龍を祀る祭壇 〈2〉
天魔の邂逅
第一章 創始樹の邂逅
龍を祀る祭壇 〈2〉
天魔はどちらの道を通るか迷っていた。
このまま昔からあった道を進むか、新たに出現した怪しい扉の向こうに行くかを。
試しに、魔力探知などあらゆる敵対心をもつ者を探す魔術を使って見たものの、数百メートル単位では感じられなかった。
でも、扉の方から高濃度の魔力が漏れ出している。
この周辺には火山がないので溶岩で死ぬなんてことはなく、創始樹から溢れ出る魔力なのかもしれないけど、何かしら危機感を覚える。
「本当だったら最初の道を選びたいけど、この扉の向こうにも興味があるし...少し見ていこう」
ドアノブを捻り、少し扉を開ける。
すると、そこには松明などが置かれ、明るく照らされた空間が存在した。
扉の向こう側に足を踏み入れ、先へ進む。
扉から20メートル離れたところにさらにもうひとつ扉が存在していた。
その扉を開けてみると、何かを祀っている場所があった。
周りの壁にはある生き物の絵が書かれており、一部では人間と戦っているところも描かれていた。
そのある生き物を祀っているところの周りには幾つかの天然魔晶石が置かれ、魔法陣をかたどっている。
魔法陣の中心には水晶があり、その水晶の中には炎が揺れていた。
「何だろう...」
水晶を持ち上げてみる。
その瞬間、魔法陣が光だし、崩壊し始めた。
水晶は周りに置かれた天然魔晶石から魔力を吸い出し、肉体のようなものを生成する。
魔力を全て抜き取られた魔石は黒い砂となり、何処かへ散って行く。
「もしかして、封印されていたのかな...?」
肉体を生成した水晶は更に体を大きくして行く。
全ての天然魔晶石の魔力を吸い出しても足らない水晶は周りの空間からも魔力を吸い出し、それから数分経った時、水晶は魔力を吸うのをやめた。
急に、魔力の吸引がなくなったと不思議に思った天魔は水晶のあった場所へと目を向ける。
しかし、何もいない。
水晶を探すべくあたりを見渡したところ、自分の背後に何か、凄い力を持った存在の気配があった。
急いで後ろに振り向き、戦闘態勢に入った。
それを見てある存在は
「そう、慌てなくていいよ。僕から君に害を与えることは出来ないから。それに、古代神の統率者、天神、冷酷神の子である『超越神』の君に勝負をしかけたところで負けるからね」
と言った。
「超越神?」
「あれ?知らなかった?超越神というのは神が幾ら集まろうが傷つけることさえ出来ない神のこと。その神に最も近いとされていた神は天神のリーダーと魔神のリーダーのみ。
その2神の子である君には両方の力と精神、肉体があるし、その眷属だった僕の父が言うには何でも原初の世界の中心にあるとされる力の源が魂代わりになっているから不老不死と言われているね」
「一つ言いたいことあるんだけど言っていい?」
「何?」
「誰?まあ、答えなくていいよ。鑑定したから」
その鑑定結果がこれである。
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種族:炎龍
討伐推奨ランク 不明
説明:2代目7大龍であり、ある古代神の眷属。
7大龍の中で最も温厚な性格で、滅多に他の生物を襲わない。
だが、数百年前、地龍の行き過ぎた行為に怒り、創始樹周辺に築かれた国を壊滅させ、創始樹の半分を焼き払った。
そのことが原因で創始樹の神と対立し、木の地下に封印された。
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また、天魔も自身を鑑定した。
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名前:天魔
種族:超越神/古代神
討伐推奨ランク 測定不能
説明:天と魔の両極の力を持ち、体内に4つ核を持つ。
最強神の核、冷酷神の核、天魔神の核の3つの核の中心に???核が存在している。
???を取り出すことは本人か創り上げた者しか出来ない。力ずくで取り出そうとしても直ぐに肉体を再生され、切りが無い。
眷属:炎龍
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この結果を見て天魔は疑問に思った。
どう疑問に思ったかと言うと、どうして炎龍が自分の眷属になっているのか、ということだ。
別に眷属化をした覚えがないし、魔力で支配した覚えもない。
そこで炎龍に尋ねて見た。
「ん?ああ、それは君が水晶に触れた時、僕が微量の力を奪って無理やり契約させたからだよ。いやー、本当に運がいいよ僕は」
「よかったね」
「本当、都合良く穴に落ちてくれてよかったよ。あいつも馬鹿だなぁ」
「あいつ?」
「あのでっかい木に宿る神様のことだよ。本来なら僕は後数千年封印されてないとおかしいんだけど復活しちゃったから異変に気付いて今頃降臨しているかもね......」
炎龍の声がだんだん小さくなって行く。また、炎龍は上を見上げて震えている。
「逃げないと......見つかったら殺される」
「そんなにやばいの?」
「かなり危ない奴だよ。どうしよう...ああ、あいつ今真上に......」
続きを言おうとした瞬間、地面が揺れ、天井が崩れてくる。それを力を使って落ちるスピードを遅くして自分の眷属になった炎龍に指示を出した。
「このままここにいたらまずい。だから、上に!!」
「そうだね、取り敢えず上に行かないと!!」
炎龍は自身の背に天魔を乗せて飛び立ち、地面を突き破った。
途中、何らかの衝撃が走ったが、炎龍は気にすることなく雲があるあたりまで登って行った。
☆
高位精霊side
「......」
いつまで経っても自身の消滅の時が訪れない。
アクレアは、何が起こっているのか確認しようとゆっくりと目を開けた。
そこには、体の半分を焼かれて地面にのたうちまわっているケルベロスとその横に大きな穴が空いていた。
また、周りにいたたくさんの魔獣は空を睨みつけ、中には攻撃をしようとする個体もあった。
それを見てアクレアも空を見上げた。
じっと空を見つめていると、紅く細長いものが動いていた。
その紅くて細長い物体は徐々にこちらへ近づいてき、炎を吐いた。
炎は容赦無く魔獣の群れを襲い、焼き尽くす。
魔獣は全て消え失せ、魔獣の群れがあったところは焦土と化していた。
魔石も残っていないことからかなり強力な攻撃だったのだろう。
「とりあえず助かったのか......
にしても、ケルベロスといいあの多くの魔獣......創始樹に何か異変が起きているのか?」
アクレアの目は天へ伸びる創始樹を捉え、それは動じることなく、ただ立っていた。
☆
「指示通り雑魚達は焼いといたよ。それにしても天魔は水の高位精霊と知り合いだったとはね......
氷竜とか、水の精霊王のことだし、その精霊の意思を尊重して獣人のところに送ったんだろうけど...」
「エンは氷竜と仲良いの?」
「うーん、そうだね......地龍よりはマシかな。彼も優しいといえば優しいけど容赦ないんだよね。いろんな意味で」
昔、天龍を泣かせたと地龍が言って怒った氷竜と5年間争ったなぁ...と炎龍は昔を思い出しながら言う。其の後から地龍と小規模な争いが起きたそうだ。
天魔は氷竜に会ってみたいと思いつつ、降下の指示を出した。
本来降りるべきところには人だかりがで来て着陸で気なさそうなので其の横の林に着地した。
「じゃあ、僕はこの辺で戻らせてもらうよ」
「何処に?」
「紋章にね。この体でいたら迷惑がかかるだろうからまた呼び出される時を待っているよ。
出て来て欲しかったらそう念じてくれれば出るから。じゃあ」
炎龍は光の粒となり、天魔の左足に新たに出来た紋章へ消えて行った。
其の後、直ぐにあの人集りのところへ行き、家に帰って行った。
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種族:氷竜
討伐推奨ランク 不明
説明:ツンドラ気候に位置する標高1万メートルに達する山を住処とし、水の精霊王と共に行動する7大龍の一員。
7大龍の中で一番冷静な竜。
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種族:地龍
討伐推奨ランク 不明
説明:7大龍の中で一番知性ある生き物を怒らすのが得意な龍。
近年、炎龍を怒らせ、暴走させた原因であり、それを飛べる他の龍に憧れを抱いている。
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種族:天龍
討伐推奨ランク 不明
説明:古代人が作ったとされる空中都市の一つを住処としている龍。性格は炎龍と同じく温厚。
また、数匹聖獣を配下にしている。
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名前:創始樹
種族:世界樹
説明:最初に生まれた世界樹。
今では星の海へ届く程樹が伸びており、数多くの種族を支えている。
また、地下深くまで根を巡らせ、地下深くから湧き出る魔力を養分としている。
創始樹周辺には多くの天然洞窟が存在し、其の奥にはダンジョンが存在している。
そのダンジョンを攻略出来たものは居らず、ダンジョンには超古代文明の道具さえ残っていると言われ、多くの国が調査しようと奮起している。
また、樹の周りに数10kmに渡る結界を張り巡らせており、創始樹の国から神扱いを受けている。
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