龍を祀る祭壇 〈1〉
「ここは...」
天魔は暫くキョロキョロと辺りを見渡し、自分の真上にある穴を見つめ、あることを思い出した。
「そういえば彼処から落ちたんだっけ......直ぐには戻れそうにないなぁ」
ここからこの洞窟の出口まで20メートル離れている。
一般人ならとてつもなく運が良くない限り死んでいることだろう。
辺りには人骨が落ちていたりもする。
これも"精霊王の怒り"の被害を受けた人のものだろう。
「怒られるのは嫌だから脱出する方法を考えようか。
でも......まずはこいつらの相手をしないとね」
岩と岩の隙間や影、水中から魔獣がこちらに向かってくる。
魔獣は一斉に飛び上がり、目の前にある獲物目掛けて口を開いた。
「【拒絶の斬撃】」
両極の紋章が光り、両手に剣が出現する。
天魔はその剣で襲いかかる魔獣に剣を振り、斬撃を飛ばした。
何匹かやられたが、それでも魔獣はただ目の前にある獲物へ向かってく突き進んでくる。
だが、ある一定の距離まで来るとこちら側に進むことが出来なくなった。
「せっかくだし色々な実験でもしようかな。取り敢えず【拘束】」
魔獣の動きが止まった。
もし、この瞬間を目にしていなければ元々この場所に置かれていた彫刻や銅像と感じられたかもしれない。
「この魔獣、ずっと拘束させたまま木の板の上に固定して行商人に売りつけたら高く売れるだろうなぁ。
こう考えると壊すのが勿体無いや。
......でも、そう簡単に実験体は手に入らないし、壊そうか。
まずは、【分解】かな」
今、しようとしていることは人で言うと、人間の体は大部分は水なので
水素原子(H)が半分以上(60.3%)酸素分子(O)が25%、炭素分子が
10.5%、窒素分子(N)が2.4%と
残り25種類の元素に分けるということだ。が、この世界では魔力があるため、少し割合が変化するだろう。
「【分解】」
魔獣の足に触れ、魔法を発動させる。
すると、魔獣の体は触れられたところから徐々に消え出した。
本当に消えているのか、調べて見ると僅かな魔力の変化があった。
また、特に苦しんでいるように見えないので痛みはないと思われる。
痛すぎて神経が麻痺したかもしれないが、それはそれでいいだろう。もし、痛みを感じたらただ、消滅するよりも死への恐怖が増すかもしれない。
「初めてにしては上出来か...
次は【錬成】かな...合成獣とか人造人間を造って護衛につけたり...
いいかもしれない。犯罪者になりたくない時は彼らを使うのがいいかもしれないね。ま、でも今回はあくまで性能が知りたいだけだから背中に魔道具をつけて戦闘奴隷にするとかでいいかな」
魔獣の側に魔法陣を刻み、魔法陣を刻んだ鉄の塊を乗せ、起動させる。
「家の本に書いてあった古代兵器作れるかな...」
古代兵器。古代文明に作られた、魔獣との抗争や戦争で用いられた道具だ。
当時の魔族以外の種族は魔力をあまり持っていなかったため、地球の現代にある武器、銃や、大砲、ダイナマイトなど、魔法に変わるものが多く存在していた。
だが、ある時を境にこの文明はなくなってしまった。
それは、神々の戦争だ。
この世界に科学という力をもたらした異界の神が追い出され、その力を用いて発展した国は滅亡した。
今でも科学を復活させようとする国があるが、災害が発生してそれどころでは無くなっている。
また、かつて天魔の親に当たる神もその出来事で共闘していた時もあった。
そのおかげでこの世界が助かったと取ってもいいかもしれない。
古代神曰く、冷酷神(最恐)は殺戮兵器を気に入っていたとか。
彼ら曰く、最強神はその力がもたらす繁栄を楽しんでいたのだとか。
「あっ.....はぁ〜......」
天魔の視線の先には色々な部位に鉄の塊が突き刺さっている魔獣の姿があった。
想像していた兵器とは全く違うものだった。
「失敗かぁ......そう簡単には成功しないよね。でも、ドッキリに使えそう。もし、僕のテリトリーを破壊しに来たものがいたらこいつを襲わせよう」
ちらっと失敗作を見る。
「でもなぁ......こいつだけではなぁ......残りの全部使って練習でもしようかな......練習すればきっと素敵な魔獣が完成する筈」
地面に術式や魔法陣を刻み、起動させる。その時、天魔はとあることを失敗してしまった。
先程造った魔獣も一緒に合成してしまったのだ。
結果は1体が成功し、4体程が先程と同じようなものになり、その他、モザイクをかけなければ表示出来ない位のグロテスクなものが出来てしまった。
が、折角なので簡単に言っておこう。
『変な色をしたスライムに異物が紛れ込んでいる』と。
正直これではグロさが伝わらないと思うが仕方のないことだ。
「これ見たら余程変人じゃない限り逃げるね。地上に持って帰ったら騒ぎが起きそうだし封印しとこ......【小型化】したら瓶に収まるよね...」
スライムに縮小の魔法をかけ、収納した。
其の後、魔獣に【奴隷化】の魔法をかけ、主人に逆らえないようにした。
「さて、直ぐに持ち帰りたいけど帰り方よくわからないし、暫く洞窟探索でもして帰り方を探そう。魔力の流れ辿って行けば原因がわかるかもしれない。【魔力探知】」
視界に魔力と思われる黒い霧のようなものが表れる。
黒い霧は魔獣などの生命体に少し吸い込まれているのがわかった。
また、天井に空いた穴を見ると外の魔力が一気にこの洞窟へ集結しているのがはっきりとわかった。
「あの岩、解析出来たら何が原因で落ちて来たのかわかるんだけどなぁ。多分風属性かなんかなんだろうけど......何か違う気配がするんだよね......」
幾つも分岐する道を見つめる。
「片っ端から潰して行こうかな」
1つ目の道。1番魔力濃度が濃いところに来ている。至る所から魔獣が発生し、【浄化】や【吸収】を使って湧き潰しをする必要がありそうだ。
ここで生まれる魔獣は今言ってもわからないだろうが、冒険者ギルドのランクで言うAランカーと互角。またはそれ以上のものだ。村なら簡単に蹂躙されてしまうだろうが、騎士団がいる町では半壊と言うところで収まるだろう。
「弱い......つまらないなぁ」
カチ......
「?」
何か、スイッチを押したような音がした。足元を見て見る。が、何もない。
じゃあ、何が──辺りを見渡すと複雑に魔力の糸が入り組んでおり、岩に繋がっている。
通って来た道には糸が切れ、地面に落ちている岩があった。
恐らくその岩のしたにスイッチか何かがあるのだろう。
「あ、これもしかしてやっちゃったかな......やっちゃった......」
魔力の糸がプツンと切れ、全ての岩が地面に落ち、下から鋭利なものが飛び出し、小さい部屋に閉じ込められてしまった。
先程まで岩があったところは穴が出来ており、虫系の魔獣がうじゃうじゃと出てきた。
「モンスターハウス......こんな時には」
何やら赤黒いものが詰まった瓶を投げつける。
すると、そこにはスライムのような生き物が居た。
スライム擬きは虫系の魔獣に触手を伸ばし、力を吸収してゆく。
力を吸収された魔獣を見ると、ミイラ状態だった。
極限まで生命力を吸われたのだろう。
「何と言うか......あっという間だね......これを人口の密集しているところに放ったらすごいことになるんだろうなぁ」
このスライムが街に放たれた場合、対応を打たない。または、打てない状況となった場合は手遅れだろう。
仮に、何も捕食していない状態を初期形態とする。
この状態ならば魔法で焼き払う。もしくは、浄化するだけで済むだろう。
1人くらい捕食されても問題ないのだが、数人捕食された場合、20センチぐらいだったのが、1メートル、1,5メートル、2メートルと巨大化して行くことだろう。
一般的なスライムの場合、一般人3人分の魔力や生命力を吸い上げると50センチ程の体長が1mになると言われている。
もし、スライムが人口5000人の町に放たれ、分裂をせずに一個体のままでとどまっているとすると、規模にもよるが、町は粘液によって覆われることになるかもしれない。
「【弱体化】【小型化】」
二つの魔法を発動し、スライムにかけた。
スライムは縮んでいき、瓶に収まった。
「このスライム擬き、改良しないとなぁ。そういえばこのスライム擬き生き物なのかな...【鑑定】」
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人造魔獣スライム
人の手によって作られた魔獣。古代兵器の一つではあるが、失敗作として有名だ。
その理由は創造者さえ食らってしまい、制限なく巨大化してしまうということだ。この兵器は5代目魔王が幼少期に作ったと言われ、人族の国を5カ国、神を3柱葬ったと言われている。
現在、人造魔獣スライムαは9つに分けられ、封印されている。
古代人族討伐ランクはAAA(現在の『龍級』)
古代魔族討伐ランクはA。
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「5代目魔王かぁ......きっと似ているんだろうなぁ。他のスライム見てみたいね」
人造魔獣スライムα。全長9000メートルで、魔力量は古代神の神の位で言う中級神にと同等であったと言われているが、実際は下級神程度だ。
古代神の下級神は現代神の最高神よりも実力が上であり、現在、古代神は9柱しか存在していない。
中級位位が3柱、下級位が6柱である。
また、そのスライムαを作った魔王も強かった。スライムαの十数倍の実力を持っていた。その理由は体の半分をスライムα(試作品)にしていたからである。まあ、スライムに体を乗っ取られて死んだが。
「モンスターハウスを制圧したことだし、先に進もうかな」
天魔はモンスターハウスの奥に現れた扉を見てそう言った。
翻訳アプリで検索した語句を使っています。
訳が違うところがあるかもしれません。
説明:冒険者ギルドのランク
ランクは孤児院から出た子供たち用にGランクというランクと登録仕立ての模擬試験で昇格出来なかった、まだ戦えない冒険者のためのFランク、試験に合格して「ゴブリン程度なら倒せるよ」くらいがEランク、「3,4人同じ実力の人が集まればオーク(1体)なんて余裕だぜ」がDランク。
「オークなんて1人で余裕。ゴブリンの大群は少しキツい」位の実力者がCランカーとなり、「余裕でオークの上位種、ゴブリンの大群楽勝、骨の2,3本覚悟でオーガを倒せる」位がBランカー。
「オーガが群れになったらキツい。けれども4,5体位なら余裕」がAランカーだ。
ここまでなら努力次第で可能。
問題はAA以降
「下位竜と互角。オーガの大群なら余裕で捌ける」がAAだ。
下位竜と聞いて「そんなもんか」と思うかもしれないが、割と強かったりする。
かつてある国の辺境伯の騎士と戦い、全滅させた位だ。
また、貴族に属する騎士の実力はランクでB〜AA位だ。其の実力者が3000人〜いると考えてもいい。
次はAAA。「下位竜を余裕で捌け、数人集まれば中位竜と渡り合える位。が、中位精霊には敗北する」位。
Sは「中位竜と渡り合える存在」
SSは「中位竜と上位竜の間を余裕で倒せる位の存在」
SSSは「竜なら倒せるが、龍には勝つことは出来ない。中位精霊に勝つことはできるが、神の眷属である高位精霊には瞬殺されてしまう」
『英雄級』「国家と1人で戦争出来る位」
この後も上にランクが5つ存在しているが、『英雄級』以上のものはいないため、省こう。
初心者G,F,E
二流 D,C
一流 B,A
超一流 AA,AAA,S
人外 SS,SSS
化け物『英雄』『眷属』『龍』『精霊』『現代神』『古代神』
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