魔都イビルノヴァ 〈1〉
天魔の邂逅
第5話 【魔都イビルノヴァ】
魔の森から帰ってきた天魔は、数日鍛錬した後、魔王城周辺に広がる町、魔都イビルノヴァにやってきていた。
ここはある都道府県と同じ広さでその周りの大部分に軍事施設が置かれている。
他の街へ移動するときは東西南北に伸びる街道や魔導鉄道、空港を利用しなければならない。
「広い……」
「近くに闘技場が7もあるからな。今回お前をここに連れてきたのはわかっているよな?」
「『魔族との結びが緩んできているから次代の魔王と眷属契約しなければならない。そのために力を示さないといけないから大会に出ろ』だろ?」
「そうだ。それで手続きの方はもう済ませているから心配するな。後、いろいろと注目されるかもしれないが、頑張れ」
「それってどう………帰りやがったか…」
抗議をしようと横を見ると、既に魔王はいなくなっていた。
魔王がいないここで抗議をしても意味がないので、仕方なく闘技場の中に入る。
今回の大会は7つある闘技場を全て使っていてA,B,C,D,E,F,Gブロックに分かれている。
天魔がいるのはDブロックだ。
試合はトーナメントだと、物凄く時間がかかることからDブロック出場者の半分から2人選ぶようにしているそうだ。
また、多人数で1人を狙うことが許されているので、魔王が推薦した天魔は間違いなく狙われることだろう。
『これより、Dブロック予選を行います。出場者は定位置についてください。
出場者は40人。一般から36人、シリウス侯爵推薦1人、プレアデス子爵推薦2人、魔王ラグナ推薦1人です。
詳細はカードから確認できます。
開始まで30秒。……………残り10秒………』
カウントダウンが始まった。
数字が0となった瞬間、選手達は動き出した。
「【召喚】」
召喚されたのは炎龍ではなく、巨大なスライムだった。
巨大なスライムは分裂して近くにいる出場者を次々と飲み込んでいった。
「こんなもの効くか!焼き尽くせ!!【紅炎】」
「隔てよ!【空斬】」
「我が身を守れ!【岩壁】」
しかし、出場者の中には魔法などを行使してスライムの攻撃を防ぐ者達がいた。
カルマ・シリウス。
タイガ・アルデバラン。
レイ・ハウメア。
彼らは魔国における貴族で、タイガ・アルデバランとレイ・ハウメアは転生者だ。
アルデバランは男爵家でハウメアは準貴族である。
「無に返せ!【破滅】。
沈め!!【地盤沈下】」
カルマ達が出した魔法は魔力を失って消失した。
それでも尚、彼らは走り続ける。
「架けろ!【大気固定】」
「滅ぼせ敵を【刺突】」
レイが空気を固めてタイガがその固められた空気を足場としてスライムの排除を試みる。
それに対し、天魔は
「膨れよ!【膨張】」
と攻撃させないよう固定させられた空気を膨張させようとする。
しかし、固定は解かれたものの、既にタイガはそこにいなかった。
「突き抜けろ!!」
「元の世界へ戻れ!【帰──」
スライムを回収しようとしたその時、急に目の前に現れたタイガによって魔法が機能しなかった。
咄嗟に壁を作って攻撃を受け止めようとするが、天魔に攻撃が当たることはなかった。
いや、当てられることはなかった。
空間を割いてきた剣は風を纏ってスライムの体を"核"と一緒に貫いた。
"核"を失ったスライムは力を失って破裂した。
「うわっ」
「お前に驚いている暇があると思うか?熱せ、地域を【灼熱大陸】」
天魔達がいるフィールド周辺は急激に温められた。
「気温を下げろ!【大雨】」
「無駄だ。道を塞げ!【遮断】」
「無駄じゃない!元に戻れ【時限回帰】」
世界が一瞬止まって時間の巻き戻しが起きた。
天魔によって熱せられたフィールドや、カルマが作り出した雨雲も消え失せた。
しかし、スライムは核を失ったため生き返らなかった。
時間が開始直後に巻き戻って、カルマが天魔を降参させるべくナイフを突きつけ用とする。
だが………そこには誰もいなかった。
「なっ!?」
「俺が時を操れないとでも思ったか?
それとも………俺がお前より弱いとでも思ったか?」
時魔法は便利だ。魔力を多く使用するが、ある程度の時を遡れるなどいろいろな使い道がある。
例えば、暗殺だ。
魔力操作を使えるものがいれば少し厳しいだろうが、それがなければ誰も自身の体の一部の時を止められたとは気づかない。
他にも時魔法で相手の時間を遅くしたりもできる。
そんな便利な時魔法にも欠点はある。
同じ時使いに術を解除させられる可能性。
また、自分より強い相手には時魔法が効くことはない。例外はあるが。
「ああ、それと俺は時も操れるが、幻術も操れるんだよ。いつ、俺がそこにいると勘違いした?」
天魔はカルマを見て馬鹿にしたような笑みを浮かべる。
それに対し、悔しそうな表情を浮かべた。
「さて、お前のおかけで他の奴らの相手をしなくて楽だ」
動き出さない出場者たちを見ながらそう言う。
「じゃあな。時使い……飲み込め力を【炎龍】」
刻印が光り、そこから現れた炎でできた龍によって出場者諸共敗北した。
『勝者、天魔』
天魔はスライムを失ったが、無事生き残ったのだった。
天魔が魔大陸で大会に出ている最中、グレムフィア帝国帝都である事件が起きていた。
「陛下!!聖銀騎士団より報告があります。異世界人がまた5人行方不明になりました!!」
今帝国にいる異世界人はあの勇者の愉快な仲間たちだ。
愉快な仲間たちはアキトや勇者によって連れ去られていた。
勇者は帝国に利用されていたのを理解していた。
頑張れば帝国外に行けたことだろう。しかし、行かなかった。
自分が逃げることによって仲間が殺されるかもしれないという危険があったからだ。
アキト達に出会った後、組織の力を使って勇者はあるものを手に入れた。
それは、人だ。
人を使って仲間たちを集めていた。
そのせいで帝国には数人の異世界人しか残っていない。
「報告ご苦労。さて、皇帝陛下、会議を始めましょう。
まず初めに異世界人がいなくなっているのは私達の計画がバレたと考えていいでしょう」
この男は歴代皇帝の血縁者だ。また、ある宗教の教祖でもある。
「計画がバレたのか………私達はどうすればいいのだ」
「簡単なことです。少しもったいないですが異世界人を生贄に捧げませんか?」
「異世界人を………?何故だ?」
「異世界人はこの世界の民よりも多くの魔力を保有している。よって早くアレができると思うんですよ」
「だが………」
「では、勇者の代わりに我らが神の使徒を戦力として使うことを認めましょう」
「使徒か…………わかった。残っている異世界人のうち4人好きに使っていい。その代わり使徒を3人使わせてくれ」
それを聞いた男は皇帝に頭を下げこういった。
「では我らはアレの作成に取り掛かりましょう。
それと、皇帝陛下。
我らの一族の目標を忘れんように」
といって去っていった。
タグ?にある学園について。
学園編は第3章、もしくは第4章となります。
次回、魔都イビルノヴァ〈2〉




