表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天魔の邂逅  作者: シグマ
龍の邂逅(炎)編
2/20

精霊の祠

精霊=アクレア


御婆様=ケリア・レアエル


少女=エリア・レアエル


天魔=テンマ=カイ君



──天魔が拾われて5年が経った。


天魔を拾って数日で少女(エリア・レアエル)が精霊の祠に捨てられていた"人間"の赤子を拾ったという噂が流れた。

レアエルというのはここ、創始樹の守護者にて13大王族と数えられるほど権力や財力を持った【結界都市】を治める、都市国家の王女だ。

何故これほどまで王族がいるかと言うと、この国が連邦国家であるからだ。

創始樹を中心に作られた国々は日々争っていたが、数百年前から外部からの侵攻が始まり、国々は対処するため、各代表を創始樹の天辺から行ける中立地帯、【浮遊島】に集めた。

最初は同盟軍としてあったが、裏切りや同盟軍からの侵略が絶えなかったため、再び代表を集め、支持を表明した国とともに連邦国家樹立し、後は国営が厳しくなった国々が破綻し、無人の国を取り込み、拡張を繰り返し、今あるこの国が出来上がった。


「エリア、この前契約した精霊見せて」

「またー?別にいいよ。でも、あいつ結構性格悪いよ」

「御婆様から聞いた話だけど精霊性格って契約者の性格なんでしょ?エリアの性格が悪いわけない。だって、捨てられていた僕を拾ってくれたんでしょ?」

「あー...余計なことを」

「で、見せてくれるの?」

「うーん、私のじゃなきゃ駄目?」

「他に何がいるの?」

「この魔力量だと問題ないだろうし......カイ君、精霊にあって見る?近くに精霊と契約できる湖があるんだけど...」


エリアはボソッと言ったが、

この言葉を聞き逃さずことはなく、天魔は「行く行く」と手を取って森の方へ向かおうとした。


「そっちじゃない。あっち」


天魔は向きを変えて無言で指を刺された方角を目指した。




しばらく歩いていくと、底まではっきりと見ることのできる非常に綺麗な湖に辿り着いた。

湖の中央には6柱の岩と、その岩を結ぶ線で出来た魔法陣が刻まれた孤島があった。

エリア達が今から向かう方向には祠が立っていた。


「ここをくぐって精霊王様に許可されたものだけ孤島にいけるようになるの。

精霊王様に許可をもらうための条件は...」

「条件は...?」

「処女か童貞のみ...

一回でもある一線を越えたらもう一生精霊と契約出来なくなる...

だから私も15歳の時精霊契約の儀式を行ったのよ」

「へぇー、で僕の場合は大丈夫なの?」

「カイ君はまだ子供でしょ?なら大丈夫よ。たぶん...」


ちらっと手の甲に刻まれた冷酷神の紋章を見る。

エリアは気を使って手の甲にある痣が冷酷神のものだと言っていない。が、天魔は自身の手にある痣が何なのか既に理解している。


「じゃあ、いって見るね」


祠の目の前まで行き、魔法陣に手をかざして魔力を流す。

すると、祠の裏にある岩が微かに横にずれた。


「何処に繋がってるんだろう」


祠の影から岩がずれたことにより出来た隙間を見る。

何処まで続いているのか知りたかったのか、手を伸ばした。


「えっ?」


誰かに背中を押されたように祠から追い出された。

それも、岩の隙間にあった洞窟の中に。



時は夕暮れ。

エリア・レアエルは自分の義理の弟、テンマ・カイドウが島から戻ってくるのを待っていた。

本来なら契約して自動転送なので時間は1〜3時間で済む。それなのに祠に入ってから既に7時間は経っている。


「可笑しい」


明らかに可笑しい。例え、経験のある男女が祠にいってもただ結界に阻まれ、奥に進めないで引き返されるだけで何の被害を受けない。


「我が水の契約精霊よ、我が魔力を糧にこの世に姿を顕せ」


エリアの右手の甲に刻まれた契約魔法陣に光の粒が集まって行く。

光の粒は徐々に人型をかたどって行き、僅かな時間で青い髪の少女の姿としてこの世に顕現した。


「エリア、またあのガキのお呼びか?」

「違う。カイ君が祠に行ったきり戻ってこないの。何かわからない?」

「オイオイ、エリア俺が何の精霊か知ってるだろ?

迷子探しくらい高位精霊アクレア様に掛かれば1分で解決出来るぜ」

「本当、いろいろと残念だよね...そんな口調じゃなければ可愛いのに」

「悪かったな。じゃ、魔力頼む」


高位精霊の手にある魔法陣に手をかざし、魔力を流す。

魔法陣から受け取った魔力は目の方に集まって行き、青い瞳が金色に変わった。その瞬間、周囲にある魔力が揺れ始め、波を作り出した。

波は岩、生き物に跳ね返り、術者に周りの様子を報告する。


──領域変更、30〜50へ変更。


──膨大な魔力の変動を感知。

距離、......52メートル。

魔力濃度72、危険度A。

生物反応......102。


情報が精霊の元に集められる。


「エリア、あの糞婆呼んで来い。

この近くに魔獣の住処と思われるものを発見した。

広さは少なくともこの町より広い。複雑過ぎてはっきりわからない」


「わかった」


エリアは転移石を使い、この場から姿を消した。

消えたのを確認した精霊は祠に近づき、様子を調べようとした。

そんな時、背後に高魔力の反応を感知し、避けた。


「誰だ!!」


そこには、ここに本来存在しないはずの、討伐ランクAAの、街を容易く破壊し尽くすことのできる

口に高魔力の塊を溜め込み、今にもこちらへ放とうとしている魔獣ケルベロスの姿があった。


「何故ここに......っ!!」


黒い閃光がケルベロスの口から放たれた。

閃光は町の上空を通り過ぎ、その影響で町の方が慌ただしく成り始めていた。


「もう魔力を溜め込んだのか...!!

この畜生が!!」


精霊はケルベロスの攻撃を阻止すると決め、全身に魔力を纏わせ、ケルベロスの顔を殴るように飛び上がった。

攻撃は当たるはずもなく、地面を大きく陥没させた。



「どうした。遅いじゃないか」

「御婆様、カイ君が──」

エリアは祠に行ったきり帰ってこない天魔のことと、高位精霊アクレアが見つけた魔獣が巣食う洞窟のことを話した。

「もしやテンマは精霊王の怒りを受けたかもしれない。

昔、この町に魔族と獣人のハーフ、獣魔族が住んでいた。彼女はどちらかと言うと獣人よりだったのでこの国で暮らすことを許され、ある日精霊契約を行うため、あの祠に向かった。

が、彼女が生きて戻ってくることはなく、数年後なにもかも吸われたミイラ状態で見つかったそうだ。もしかしたらテンマも同じ状況かもしれん」


──諦めろ。

そう言おうとした時、この町の上空を黒い閃光が過った。


「何事だ!!」

「ケリア・レアエル様。先程の閃光。どうやら精霊の祠から放たれたものらしいです。

現在、エリア・レアエル様の高位精霊と思われる精霊とケルベロス交戦中の模様。高位精霊が押され気味です。如何なさいますか?」


屋敷に入ってきた兵士風の男性が状況説明を行う。

市民は悲鳴や兵舎、屋敷に押しかけ何かを叫んでいる。

一部街道では市民同士の戦闘や、市民が我が先に門へ向かい、先程の閃光の影響でパニック状態と思われる。

ケリアは、状況説明を聞き、その兵士に

「ギルドに連絡しろ!この街にはSランカーの冒険者が滞在している!」

と言い、兵士は連絡用魔道具でギルドに連絡する。


「アクレア...」


アクレアが押され気味だと聞いていたエリアは急いで祠へ戻った。

兵士の人を振り切って。



「負けてたまるか......」


高位精霊アクレアは洞窟の中から溢れ出てくる魔獣やケルベロスを睨みつけていう。


纏っていた擬似衣服は破け、一部肌が露わになっている。

また、身体中に傷を負い、今にも倒れそうな状況だ。

ケルベロスがトドメを刺すように口をこちらに向ける。


「終わりか......」


魔力切れによる消滅を覚悟したアクレアは迫りゆく黒い閃光を防ぐため、ケルベロスに向う。

再び閃光が放たれ、アクレアは消滅する


──筈だった。


















評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ