最恐の神対現代神の使徒
次話から第二章を始めることにしました。
とある勇者視点
天魔の邂逅
最恐の神対現代神の使徒
「く、来るな!!」
1人の少年は前にいる化け物を見てそう叫ぶ。
この少年の周りには、既に屍と化した仲間達の顔をした化け物の下僕。
もう、終わりだと全てに絶望していた時、彼は何処かへ消えていった。
何故、あの少年は追いかけられたのだろうか。それは、今から約2時間ほど前の時だった。
この世界であまり見ることのない、髪の色を持つ集団、大抵はその人達を勇者と呼び、一部のものは現代神の使徒と呼ぶ。
その現代神の使徒である彼らは、ある存在と戦おうとしていた。
「…………」
その存在とは、周りから見ればただの人間だ。だが、彼は人間でなく、この今ある世界の遥か昔にいた天と魔の属性を持つ神々から生まれた子だ。
例え、神の力を有していたとしても一瞬で殺されることだろう。
少し前の彼らならば逃げ出しただろう。
そう、少し前なら………。
とある勇者side
俺は今、目の前にいる謎の人物と戦っている。俺の所属している国のお偉いさんによると、今この創始樹連邦にある精霊の祠にはある守護者が居るらしい。
その守護者は神に似た力を持ち、創始樹連邦の人々はそれを使って帝国やその周りの国々を侵略したと言われている。
この目の前にいるやつももちろん、この国の上層部の奴らは絶対に許してはいけない。
この剣で絶対に倒して見せる。
と、俺は心の中で誓った。
その間にも奴は動き出す。
「あの敵を殺せ!!」と、団長が言った。
俺たちは当然動き出す。
相手ももちろん、動き出し、まず初めにと団長の方へと向かった。
「精霊の守護者め!!そんな剣でどうにかなるとでも思っているのか!!」
「………………」
「我々が怖くて声も出せないか?」
「………………」
団長は相手を罵りながら剣を振るう。
だが、その相手は団長の罵りに対した反応を見せずただその攻撃を凌いでいた。
その戦闘を横で眺めていた俺たちはようやくその戦いに介入することになった。
団長の方へと向かっていたそれは、俺たちの方へ振り向き、俺の前にいた仲間をいとも簡単に斬り殺した。
仲間が斬られた時、嘘だ。と思った。この戦争に参加しているのは少なくともAAランカーの実力は持っている。
冒険者でいうと、SSSランクに相当する団長の攻撃に耐えていたとはいえ、ただ一回剣を振っただけで真っ二つ。恐ろしくて声が出なかった。
そんな俺に団長は「動け!!世界を救うんだろ?!!」と叫ぶ。
そうだ。"世界を救うんだ!!"あの日誓った約束。そして、少し前にも誓ったことを直ぐに破るのか……。情けない。
俺は立ち上がって目の前で団長と戦うそれに剣を振るった。
「がっ」
俺はそんな間抜けな声を出して後ろに吹き飛んだ。何をされたのかわからないが、兎に角肋骨の方が痛い。
「大丈夫か!!」
回復役の仲間が俺に駆け寄って回復魔法を唱える。
すると、痛みが和らいでいく。
そして、安心したかのように俺は少し目を瞑った。瞑ろうとした。
だが、俺は見えてしまった。また、聞こえてしまった。
団長の「避けろ!!」という声と、俺の顔に降り注ぐ………赤い絵の具が。
「嘘だ…………由梨!!」
彼女は苦しそうに顔を歪めながら俺にこう言った。
「逃げて……」と。
彼女の後ろに赤く濡れた剣が近づきグサッと。何かを貫いた。
「嫌だ…………」
力が入らない。目の前の奴は俺にゆっくりと近づいてくる。そして、動かない俺のせいでまた犠牲者が出た。
今度は団長だった。
奴は団長の方へと再度振り返り、今度は攻撃に耐える体勢でなく、攻める側へと変わった。
後ろから悲鳴が聞こえる。
だが、俺は逃げる。
しばらく経つと、悲鳴が聞こえなくなっていた。
……………全滅。その可能性が大だ。
ふと、後ろから音がするのに気づいた。
それは徐々に大きくなり、風を斬る音ともに黒くなった剣が俺の真横を過ぎていった。
「あーあ、外れた」
と、戦闘中に初めて奴が口を開いた。
その奴に向かって俺は
「何が目的だ?」と聞いた。
「何が目的?そうだなァ、俺の子の仲間に楽しいことをしてきたお礼をしにまず帝国の軍事力を大きく減らそうかなァってとこだな。それでも時間が余ったら帝国の民を殺し、不死者の王国を建国させようかなァ」
「く、狂ってやがる……!!」
「狂ってる?失礼な。俺はまだマシな方だぜ?おっと、無駄話をしている場合ではないな。お前には恨みがないが、その後ろにいる奴が面倒なんで死んでもらうよ」
目の前にいる奴はそう言って剣を捨てて腕に何かを纏った。その直後何か嫌な感じがした。
その何かに触れるのはやめておいた方がいい。と、体が警告している。
俺はすぐさま逃亡することに切り替え、まっすぐと進んでいく。
それに対し、奴は動きを止めて何かを詠唱している。
その間にどのくらい逃げれるだろうか。今、この時を生き延びることができるのだろうか。
と考えつつもただひたすら走る。
そして、帝国の軍人の拠点へたどり着いた。
周りは驚いた表情をするが、何かを言わせる前に「逃げろ!!」と言った。
俺の真剣な表情で悟ったのか、彼らは荷物を捨てて帝国とこの国の国境を目指していく。これで帝国は安全。そう思った矢先、少し前に聞いた声が聞こえた。
「涼夜」
団長の声だ。
「団長──」
振り向いた俺に団長は先ほど奴が捨てた剣で俺の腹を貫いた。
「なんで………」
団長は一切話さない。腹を抑えて団長を見ていると、笑い声が聞こえてきた。
「やあやあ勇者君。いや、涼夜君だったかな?少し時間がかかったが俺からの君へのプレゼントだ。満足してくれたかなァ?」
この化け物め………。
気ニ入ッテクレタ………?
何ガ気ニ行ッテクレタ……?ダ。
許サナイ。仲間ヲ殺スダケデハナク、ソノ亡骸マデ利用スルダト……。
俺の中で負の感情が生まれ、暴れ出す。その俺を見て目の前にいる化け物の顔を見るとニヤついていた。
それをみてハッとした俺は逃げていった軍人達の方を見ると、既にそこにはあの化け物の姿があった。
あの化け物は軍人達を殺して宙に薔薇のような花を咲かせた後、右手を翳して周りの魔力を吸い始めた。
化け物の右手を中心に様々なものが引き寄せられ、丸く黒い光の渦の中へと吸い込まれていく。
その渦は中心から眩い光を放ち始め、それを化け物は帝都の方へ投げ飛ばした。投げ飛ばされたそれは空気中の魔力を吸いながら膨張していく。
「あと少し………今だ!!」
化け物がそう言った瞬間、帝都がある方から先ほどの光よりもっと眩しい光が放出され、また、大地を揺らすほどの爆発が起きた。
爆発の衝撃で川や湖が消し飛び、木々が空に舞っていく。
「やはりいい眺めだ」
本当に危険だ。逃げなくては……。
「どうだったかなァ?星ではないけど恒星が爆発する現象、超新星爆発を真似て作った魔法を更に弱小化し、それを更にできるだけ地表部分だけを吹き飛ばす形にしたものを発動したんだが」
「───!──────!!」
「何を言っているのか聞こえないなァ」
超新星爆発?そんなのが起こせるわけ………。
「起こせる。何せ、俺は──と並ぶ力を持つ──だから」
途中、何を言っているのか聞こえない。
「さて、久しぶりに楽しませてもらった。本当に感謝している。だから、最も苦しむ方法で殺してやろう」
化け物は俺に手を伸ばしてくる。
俺は最後の力を振り絞ってこの強大な力に足掻こうと走る。それを追うように元俺の仲間達と化け物が走ってくる。
「ゴフッ………」
口から血を流し、地面に倒れた俺は化け物から迫る苦しみを見て逃げる気を失い、足掻くのをやめる。
徐々に奴の手が近づいていき、顔に触れようとしていた時、奴は俺の視界からいなくなっていた。
追っていた獲物が突如いなくなり、化け物、詳しく言えば天魔に乗り移った最恐の神はこう呟いた。
「時間か……」と。
攻撃の着弾地点は連邦国に近い大きい都市。
帝国での被害は
死者980万人〜1200万人。
重傷者500万人〜800万人。
軽傷者800万人〜1500万人。
被害総額 日本で言う1200兆円。
着弾地点から半径50キロ圏内──消滅。且つ、半径20キロに及び、深さ50メートルほどの穴ができている。
半径80キロ圏内──消滅?
生き物はもちろん、建物は存在していない。
半径120キロ圏内──業火に包まれている。生存者はいない。
半径170キロ圏内──建物が全壊、一部は燃えている。
半径230キロ圏内──建物が全壊。生存者は約5%。
半径280キロ圏内──建物が全壊。生存者は約8%。
半径360キロ圏内──建物が全壊から半壊。生存者は約20%。
半壊420キロ圏内──建物が半壊。生存者は約10〜40%。
半径500キロ圏内──建物が半壊から一部損壊。生存者は約半分。
半径600キロ圏内──建物が半壊から一部損壊。生存者は約7割。
半径650キロ圏内──建物に一部損壊が見られる。生存者は約85%。
半径700キロ圏内──耐性のある建物には異常は見られない。生存者は約90%。
半径750キロ圏内──大抵の建物には異常は見られない。生存者は約98%。
連邦国の被害は
連邦国国民、死者30万人
負傷者 (重) 約80万人
(軽) 約200万人。被害総額 日本では50兆円。
連邦国に来ていた帝国軍軍人の被害は、95%死亡。築かれた砦などは何者かによって破壊された。




