、葉月が言った。
「ぼ、僕はこのままで、い、居るべきではないと。な、仲間が死んだんです。か、敵を討つべき、だと」
少々どもりながら、薄青が基調となった式服を着た男性。卯月が言う。
「敵っつったってさあ、誰が殺したかもわかんねえんだろ? どうしようもねえじゃん。そもそも侵入できんの?」
葉月の隣。
薄白が基調となった式服を纏った少年、神無月が言う。
「昨日の朝方、妖怪の侵入が有った。睦月が撃退したと聞いたが、新手が来たか狩り残したか」
薄赤が基調となった式服を纏った髭を生やした厳つい男。水無月が言った。
「あ、それ私も聞いたー。腕喰われたり脚喰われたりー。一人も死んでないみたいだけどー。結構大惨事だったみたいだよー」
ノンビリとした口調。
先ほど眠っていた、濃青が基調となった式服を纏った女性、弥生が言った。
「まあ待て、その話は別だ。今は師走が死んだ件だろう。召集の理由はそれだったしな」
文月と呼ばれた男性が面倒そうに言う。
元々乗り気ではなかった召集だ。さっさと済ませて早く戻りたいのだろう。
「…師走の死亡に伴う後釜を決めるのだろう。早く出て行きたいのは、私とて同じだ」
今まで沈黙を保っていた、濃黒が基調となった式服を着た女性、霜月が言った。
「そんじゃ当主。とっとと決定をしてくれ。どうするのかを、な」
「…私に、全てを決めろ。そう言うのか」
「ああ、なんたって当主なんだからな」
「…師走の後任は後日選任する。現暦位の皆には優秀な者を選抜してもらいたい。現次点をもって師走の捜索は打ち切り、屋敷の警備に注力する」
「と、当主様。よ、よろしいのです、か?」
卯月が言う。
彼はきっと不満があるのだろう。
外見を見るに、師走とは同年代とも思われる。
きっと親交があったのだろう。
「…決定した事だ。師走は残念だが、仕方あるまい」
「決まったな。んじゃ、俺は帰らせて貰うぜ。後は適当にやってくれ。盆暮れ正月以外は来たくないんでね」
そう言い、頭を掻きながら部屋を出る文月。
続いて皐月も立ち上がった。
「我が居る意味は最早無い。失礼する」
そして、次々と立ち上がり部屋を出て行く者たち。
如月は憎々しげな眼を、当主と睦月に送り部屋を出て行った。
部屋残るのは当主、そして睦月だけとなった。
当主は大きくため息を吐き、何かを考えるように手で顔を覆う。
そして疲れたように肩を落とし、睦月に語りかけた。
「…睦月。師を招いたそうだな」
「え…あ、はい。簪を届けて頂いて、えっと…良くして貰ったんです!」
「簪―――母の形見か。落としたのか」
「以前の、妖怪猪の退治の時に。け、けど、態々届けて貰ったんです! ご飯も作って貰って、とっても美味しいんです!」
そして二人は何言か会話を重ねた。
先ほど緊張に身を竦ませていた睦月は自然体で、当主も肩の荷が下りたように晴れやかな顔で。
「…睦月が心を許す方ならば、悪い者ではあるまい。一度顔を見てみたい。連れて来て貰えるか?」
「えっと…八百さんが頷けば、大丈夫だと思います」
「―――八百、と言うのか。その方は」
当主は目を見開き、驚愕の表情を浮かべた。
しかしその表情の変化は一瞬だ。
睦月は気付きもしなかっただろう。
「そうですけど…お知り合いですか?」
「いや、きっと他人だろう」
「…当主様」
当主へ女中が近づく。
睦月の小屋に呼びに来た女中だ。
当主に何事かを耳打ちをし、そして傍に控えた。
険しい表情を浮かべる当主。
何か問題が起こったのだろう。睦月も雰囲気を察したようだ。
「睦月、先ほどの件は頼んだぞ」
「あ、はい。それでは失礼致します」
一つ深い礼をし、睦月は部屋を出た。
それを確認し、八百は式神との接続を切る。意識を浮上させた。
―――
「余所様のお家の事情に首を突っ込むつもりはなかったのだけれどね。これは中々、面白そうじゃない」
どうやら、昨日殺した師走と名乗った人間は、この本家にとっては重要人物であったらしい。
人間世界の事情など関係ないので気にも留めないが。
悪巧みをしていると扉が開く。睦月が戻ってきたのだ。
「あの…八尾さん」
「どうしたのよ、そんなに改まって」
「その…当主様がお会いしたいと…あ、あの、八百さんがよろしければ、なんですけど…」
「ふうん、別にいいわよ。管理者に挨拶するのは礼儀だから」
八百がそう言うと、睦月の曇っていた顔が晴れた。
思っている事が表情に出るのは悪い事ではないが、こう目の前で見ると面白い。
「ほ、本当ですか! それじゃ、案内をするので…」
「いいわ。場所は大体分かるから。貴女は休んでいて」
「え…大丈夫ですか? 広いと思いますけど…」
「この小屋よりは広いでしょうね。それに、慣れない事をして疲れたんでしょう?」
睦月は恥ずかしそうな顔で頷いた。
そうならば言えばいいのにと思う八百だったが口には出さず、睦月の額へデコピンをした。
何やら嬉しそうに額を撫でている睦月を尻目に八百は小屋を出る。
数分程歩くと玄関に到着した。
ガラリと戸を開けると、本宅の女中が頭を下げていた。
まるで、今の今までそうしていたかのようだ。
「…当主様がお待ちです。逸れないようにして下さい」
「あらそう」
それきり二人の間に会話はない。
八百は女中の後を黙って付いて歩き、女中は足音も立てずに廊下を進んでいく。
八百はお喋りな方ではないし、人間に愛想を振るう質でもない。
特に問題も起きず、先ほど睦月を始めとした暦位の人間共が集まっていた部屋へ到着した。
「…粗相の無いよう、お気を付け下さい」
「分かってるわよ」
そうして八百は襖を開けた。
一段上がった上座には、壮齢の男性が座っている。
少し離れた。部屋の中央辺りには座布団が一枚。
ここに座れという事だろう。特に遠慮する事もない。
「睦月の師、と聞いたが。あの子とは何処で会ったのだね?」
「十日ほど前に、山の中でね。けれど、師と言うには語弊があるわ。私は何も教えていないから」
その後、取り留めもない事を話した。
どこから来たとか、本当にくだらない話だ。
少し話をした後、こう切り出された。
「ところで…どうしてこの家と分かったんだね? 手掛かりは簪だけだったのだろう?」
「知り合いに詳しいのが居てね。そいつに聞いたの。それで遥々来たわけ」
「ふむ…感謝する。あの簪は、あの子の母が遺した物でね。何よりも大事にしていたんだ」
「そう、どうでもいいわ」
八百には物に宿る情念など知りえない。
あちらこちらで迫害を受け、その度に物を捨てて名前を変えて生きてきた。
自分の持ち物など有るはずもない。
もう話は済んだ。
さっさと部屋を出て行きたい。
睦月との約束を果たさなければならないのだ。
言いたい事だけ言って早いところ小屋に戻ろうとして、八百は言う。
「『天津』に会ったわ。睦月の母だという女に」
「…! 彼女に、会ったのか」
「ええ、随分と憔悴していたけれど。貴男達も酷い事をするのね。子を取り上げて死んだと伝えるなんて。外道そのもの」
「…彼女には、悪い事をした。だが、あの場所で、産まれたばかりの赤子は生きていけない。そう思っての事だ」
「あんなボロボロの小屋に押し込めて? まともに食事もさせていないんでしょう。粗末な食事も美味しそうに食べていたわよ」
睦月は不自由なく言葉を話せていた。
ある程度まで教育は受けていたのだろうが、扱う『術』に関しては粗末な物だった。
この『本家』では結界や式神を中心に行使する家系なのだろう。しかし見た限り、睦月にはそういった『術』を行使できるようには思えない。
一瞬だけ『力』を全力で開放し、運用は身体一つで行っている。
元々丸太を振り回す事は出来ると言っていたから、産まれ持ったのは身体の再生力か。
死地に飛び込み傷だらけで帰還し、それに適応するために身体は強化され、その見た目からは考えられないほどの怪力を誇るのだろう。
八百はそう考えた。
なんと憐れなのだろうか。
死なない為にただ生きて来て、信じているであろう当主には今の今まで騙され続けている。
憧れ続けていた母親は『鬼』へと変貌し、きっとこれから先も『本家』に利用され続けるのだろう。
だがしかし、睦月は笑っていた。
きっと何も知らないから笑っていられる。
「あの子は…小さい時から力があった。それこそ、中級の『魔』など寄せ付けないくらいには。だから、保護した」
「見栄を張るのね。下らない」
開き直ったようにも取れる言葉。
いつもならこの程度の言葉は意にも介さない。
しかし、この時は殺意を覚えた。
八百は睦月を気に入っているのだ。
それこそ、この腐りきった人間世界から連れ出そうと思うくらいには。
「まあいいわ。どうでも」
八百は立ち上がる。
もう用事は済んだのだ。
この場所にいる意味はない。
「さようなら。もう二度と会わないわ」
「そうか。それがいいだろう。君とは、生きる時間が違いすぎる。会わない方がいい」
そんな言葉を背に、八百は部屋を後にした。
記憶の彼方にある、友と認め合った、ただ一人の人間を思い出しながら。
―――
睦月が待つ小屋へと着いた…ハズだった。
「何をしているのかしら、ご老体」
八百よりも随分と背の低い、腰の曲がった老婆。
先ほどの部屋で睦月へと凶行に及んだ如月だ。
睦月が、朱い式神に組み伏せられていた。
周囲には青、白、黒の、同じような形状の式神が取り囲んでいる。まるで壁でも作っているようだ。
後ろに見える小屋の一部が損壊していた。かまどが有った所が崩れている。
なにか揉め事でも起きたのだろう。よりによって、八百のいない時に。
「なんじゃぁ…キサマはぁ…」
「そんなに騒ぐと死ぬわよ。若くもないのに」
老婆の眼は血走っており、とても正気とは思えない。
きっと昨晩、師走が死んでそうなったのだろう。
どういう関係かは知る由もないが。
その手には、身の丈に合わない長刀が握られていた。
なにやら、平常の刀とは雰囲気が違う。妖刀の類だろう。
朱の式神に何かを指示したかと思うと、組み伏せられていた睦月を四体がかりで押さえつけ、その首を差し出すようにした。
きっとあの刀で、睦月の首を落とすつもりなのだろう。
しかしなぜか、睦月が抵抗する様子がない。あの程度の式神、一瞬で粉砕できるだろうに。
「人を殺すの。意味、分かってる?」
「この娘は、人間ではない! 鬼子! 化物!」
「話にならないわね」
八百が睦月に近づこうとする。
すると道を塞ぐように、一体の式神が近づいてきた。
青い式神だ。八百の背丈を優に超える巨体。人間ではないだろう。
妖怪か何かを使役しているのだろうと、八百は断定した。
「睦月。少し、目を閉じていなさい」
昨日の式神は素体が人間であったから原形はとどめて置いた。
しかし妖怪ならば、手加減をする必要もない。
八百は一本の太刀を呼び出す。
式神召喚の応用。この程度は造作もない。
少し前、住む場所と戸籍を用意した見返りに、知り合いの神に打って貰った物だ。
変わった性質を持ち、普通の人間が持っても意味はない。
しかし、妖怪と対峙した際に、これ以上の頼りになる物はない。
『―――!』
八百を敵として認めたのか、丸太ほどもある剛腕を振り下ろす青い式神。
そっ、と、その軌道上に添えた。それだけ。
『―――!? ―――!』
それだけの事で、青い式神の剛腕は真っ二つに裂けた。
まるで豆腐でも切るように、なんの抵抗もなく。
「痛みはあるの。中途半端ね」
この太刀は、皮膚一枚さえも切り裂く事が出来ない。
しかし、それは人間に限った話。
妖怪に対しては無類の切れ味を発揮する。
それこそ『阿吽』でさえも抗う事は出来ない。
八百は太刀を横に振るう。
青い式神の胴体が真っ二つに分断され、声にもならない断末魔を上げて消え去った。
この太刀に切り裂かれた妖怪は、再生する事さえ出来ずに消滅する。
そんな青い式神を尻目に、八百は睦月へと近づく。
白と黒の式神が八百へと迫る。
数歩前まで迫った二体の式神。
八百は大きく太刀を振るう。
すると白と黒の式神、両方の胴体が両断された。
ベチャリと音を立てて地に落ち、そして消滅した。
距離など関係ない。
そこに妖怪が存在さえすれば、振るうだけで太刀が届く。
極論、目の届く場所に妖怪がいれば、太刀を振るえば切り裂くことができる。
袈裟切り一閃。
睦月を拘束していた朱の式神の頭部が真っ二つに割れた。
消滅しつつある胴体を蹴り飛ばし、睦月の手を取り立ち上がらせる。
「無事? 傷はないけれど」
「あ…はい、その…ありがとう、ございます…」
「―――イイアアアアァァア!」
―――ガギギィン!
八百の胴体を狙い、長刀を振るった如月。
しかし八百は苦も無く受け止めた。
何度かの剣戟。
不利を悟ったのか、如月は大きく飛び退き、二人の間には距離が出来た。
「それ、妖刀ね。退魔師の癖に邪道ね」
「蜚は処刑の刀…人間が首を斬り落とすために打った刀…鬼子を殺す、化物を殺す…」
全く話が通じない。
妖刀の思念に呑まれかけているのか。
このまま妖刀の意思で動く人形に成り果てるのも一興だが、今は睦月が後ろにいるのだ。
知り合いが妖怪へと堕ちるのを目の前で見て、良い気にはならないだろう。
「斬るわ、それ」
一度、太刀を振るう。
二度振るう。
三度、四度、五度、六度。
十数回ほど振るった。
一瞬の内に振るわれた軌跡は、蜚と呼ばれた妖刀に殺到した。
ピキリと、小さな音が耳に入る。
バラバラと、刀身が地面へと落ちた。
硬さも距離も切れ味も大きさも。何もかもが関係ない。
それが妖怪の類でさえあれば、問答無用で切り裂く。
妖怪を滅する為だけに打たれた、人間だけに握る事が出来る太刀だ。
まるで正気に戻った様子で。怯えた目で恐ろしい物を見る目で、八百に視線を送る如月。
「ひ、ひいいぃぃぃい! ば、ばば、化物めええぇえ!」
尻餅を着き、叫びながらズリズリと後ずさりをする如月。
最早、戦う意志は残っていないだろう。
「失礼ね、化物だなんて。こんなに人間らしい人間なんていないでしょうに」
手を振るい、呼び出した太刀を送り返した。
後ろに振り向き、睦月に言う。
「さ、行きましょ、睦月」
「え、えっと…どこに、ですか?」
「約束したじゃない。ご飯を食べに行こう、って。忘れたの?」
「あ…そうでした! 私、お餅を一杯食べたいです!」
「この季節に? もっと良い物があるんだから、向こうで決めましょう。時間は余るほどあるわ」
睦月の手を取ろうとする八百。
その瞬間。
―――ダガン!
撃音が響いた。
その音に反応し、睦月は後ろを振り向く。
如月が何かを構え、穴のあいた筒からは煙が立ち上っているのが分かった。
八百の胴体には、風穴が空いていた。
血が噴き出す。膝を付き、力なく倒れ伏した。
「八百、さん?」
倒れ伏した八百をゆさゆさと揺する。生暖かい何かがベトリと手に付いた。
八百の血だ。
地面が赤に染まる。八百からドクドクと血が流れ続けている。
睦月は血を見慣れている。怪我をして怪我をして怪我をして。その度に血を流してきた。
見慣れているハズだ。見慣れているハズだったのだ。
「矢尾さん。起きて…起きて、下さいよ…」
そう言っても、八百の反応はない。
彼女の心は大いに揺すぶられた。
フラりとやって来た。綺麗な、母が遺した形見を届けてくれた優しい女性。
第一印象はそうだった。
しかし話していく内に、自分を慮っている事が感じ取る事が出来た。
口は悪かったが嘘は吐かず、心の底からそう思っているのだと。
その言葉の端々には、優しさが感じ取れた。
だから、差し出された薬を迷わず飲む事が出来た、死なない様に耐える事が出来た。
しかし、死んでしまった。居なくなってしまった。
ただの人間だと、睦月はそう思っているのだ。
「えひゃひゃひゃひゃ! 死ね! 死んでしまえ!」
弾を込め、次弾を装填した如月。
銃口を睦月に向けた。
「よくも…!」
引き金に指を掛ける。
そして、躊躇なく発射された。
「よくも、矢尾さんを!」
―――ダガン!
―――ギギン!
発射された弾丸は、睦月を貫く事はなかった。
音速を優に超える弾丸を掴み取ったのだ。
それを目の当たりにし、如月は銃を取り落とした。
取って置きの銃も、睦月には通用しなかった。戦意を喪失してしまったのだろう。
しかし睦月には関係ない。
いつもの笑顔ではなく怒りを滲ませた表情で。まるで羅刹の様に、如月の前に立った。
拳を固く握りしめ、呆けた如月を睨み付けた。
一瞬の躊躇。しかし怒りが上回った。
「よくもおおおぉぉお!」
如月が弾け飛び、地面を抉り、地を揺らすほどに力が籠った拳。
事実、それが放たれればそうなる…ハズだった。
「そこまでよ、睦月」
睦月の肩に、そっと手が置かれる。
ビタリと、如月の顔前一寸程で拳が止まった。
強い風圧に如月の体が吹き飛ばされるが、老婆はヘラヘラと涎を垂らしながら笑っているだけだった。
ゆっくりと後ろを振り向く睦月。
そこには永遠に見れないと、そう思っていた恩人が立っていた。
「八百、さん?」
「殺す価値なんてないわ、そんな気狂い。放っておけばくたばるだろうし」
「けど、なんで」
「奇跡的に急所から外れて、奇跡に奇跡が十重二十重にも重なって偶然助かった―――って言っても仕方ないわね」
八百の胸元に空いた風穴は、そう言っている間にも塞がってしまった。
驚愕の色を浮かべた視線を八百に送る睦月。
ふう、とため息を吐き、八百は話し始めた。
「私ね、死なないの。斬られても潰されても千切られても溶かされても、何をしても治っちゃうの」
「何年前かしらね、こうなったのは。ずっとずっと昔、何も食べる物が無くて飢えていて、海に打ち上がっていた何かを食べたから、かしら」
「人間が死ぬ所を何度も見て来たわ。憎しみの渦の中で死ぬ所を。幸せに包まれて逝く所を。博打に負けて死に掛けの人間を拾ったり、金持ちを唆して破滅させたり」
「最近はね、神の知り合いも増えたの。あいつら死なないから。向こうも信者が少なくなったって愚痴っていたわ、案外俗物よね」
荒唐無稽な話だ。しかし、その不死性を目の前で見たのだ。信じる以外にない。
「それで、どう思った?」
「何が、です…?」
「人間は人間を簡単に殺すわ。欲望次第で簡単に。時には理由もなく」
如月は八百を撃った。間違いなく殺意を以って。
「けれど貴女は違う。そこの老人を殴ろうとした時、殺そうとした時、躊躇したわ。怒りに呑まれていても」
あの時、睦月は怒りに飲み込まれた。間違いない。
しかし一瞬だけ、躊躇をした。
なぜかは分からない。
理屈など無く、自然と体が動かなくなってしまったのかもしれない。
「一緒に来ない? こんな人間世界なんて捨てて。貴女とならやっていけるわ。ずっと」
そう言い、八百は掌を差し出した。
取れ、と言う事だろう。
それは同時に人間を辞める、と言う事でもあるのだろう。
無限永久生き続け、無限永久共に居る。
そういう契約なのだろう。
睦月は手を伸ばした。
恩人として師として、好意を持っているのは確かだ。
一緒に暮らしていたい。
誰にも目を掛けられなかったこの家を捨て、彼女と共に生きて行きたい。
途中で睦月の手が止まった。
怯えてはいない。恐れてもいない。躊躇う要素はないハズだ。
しかし…
「私は…私はっ!」
睦月の拳が強く握られた。
血が滲む。
地面には黒いシミが出来た。
泣いているのだ。
ポタリポタリと地面を濡らす。
涙を流す睦月。
八百は強制をしない。
あくまでも睦月の意思でそうなる事を望んでいる。
「…そう」
八百は睦月から離れる。影から出てきた黒い犬の背に座った。
まるで母に見捨てられる幼子のように、睦月は八百へ駆け寄ろうとする。
「待って…下さい、置いていかないで…一緒にいて下さい!」
「それじゃあね、睦月。また来るわ」
「八百さん!」
トプリと、八百は黒い犬と共に影へと消えた。
手を伸ばし、呆然と影があった場所を見つめる睦月。
彼女の眼からは止めどなく、涙が流れ続けていた。
―――
「久しぶりね、睦月。ここは何も変わっていないわ」
「お久しぶりです、八百さん。きっと今日来るのだと、お待ちしておりました」
八百にとっては気が遠くなる年月。
しかし睦月にとっては瞬きをするような一瞬。
まるであの瞬間から、睦月だけが年老いたようだ。
あの時とちっとも変らないボロイ小屋の中には、あの時から寸分も変わっていない八百、あの時より無残に老い果てた睦月がいた。
彼女が空けた床の穴は修繕されているようだが、踏むとギシリと軋んだ。
「老いたわね、睦月。見る影もないわ」
「はい。もうすっかりお婆ちゃんです。それに、孫が何人もいるんですよ」
「そう、良かったじゃない」
二人の間に面倒な言葉はいらない。
この長い時に何があったのかを、どちらからともなく語りだした。
八百は、知り合いの店を継いで質屋の真似事をしていた。
客は神ばかりで、曰く付の代物ばかり扱っていると言うと、睦月に笑われた。
睦月は、今は現役から退いて後進の育成に力を注いでいると言った。
自分の使う、我流で邪道な物ではなく、れっきとした本物を。
そして、暦位を解体したと言う。特に反発もなく、簡単だったと。
「それでどう? 人間世界は。長く生きて汚い所を見たりしたでしょ。一緒に来ない?」
そう言い八百は手を伸ばした。
しかし睦月は微笑むだけで、その手を取ろうとはしない。
「いえ、私は…八百さんと一緒にはいられません。確かに、時には裏切られたりもしました。化物と呼ばれたり、怪物と呼ばれたりも。だけど…」
「だけど?」
「人を助けて、お礼を言われて。それだけで良かったんです。人間として生まれたのなら、人間として生を全うしたいと。ずっと生きる必要がないと、そう思っていたけれど。笑顔を向けられた人間のままで死にたいって。そう思ったんです」
きっと八百には、その意志を動かす事は出来ない。
人間の意志は固いのだ。いや、意志が固いからこそ人間足り得る。
「そう…残念。貴女の意志は固いようだし、これ以上は言わないわ。ずっと、貴女と一緒にいたいと思ったのだけれど」
「ご免なさい、八百さん。けれど…一つだけお願いがあるんです」
八百は無言で頷く。
「もしも、もしもです。私の孫かその子か、ずっと先の子が、昔の私と同じような境遇だったら…」
昔の睦月。
このボロイ小屋に隔離され、腫物を触るような扱いをされて無視をされて。
ロクに食べ物も食べられず、怪我を治療する事もされず。
そんな境遇だったのだ、睦月は。
「助けてあげて下さい。力になってあげて下さい。一緒にご飯を食べに行ったり、一緒に暮らしたり。私が出来なかった事を、一緒に」
そう言って笑顔を向けた後、深々と頭を下げる睦月。
老いた睦月。
しかしその性根はあの時のままだ。
底抜けに明るく、笑顔が眩しく、食い意地が張っていて。
そして何よりも波長があった。何百年かに一度、出逢えるかどうか。
今もそれは変わらない。唯一無二の友として。
「分かったわ。約束」
「はい、約束です」
二人は握手をした。
殆ど力が入っていない睦月だが、固く固く。しっかりと。
「さようなら、睦月。きっと、永遠に逢えないでしょうけど」
「ありがとうございました、八百さん。貴女と出会う事が出来て、私…幸せでした」
後ろを振り向かず、八百は小屋を後にした。
眼から水が流れる。しかし、空には、綺麗な満月が浮かんでいた。
次の日、睦月は逝った。
呆気もなく、人間のまま。
永遠の命への誘いを断り、超越者として神に成る事が出来たのにも関わらず、脆弱な人間として。
その生涯を終えたのだ。
煙と共に天へと昇って行く睦月を遠くから見守り、八百は一つ溜息を吐いた。
「子孫を助けて、ね。無茶を言うわ、まったく」
これでは呪いではないか。死にもせず痛みもしない。だけれどもだからこそ、何よりも強い呪い。
しかし―――
「約束だから。叶えるわ、絶対に」
・名前:八百
設定:
遠路遥々『本家』へとやって来た女性。
元は自分を殺した相手を見つけるついでに簪を返しに来たのだが、その興味は既に睦月に向いている。
睦月を自分と同じ不老不死にせんと、心臓を打ち抜かれ死んだような仕草を見せるなどをするが、その場では不可能と悟り『阿吽』の影に入り姿を消す。
その後『気が遠くなるほど』の時間を経て睦月と再会、彼女とある約束をした。
老いて人間に絶望した睦月を引き込むつもりだったが、逆に希望を見出した睦月に諭され、その気をなくす。その後、睦月と永遠の別れをした。
泣くのは何百年ぶりか。
ずっと昔、飢えで苦しんでいた時『浜辺に打ち上げられていた何かの肉』を食べてから、年は取らず死にもせず。人間にとっては余りにも長すぎる時間を独りで生きてきた。
人間離れをしているが、死なないだけのれっきとした人間。
今は質屋の真似事をしているとか。
・名前:睦月
設定:
至って普通の退魔師。だが物理。
元から丸太を振り回すほどには力があったが、八百の秘薬を飲んで人間の限界に到達し、更に強化された。
具体的には、軽く叩いた程度で床を破るなど。当初はその力に難儀していたが、お茶碗を持つ時には加減が出来ていた事もあり、すぐに慣れた。食い意地が張っているせいか。
短刀を掴み折る、鋼鉄の斧を蹴り砕くなど、異常なほどの硬度を得られるようにもなった。
近距離から撃たれたライフル弾を掴み取る、拳圧で人間を吹き飛ばすなど、本当に人間なのかと疑うが、れっきとした人間である。
『瞬きをする間』の年月を経て八百と再会、彼女とある約束をした。
神に成る事も、永遠の命を得る事も出来たが、脆弱な人間としてその生を終えた。
彼女の最期は、笑顔だったという。享年八十四。
『妖怪の天敵』『人間の裏切者』『全ての味方』と呼ばれていたとか。
遥か未来の何処かの誰かに似ているとか。
・名前:『当主』
設定:
『本家』の最高権力者。壮齢の男性。
『天津』に好意を抱いていた。赤子であった睦月を奪う、その事実を隠匿するのもそれ故か。
かつては文月と跡目争いをしていたが、突如襲来した大妖怪に対して腰を抜かし、怯えて戦線に立てなかった経験を持つ。
兄が跡目争いから退いた為『当主』となったが、文月を始めとした暦位の数人にが言われるままである。その座は危うい。
八百が去り際に言った言葉から、彼女についてある程度知っているようだ。
・名前:如月
設定:
薄紫の式服を着た皺だらけの老婆。
睦月のいる小屋を襲撃、四体の式神を操り拘束、処刑しようとした。
しかし八百や睦月とは比べるべくもなく、最強を誇った四体の式神を滅され、首を切り落とそうとした妖刀に意識を乗っ取られた。
ライフル銃により八百の心臓を打ち抜くが、かえって睦月を激昂させて戦意を喪失した。
その後、薄暗い部屋で誰にも看取られる事もなく亡くなった。享年九十八。
専門は式神術。
師走の曾祖母。
・名前:弥生
設定:
濃青の式服を着たノンビリ口調の女性。
寝る事が三度の飯よりも好きで、場所を考えずに寝る。だが時と場合は弁える。
専門は式神術。
・名前:卯月
設定:
薄青の式服を着たどもり口調の青年。
師走と同年代と言う事もあり一定の交流はあったようだが、彼の女性観念については正直辟易していた。
専門は結界術。
・名前:皐月
設定:
濃赤の式服を着た大男。
文月に金を渡され、召集の際は『当主』の思惑とは別の行動をするように言い含められている。
個人的には暦位の誰が死のうが気にしない。
専門は式神術。
・名前:水無月
設定:
薄赤の式服を着た厳つい男。
専門は結界術。それを応用した肉弾戦を好む。
我流で退魔術(物理)を会得した睦月を一定以上尊敬をしている。
・名前:文月
設定:
濃黄の式服を着た白髪の目立つ中年の男性。
『当主』の兄。
皐月を金で言い含め、文月の目的を知った上でこき使っている。自称策士。
専門は結界術。
・名前:葉月
設定:
薄黄の式服を着た勝気な女性。
長月の人間性は嫌っているものの、彼の持論には一定の理解を示す。
専門は式神術。
・名前:長月
設定:
濃白の式服を着た人を小馬鹿にするような優男。
誰かが死んでも『弱かったから』で済ませる薄情者で、彼の持論は『勝った物が強者』である。
文月に従っているのも『強者』である彼の寝首を掻く事が目的である。
専門は結界術。
・名前:神無月
設定:
薄白の式服を着た少年。
見た目は丸っきり少年だがその実、何十年も前から姿が変わらず同様の暦位にいる。
周りの者からは『妖怪爺』と呼ばれている。ショタジジイ。
専門は式神術。
・名前:霜月
設定:
濃黒の式服を着た寡黙な女性。
現『当主』に対しては、余り良い感情を持っていない。
かつて彼が見せた無様な姿を知っているせいか。
専門は式神術。
・妖怪を滅する太刀
八百の所有する太刀。
知り合いの神に、住む場所と戸籍を用意した見返りとして貰った物。
妖怪に対する特効を持ち、この太刀で斬られた妖怪は再生する事も出来ずに消滅する。距離も硬さも大きさも何もかも関係なく『斬りたい』妖怪だけを切り裂く事が出来る。
対して人間には鈍ら以下の切れ味である。皮膚一枚髪の毛一本すらも切る事が出来ない。
『妖怪だけを殺す太刀かよぉ!』
・妖刀:蜚
如月の持っていた妖刀。
あらゆる『首』を斬る事だけに特化した長刀。
凶悪な意思を持ち、握った者を乗っ取り周囲の首を斬り落とす為だけに動く。
妖刀らしい妖刀。本人? は『首』を落としたいだけで至って純粋。
・暦位
『本家』で用いられている位。
『睦月』~『師走』まで存在し、時期が早いほど発言力も大きい。
本来は純粋な実力で選定されていたが、現在では『当主』の一存で暦位が選定される事や、実力の劣る『本家』の人間が高位に就くなど、実質的に形骸化してしまっている。
数十年後、睦月の手により解体された。
色々と煩雑なので二度と出ない。




