魔王城で邂逅 〈1〉
天魔の邂逅
第2章 龍魔と邂逅
魔大陸で邂逅編
第1話 魔王城で邂逅 〈1〉
──転移先は大きな城だった。
いや、城なのかはわからない。大きい屋敷かもしれない。
何故わからないのか……それは、部屋の中に転移したからだ。
ただ、豪華そうな家具が置かれ、これはこの人の趣味なのかわからないが、化石と思われるものや珍しい鉱石が展示されている。
その化石や鉱石が展示されているところの横には龍の鱗のようなものが見られ、よく目にするあの鱗もそこにあった。
「これは炎龍の鱗じゃない。炎龍と同じ属性の龍の紅玉龍って奴の鱗だ」
「紅玉龍?確か前に翠玉龍って奴がいたような……」
翠玉龍。少し前、数百名の冒険者とレガルト山脈で討伐した龍だ。倒した後、帝国の奴らのせいでじっくり観察する暇がなかったから全てを理解できなかったが、こうなっていたのか。
「この鱗が欲しいか?」
「いらん。そういえば紅玉龍、翠玉龍がいるってことは蒼玉龍もいるのか?」
「もちろん。蒼玉龍ってことで思い出したが、属性以外で紅玉龍との違いがわかるか?」
蒼玉龍…水属性の龍だ。紅玉龍との違いは色……?いや、そんな簡単じゃないはずだ。
じゃあ何だ……。
「紅玉龍と蒼玉龍の違いはコランダムによる。コランダムは不純物によって色が変化し、クロムが混入すればルビーに鉄とチタンが混入すればサファイアになる。属性以外の違いは色と混入している不純物だ。後、大して重要ではないことだが、稀にサファイアにクロムが0,1%ほど混入するとピンクサファイアになり、その蒼玉は炎属性を使うことができるようになる」
「それは珍しいな。是非とも眷属にしてやりたい」
「そうか。それなら試してみるといい。弾かれると思うがな。
次の部屋行くか」
ラグナがそう言ったので観察するのをやめてついていくことにした。
次に向かった先は食堂だった。
食堂には数人のこの国の兵士と思われる人物がいて姿を現わすと敬礼をした。
「魔王様、そちらの方は?」
「客だ」
「魔王様の客でしたか。魔王様、この方は強いのですか?」
「強い。何せ、帝国に甚大な被害を与えたんだからな。これを見ろ」
懐から何らかの魔道具を取り出した。
その魔道具に少し魔力を流すと、帝国軍と天魔の戦闘シーンが映し出された。
「ここはまだ普通だな。えー……ああ、あった。これを見ろ」
画面に映っていたのは、大地を抉り、あたりを破壊する光だった。
着弾地点?の周辺は陥没し、遠く離れた旧連邦国領の森林地帯では木が一部失せていたりしている。
「これは……」
「私では可能かもしれないが、ただの人がこれほどの魔力を使用し、あれほどの威力を出せたのは異常だ」
「悪かったな。異常で」
「いや、異常だから面白い。我々魔族の一部は戦うのが好きでな。あれはただの蹂躙だと思うが、久しぶりに楽しませてもらった。
ところで、疲れていないか?」
話を切り替えた。
自分に割り当てる部屋を決めるのだろうか、そう思った天魔は疲れたと言った。
すると、音速で足元に鍵が飛んできた。
「危ないな。これは部屋の鍵か?」
「他に何がある。お前はここからその部屋で過ごすんだ。飯は7時、12時、19時にあるから遅れるなよ?遅れたら自分で調達してもらうからな」
「わかった」
さあ、当てられた部屋に行こう。
天魔は近くを通る使用人などに案内をしてもらい、鍵に書かれた番号と同じ部屋にたどり着いた。
ガチャ……。
ドアが開く。
「え?」
「はい?」
天魔の目の前には一糸纏わずにいる少女が立っていた。
「この覗き!変態!!」
「いや、言い訳を──」
天魔に全ての属性の魔法が炸裂した。
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「というわけだ」
「納得いかない!!お父様はよく許可を出したわね!!」
天魔が見た少女、フィーは魔王の娘だった。
つまり、この国の王女らしい。
でも、今目の前にいる魔王の娘ではない。
前代の魔王の娘だ。
前代の魔王はラグナが現れて王の座を降りて何処かへ旅立っていった。
行方はわかっていない。
「許可ならあいつが出て行く前にもらった。自分の娘だというのに異世界技術の方が大切か」
「異世界技術って?」
「異世界技術とは数多とある世界からこちらに移住してきた、拉致されてきた者が伝えた科学という魔法を必要としないものだ。
この国には2500人の異世界人が住み、この国の交通機関は全ての異世界技術により作られている。
大陸全土に及ぶ領土は広大で移動には物凄く時間がかかる。転移を使えばいいが、魔力の消耗は激しい。
そこで開発されたのが第1世代飛行機と第1世代リニアモーターカーだ。今ある第7世代では魔力、電力、霊力、妖力、神力のどれかさえあれば動かせるようになっている。第7世代リニアモーターカーは電力以外の力を電力に変換する……例えを出すなら魔力をいつでも電力に変換することが出来、それに加えて大陸横断の所要時間は20時間。1500km/hだ。出そうと思えば2000km/hが安全を考えてその早さにしている。
飛行機の方は3時間で大陸一周可能だ。大陸一周は約16万km。だから約53000km/hかな?今後の目標は60000km/hにすることだ。何か質問はあるかな?」
「あり過ぎて困る。大陸一周3時間とかふざけているのか?それなら人間の大陸数分で焦土化可能じゃねぇか」
「やろうと思えば可能だな。たまに帝国の連中が遊びに来るが、最終兵器超重力砲を使うことはないな。核分裂砲も使ったことわない。というか余程のことがない限り使わない。
威力を強くし過ぎた」
「どのくらい強くしたんだ?」
「帝国の領土の3分の1を焦土化し、且つ500年は生物が生まれることを許さない土地が出来上がる」
それは、世界から命を消し去ることができると言っているのと同じだ。
魔王ができると確信しそう告げているということは何らかの根拠があるはず。何処かで試しかことがあるのだろうか。
「これは理論上の話……ではない。実際使ったことがある。同じ最恐の神の眷属である龍神の支配下における国と一度戦争があった。今でも落とされた場所は何も存在していない。が、奪われた命は多かった。
1億?いや、それ以上の生物の魂を残さず破壊した。一度龍神と関係のある種族が滅びかけた。この出来事以来この兵器を使わないと決めている。君の眷属である炎龍は別の時代出身だったから体験をしたことがないだろうけど聞いたことはあるんじゃないか?龍神はこの世界における全ての龍の祖先。その龍神の子孫となれば聞いているはずだ。神が消えた後の眷属同士の戦いを。
その話をしていないのは君を傷つけないためであり、龍神族のプライドというのがあるのだろう」
天魔はあの炎龍にプライドというものが存在しているのかと思ったが、創始樹のことを思い出し、少しはプライドがあるのかもしれないと考え直した。
「今は龍神族と戦争をしていない。あの出来事以来眷属戦争はなくなった」
「そうか………。ところで、何でこいつと一緒の部屋で暮らさないといけないんだ?」
はっきり言おう。異世界技術のなんてどうでもいい。
これが一番聞きたかったことだ。どうして魔王の娘と同じ部屋で暮らさないといけないんだ!!
「その部屋しか空いていなかったんだって」
嘘だ。誰もが思った。
「だいたい、そろそろフィーは15歳だろ?ならそろそろ結婚しないといけないだろう?」
「私は嫌です!」
「俺も嫌だな。こんな我儘の象徴といると俺までも同類になってしまう」
「誰が我儘の塊ですって?」
「はっ。その通りだろうが」
魔王の目の前で争いことが起きようとしている。
止める気はないようだ。
それどころか楽しんでいるようにも見える。
「仲がいいじゃないか」
「よくねぇよ!!」二人はそう叫んだのだった。
2月の中旬あたりに進級試験があり、その勉強などで現在更新が滞っています。
また、3月上旬に学期末があり、更新が滞る恐れがあります。
追記
矛盾しているところは改稿する予定。
(なんで無駄に設定したんだろうか)