冒険ギルド レガルト山脈産魔獣軍殲滅戦〈1〉
天魔の邂逅
冒険ギルド レガルト山脈産魔獣軍殲滅戦 〈1〉
──炎龍と出会って6年が経ち、天魔は11歳になっていた。
契約したことにより、元から使えた神、邪、無、幻、雷、時、空間属性に炎属性が使えるようになり、合計8属性となった。
この世界には、属性の第一段階に火、水、土、風、光、闇があり、それを極めた時に
炎、泡、氷、地、木、雷、聖、魔、毒になる。
聖、魔限定だが、更に上の属性がある。
神、邪属性だ。これは神やその一族しか保有していない。
また、これ以外に無、時、空間、幻があり、特別属性と呼ばれている。
その中の無属性魔法と言うものは自由な魔法と言われ、重力魔法、転移魔法などのが存在している。これらの魔法は先人達が作ったもので魔力を多く消費し、イメージ力があれば誰でも魔法を作ることができる属性だ。
一応、他の属性でも作ろうと思えば作れるが、既にこの世に存在している可能性が高いので創造者になるのは難しいことだろう。
11歳になった天魔は魔法や神の力は勿論、6年の間に獣人の有名な冒険者に鍛えてもらい、有る程度は剣でも戦えるようになっていた。
一昨日、その冒険者に「これくらいあればCランクになれるだろう」と言われ、エリアに許可を貰ってこの国、フォンドツリーにギルド本部で登録、試験を受けることになったのだった。
フォンドツリー国ギルド本部には多くの冒険者が集い、様々な種族の人が彼方此方で見かけれた。
「すいません、登録お願いします」
「わかりました。では、この紙に名前、年齢を書き、紙の端にある赤いところに魔力を流してください」
天魔は名前と年齢を書き、魔力を流す。
すると、紙は光だし、受付に置いてある魔道具に吸い込まれて行った。
「登録完了しました。カードができるまでに時間がかかるので、彼方でランクを決める試験が行われています。そこで試験を受けて判定カードを貰って来てください」
受付の人が言っていた方を見てみると、今まさに試験を受けている人が居た。
その人は試験管に押されているようだ。
邪魔にならないよう、扉の後ろに待機した。
しばらくして試験が終わり、前の人が出てきた。
それを確認して天魔は試験管に試験をお願いしに行った。
「申し訳ないが、ここはA〜SSランクの試験用フィールドだ。初期のランク決めをするところは彼処に立っている奴に言うといい」
「教えて頂きありがとうございます。失礼しました」
この場から離れ、もう片方の試験用フィールドに向かった。
「君が今回このフィールドで試験を受ける人だね?
僕の名前はエディック。現役AAAランカーだよ。
このフィールドでは、街中だけで依頼を受けるHランク、薬草採取などの野外依頼を受けることができるGランク、討伐系の依頼を受けることができるFランクかを判定する試験を行っている。
主な試験内容は僕と対戦だよ。
だから、扉側にある白線のところに行くんだ。
......じゃあ、この数字が0になったら試験を開始しよう。こんなことはないだろうけど、もしこのフィールド内で死んでも彼処で蘇ることができるから安心していいよ」
試験管エディックはそう言って剣を引き抜き、構える。
同様に天魔も貰った鉄剣を構えた。
その場に沈黙が訪れ、カウントダウンが始まる。
10...9...8...7...6...5...4...3...2...1...
数字はついに0へ変わり、試験が始まった。
エディックはいきなり、こちらへ向かって来て、剣を振り下ろして来た。
その剣を鉄剣で受け流し、後ろへ回り込む。
「へぇ...これを受け流すか。誰に剣を習ったのかな?」
「ウィズって冒険者に習いました」
「ウィズかぁ...懐かしいねぇ...。最近ここに来ていると噂されてたけどまさか稽古をつけて居たとは。
ってことは結果は期待できそうでだ。だからこちらも遠慮なく攻撃させてもらうよ!!」
剣を黒い剣に持ち替え、魔力を流す。
魔力を得た剣は雷を纏い、彼が剣を振ればフィールドに焦げ目が出来た。
「魔剣ですか?」
「うーん、これは魔剣のようで魔剣ではないんだよ。
この剣は古代人が魔剣と同等の力を持つ剣を作り出すために作ったとされているよ。でも、この剣は中途半端で魔力の消費が結構あるんだ。これを見つけた人は魔力をあまり持っていないらしく、金貨10枚で譲ってくれたよ」
古代人、今から2万年前の人たちのことだ。彼らは魔力を多く持ち、あっという間に文明を築き、空中に地球で言う関東地方と同じくらいの大きさを持つ空中都市を築いたそうだ。
その天空都市には、隕石を迎撃するために砲台が設置され、また、外部からの侵入を防ぐため、16方位にレーザー光を放つ兵器が置いてあるそうだ。
数百年前、ある人間の国が空中都市に向かって大規模魔法を放つと同時にいるかわからない古代人に宣戦布告をした。
魔法は届くことなく、無残に消えて行った。しかし、向こうから一通の手紙が降って来た。
その手紙には「我々古代人に手を出した愚かな現代人共よ、今兵を引き上げるならなかったことにしてあげよう。だが、もし続きをすると言うのであれば貴国に破滅をもたらせよう」と書かれて居たそうで、その人間の国の兵士達はハッタリと思い、再び魔法を行使した。
だが、空中都市から一切の攻撃はない。
やはりただのハッタリだと兵士達は魔法を使い、空中都市を落とそうとした。
でも、攻撃は聞かず、ただ魔力が消費されて行くだけだった。
もう攻撃しても無駄だと悟ったその集団の指揮官は撤退しようとした。
その瞬間、空中都市に変化が起き、空中都市の地上と向かう面に細長い棒のようなものが出現し、周りの魔力を吸収し出したと言う。
そして、棒のようなものから白色の閃光が放たれ、その国を刹那の間に滅ぼしたらしい。
また、その反撃の後は未だに残っており、1万メートル級の山が真っ二つに分かれていたり、海が割れているところがあるそうだ。
「それでも得ですよね?擬似魔剣は高いですから」
「まあね。それよりも随分と余裕そうだね」
「無力化できる手段を持っているからですよ。何なら一つ試そう。つい最近思いついたものなので上手く行くかわかりませんが。
『炎を司る世界の柱よ、我と結びし契約を元に力を貸し与えよ』」
炎龍の紋章が光だし、光は左半身を包んで行く。
それは白色から橙色へ変わり、周りの空気を熱し始めた。
「これは少し危険そうだね。でも僕にはこの剣がある!だから、燃やされる前に君の腕を...」
エディックはその続きを言おうとしたが、言えなかった。
理由は一つ。余裕が消えた。
それだけである。
「俺の腕をどうすると?
『火炎地獄を展開、
炎を司る者よ、契約より我に力を貸し与えよ──擬似精霊創造、溶岩龍召喚』」
一旦辺りが暗くなり、フィールドからは熱が出始め、地面を溶かして行く。
その溶かされた地面に影ができ、赤色の龍が溶岩擬きから飛び出して咆哮した。
「冗談だよね...」
「冗談もなにも、これは事実だ。どうだ?例えあの結界を張っていると言っても後遺症残さず戦う前の状態で復活するのはきついんじゃないか?
さっきのはただ腕に炎を纏っていただけだが、今回は違う。だから諦めても問題ないと思うが?何なら俺が死にそうだったので途中で終わらせたってことでも構わない」
「いいよ。だからその物騒なものを消して...」
「わかりました。合格ですか?」
「合格だよ。これを渡せばFランクになれる。おめでとう。じゃあ、僕は...」
エディックは疲れたような顔をしてギルドから出て行った。
天魔は、それを見届けた後、受付に渡されたものを渡してギルドカードを受け取ってギルドから出て行った。