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天魔の邂逅  作者: シグマ
第2章魔大陸で邂逅 魔国領編
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魔都イビルノヴァ 〈2〉

天魔の邂逅


第6話 【魔都イビルノヴァ 〈2〉】


「君に話がある」

と、天魔は予選を終えた1日後、とある人物にどこかに連れて行かれた。


「はじめまして。僕の名前はウル・テハロンヒアワコ。準貴族だ。

単刀直入に言う。次の試合、僕と当たることは知っているよね?」


と彼、ウル・テハロンヒアワコは言う。

その通り、次は彼と一対一で戦わないといけない。

「もちろん」と返すと彼はこう言ってきた。


──「わざと負けてくれないか?」と。


「負けてくれたら報酬はたんまり出そう。

そうだね……白金貨70枚でどうだい?」


彼は自分に八百長試合をしろと言っているのがわかった。

でも、それをする意味がわからなかった。

八百長試合をしろと言っているが、彼もまた勝ち上がった1人だ。

実力は認められていることだろうし、準貴族とは言っても金に困っているわけではなさそうだ。


「何故八百長試合をしなければならない」

「魔王様との繋がりだよ。

君は王族と知り合いだからその意味がわからないだろうけど、僕達にとって王族と仲良くしておくことは大切なことなんだ。訳は話したし、やってくれるかい?」

「断る」


彼は信じられないといった顔をした。


「どうしてだ!?白金貨70枚だぞ!?一生遊んでいける金だ」

「嘘の結果で目標を成し遂げる奴の言うことなんて聞けないな。

だいたい大切なことだとしても何れはバレる。

バレた時、どうやってその責任を取る?

自身の命か?それとも無関係な者の命か?」


ちょっとした嘘は自分だってつくが、嘘の結果を周りにチラつかせて目標を成し遂げる奴は気に入らない。

例え、それが命に関わることだとしても、自分のせいで無関係な人が傷つくなら嘘はつきたくないと天魔は思う。


「それが君の答えか。残念だ。なら、ここで死んで貰う!」


彼が強化された刃物を取り出して天魔を殺そうとしたその時、何者かが彼らの間に入って攻撃を止めた。


「ウル・テハロンヒアワコ。危害を加えるのなら試合の時にしろ」

「カルナス・サウィスケラ!?何故貴様がここにいる!?」

「試合が終わった後様子がおかしかったので追跡させてもらった。十二分に後ろを警戒していたみたいだが、私の特技を忘れたかな?」


カルナス・サウィスケラ。彼もウル・テハロンヒアワコと同じ準貴族だ。

Aブロックの代表候補だ。

彼の特技は彼が言う通り追跡だ。

完全に気配を消しているので、それ以上の熟練者しか気づかないことだろう。


「ちっ。天魔!!僕と戦うのなら覚悟しろ!!」

「元から覚悟はある」


ウルはそう言ってここを去っていた。


「助かった。ありがとう」

「礼はいらん。あれくらいのものだったら対処できたのだろうに」

「そうは言っても……」

「それじゃあ、Dブロック代表になれ。そこで勝負しよう」

「わかった」


天魔とカルナスも少し話あった後、会場に戻ったのだった。


会場に戻って少し経ってDブロック決勝が始まった。


『これより、Dブロック決勝を行います。この戦いを制した者が本線への出場権を獲得します。

出場者、天魔選手とウル・テハロンヒアワコ選手は定位置についてください。

間もなく、決勝試合を開始します。

10…9…8…7…6…』


5…4…3…2…と数字が減っていく。

そして、0となった瞬間、彼らは同時に魔法を放った。


「妨げよ、【重力】」

「揺れろ、【地震(マグニチュード5,1)】」


フィールド内の重力が外の重力の2倍になった。

また、天魔を中心に地震が発生した。しかし、被害はあまりなかった。


「君は馬鹿なのかい?」

「少なくともウル・テハロンヒアワコ様よりは頭いいと思うけどな?」


お互いに罵り合いながら色々な魔法を行使して戦う。


「押し潰せ、【圧縮】!!」

「揺れろ、【地震(マグニチュード5,8)】」


再び地震が発生する。

それでもせいぜい壁が壊れる程度でウルに被害はなかった。


「無駄だと言っている!【整地】」

「それはどうかな?破壊せよ、【大地震(マグニチュード8,4)】」


前の2回発生した地震よりもっと大きい揺れが彼を襲った。

彼は空へ逃げようとするが、揺れる地面に立っていられないようになり、地面に這い蹲る。


「止まれ、【静──「割れろ、【地割れ】」」


彼、ウルがいる地面が突然真っ二つに割れた。

予期せぬ事態にそのまま落下していく。


「羽ばたけ、【飛行】」


落ちていった彼は風を操って勝ち誇った笑みを浮かべて浮上する。


「そんなくだらない攻撃が通用するとでも?」

「馬鹿だな」

「何?」

「いやー、だって戦闘中にそんなに喋っていられるなんて余裕がないとできないことだろ?

お前が何を言おうと落ちたのは事実。まあ、否定するなら否定してもいいけどさ」

「何が言いたい」

「周りをちゃんと見た方がいいと思いますよ?」


彼は自分の周りを見ると、少し前までは広かった穴が狭まっていた。


「な!?いつの間に…」

「それでは、さようなら。【圧縮】」


割れていた地面が元どおりになり、穴にいたウルは押しつぶされた。と、誰もが思っていた。


「さようなら?それは誰に言っているのかな?」


天魔は慌てて後ろを振り返った。

するとそこにはウルの姿があった。


「──!?」


避けようとして後ろへ下がる。その直後自分の目の前を紅の剣が通り過ぎていた。


「油断していたのは君の方だよ。天魔」

「………」

「八百長試合を持ち込んだから僕が弱いと思っていたんだろうけど、一応、これでもDブロックの生き残りだ。それ相応の能力は持っていると思うよ」

「………」

「別れるのは君の番だよ。

じゃあ、さようなら。せいぜいよそ見したことを地獄で悔やむといい」


彼は右手を伸ばして周辺の地形諸共圧縮した。

今度こそ誰もがどちらかが負けたと思った。

しかし、まだ決着はついていない。


「──【解除】。いやー悪いね。手伝いをしてもらって」


圧殺したはずの天魔が目の前にいて、自分の腕に感覚がないと思ったら天魔ではなく、自分の腕が潰されていた。


「幻覚か!!」

「その通り。一応幻覚は使えるようにしているんでね。地獄で悔やむといいと言っていたっけ?

本当に地獄で悔やむことになるのはウル・テハロンヒアワコ様ですよ」


魔力を一気に開放して威圧する。

神の威圧を真近で受けた彼は魂を抜かれたようにぐったりとして動かなくなった。


『勝者、天魔』


そのアナウンスとともに天魔の勝利が確定した。




「僕は負けたのか………」

「ウル・テハロンヒアワコ」


ウルは倒れて5時間経った後、ようやく目覚めた。

試合であったことを思い出していると、顔見知りの人の自分を呼ぶ声が聞こえた。


「カルナス・サウィスケラ……。僕に何かようかい?」

「お前は自分がどうして負けたか理解しているか?」

「魔王ラグナ様と一緒にいるにしても対して戦闘能力がないと思い込んでいたことか?」

「それもあるが、違う。それは主な理由ではない。

お前はこう思ったのだろう?私達は貴族だ。一般の平民よりは能力が高いとよく言われている。

確かに、その場合が多い。

だが、全てそれに当てはまるわけではない。

平民でも王に匹敵する力を持つ者がいる。

逆に王や貴族でも平民に怠ったりする。

だからあまり平民だということで見下したりするのはやめろ。

見下していたら今回のように足元を掬われる。

これが本題だが今回負けた主な理由。そのヒントは試合までの天魔の言葉にある。

それがわかれば子爵ぐらいには慣れるのではないか?」


カルナスはそう言い残して去っていた。


「負けた原因か……」


今まであったことを必死に思い出す。


("嘘の結果で目標を成し遂げる奴の言うことなんて聞けない"か……。)


(そういえば、学園に通っていた時、カンニングすることだけに努力していたなぁ)


ウルは昔のことを思い出しつつ、これからは嘘を極力使わず生きていこうと決意するのだった。




その頃、グレムフィア帝国では……


「浄化せよ、【雷光斬】!!」

「ありがとう。助かったよ。涼夜」


元グレムフィア帝国勇者であった涼夜は帝国滅亡を目標とするアギトと共に連邦国との戦争で一番被害が大きい地区へやってきていた。

そこには、たくさんの不死者や悪霊などが出没していた。


「ここはユーロ城砦都市。近頃ダンジョンが生成されたところから420km離れた都市だよ。

人口は378万人。帝国で6番目で今は誰一人生存者はいないだろうね。

理由はわかるよね?」


アギトは涼夜に問う。


「あの攻撃が放たれた後、着弾地点を中心に数百キロ火の海となったからだろ?俺はその犯人に仲間を……」


天魔との戦いで失ったクラスメートを思い出し、また、自分が帝国を信じた愚かさとあそこまでしなくていいだろうと天魔を恨んだ。


「涼夜……気持ちはわかる。が、火の海が生存者がいなくなった原因ではない。

あの火の海が鎮火した後、70万人くらいは生きていた。

でも、1日の間に6割死んで残りの4割は僕達を襲い続けるその不死者達に生きながら食べられたんだ。

それが原因で不死者達は強化され、また新たに不死者が生まれた。

この不死者達を全員浄化するのもあの戦争の関係者の責任だと思わない?」

「………」

「思わないの?……それは残念だ。さて、早く不死者達を消滅させようか」

「ああ」


涼夜達は再び不死者を倒す作業に戻ったのだった。









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