どこまで説明回・・・?
タイトル通りです
ープルルル
『もう遅いんだ。勘弁してくれ。』
「そういうわけにもいかないんだよ。」
夏貴はもう一度三原に電話をかけた。要件は勿論ログアウトについてだ。
「ログアウトの仕方を教えてくれ。」
『・・・はぁ。君は何も分かっていないんだな。いい機会だから教えとこう。VRシステムでは視界の邪魔にならないようにキーなどは設置されていない。その代わり、この電話のように、念じればいろいろなことができる。だからログアウトも「ログアウト」と念じればできるはずだ。』
「そうなのか!わかった。さんきゅー。」
『眠いんだ。寝させてくれ・・・。』
「職務怠慢だな。」
『やかましい。』
電話が切れた。早速夏貴は心の中で「ログアウト」と念じる。すると値の前にウィンドウが出てきて「ログアウトしますか?」と表示している。「はい」をタッチすると目の前が暗転して、気がつくと最初いたいろんな色がごちゃまぜになったような空間に来た。所謂ホームみたいなとこだ。そこから更にログアウトをして自分の部屋に戻る。
「ふー、疲れた~!今何時だ?・・・1時?あれ、ほとんど経ってないぞ?VR空間では体感時間が違うのか?すごいな。」
一頻り感心したところでベッドに横になる。疲れを取るように瞼を閉じた。
―――――
次の日の午後、夏貴は駅前にいた。すると、夏貴に一人の少年が近づいてきた。
「夏貴!お待たせ!」
「よぉ、祐也、久しぶりだな。」
近づいてきた少年の名前は千歳 祐也。夏貴とは中学校まで同じ学校で一番仲が良かったが、祐也は高校では別の学校に行ってしまったため、疎遠になってしまい、連絡もほとんどとっていなかったが、今日、久しぶりに二人は会う約束をしていた。
「夏貴、背伸びたね。」
「そういうお前は縮んだか?」
祐也は夏貴と比べると頭一つ分以上低く、ひ弱な雰囲気を醸し出している。
「失礼だなー。これでも3cm伸びたんだよ?」
「まじか!」
「ごめん、嘘。」
「・・・どんまい。」
「いいんだよそんなこと!それより、時間もそんなにないんだし、遊ぼうよ!」
「そうだな、なにするかー。」
「どこでもいいよ!」
「それが一番困るんだよな。」
「う・・・・。じゃあ・・・・ゲーセンにでも行く?」
「そうだな、とりあえずそれから考えるか。」
そうして二人はゲームセンターに向かった。
ゲームセンターは時間的に人が多く、遊ぶ人たちの熱気に満ちていた。
「まず何する?」
「なんでもいいぞー。」
「・・・・・。」
「どうした?」
「いや、夏貴、どうしたの?なんか疲れてる?」
「あー、いや、ちょっとゲームしててな。悪い。」
「あ、もしかして今話題のWWWとか言うやつ?」
「お、よくわかったな。」
「え!?ほんとに!?わー嬉しいな!それ僕もやってるんだよ!ID教えて!友達登録するから!」
「あ、いいぞ?えーと、19・・・・あ。」
そこで夏貴は自分のキャラが女キャラだということを思い出す。さすがに友達の前であの姿を晒すわけには行かない。
「あーえっとー、悪い。ちょっと教えられん。」
「えーなんでー?いいじゃん!」
「ちょっと・・・な。」
「・・・・言えない理由があるんだね。わかった。気を取り直して遊ぼー!」
「悪いな。」
そうして二人は夕方まで遊び、日が暮れると夏貴の家に祐也を招き、一緒に夕飯を食べた。祐也が家に帰ると、夏貴は自分の部屋へと戻った。VRヘッドギアの電源をつけ、ログインしていく。そして、WWWの空間の、アリス家のベッドの上にやってきた。
「はー。こんな体じゃなけりゃ祐也とここでも遊べるっていうのに・・・。」
やはり女の体は不便だと嘆く。
「ってかいつまでもここに居るわけにはいかないし、さっさと出るか。」
夏貴は立ち上がると、アリスに借りていた服を脱ぎ、洗濯してもらった、夏貴が最初着ていたシャツとパンツに着替える。勿論、女の体に抵抗がない夏貴は目を瞑りながら着替えた。そんな時、部屋にアリスが入ってきた。
「ナツキちゃん!まだダメよ!ゆっくりしてたほうがいいわ!」
「あ、いや、もう大丈夫です。そろそろ出発しようと思います。」
「そう・・・。本当に大丈夫なの?」
「はい。この通り、全然痛くないです!」
本当に痛くなかった。動きに何の異常もない。これなら問題なく戦闘もできるだろう。
「そう・・・。わかったわ。ついてきて。」
そう言うと、アリスは背を向けて歩きだした。夏貴は不思議に思いながらもついていく。家を出てしばらく歩き、村の中にある、倉庫のようなところに着いた。
「ここは・・・?」
「村の武器庫よ。村長にナツキちゃんのこと話したら、特別に一個だけ持って行っていいって。」
「本当ですか!?」
「ええ。」
「ありがとうございます!」
夏貴は早速搜索にかかる。どれも今持っている木の棒なんかとは比べ物にならないほどいい武器だ。剣だけでなく、大砲のようなものまで置いてあるが、持ち運べそうにないので諦める。剣を一つずつ見ていくが、良し悪しは夏貴にはわからなかった。仕方なく適当に一本引き抜こうとする。
「これでいっか・・・あ!」
引き抜いた剣が元々支柱になっていたのか、周辺の剣が倒れる。
「あぁ・・・。ごめんさい!・・・・・・ん?」
一個だけ倒れていないのがあった。しかもそれは明らかにほかの剣とは異彩を放っていた。
「これ・・・・。」
触れると手にしっくりと馴染み、使いやすそうだった。
「それにする?」
笑顔でアリスが聞いてくる。
「あ、・・・・はい。これにします。」
「わかったわ。私たちからできることはこれくらいだけど、頑張って。」
「・・・ありがとうございます。」
短い間ではあったけど、命を助けてもらい、休ませてもらい、こんなものまでもらって、別れが惜しくないわけがない。
「やっぱり不安?」
「え、いや・・・そういうわけじゃないんですけど・・・。」
「そう、ならきっとできるわ。応援してるから!」
「ほんと、今までありがとうございました!」
「ふふふ。可愛いわぁ~。泣いちゃって。」
「え!?」
気がつくと目の淵に涙が溜まっていた。普段こんなことで泣くはずはないのに・・・。
「そういえば、まだこの村の名前、教えてなかったわね。この村の名前は、ヘルト。またいつか来てね?」
「はい。」
「ここから北にずっと行けば大きな街に付けるわ。そこでいろんな情報を集めるといいわ。」
「はい。」
「・・・いってらっしゃい。」
「!・・・・はい!」
夏貴にとってこの言葉がどれだけ嬉しかったか。「いってらっしゃい」それは、「帰っておいで」の裏返しだから。
「行ってきます!」
夏貴は村を飛び出し、北を目指して歩き始めた。
いつまでたっても本編に突入できない気がする。