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『WWW』~World Wide War~  作者: クローバー
第一章 始まり
4/6

桃○郎とは違うからね!

「そうだ、もっかいあのおっさんに電話してみよう。」


 頭の中で「電話」と念じる。VR空間にいるときに電話をかけようと思ったら、「電話」と念じて、番号を頭の中で唱えればかけることができる。または、連絡先の名前を唱えてもかかるようになっている。このVRシステムは本当によく考えられていると思う。次は一回目のコールで出た。


『またか・・・。一体なんの用だい?』


「またかって、協力してやってんだから感謝しろよ。」


『報酬でチャラだ。』


「ぬ・・・。まあいいや。なんかチュートリアルがないんだが、どうすればいい?これもしかしてバグか?」


『なに・・・。そうか、済まない。そんなことになるとは。』


「もしかして原因はお前か!」


『ああ。実は調査のために必要なスキルをWWW内で使えるようにしておいたんだが、もしかしたらその時に異常が出てしまったのかもしれない。』


「何してくれてんだ。」


『まあ、このスキルは君に必要になってくると思うぞ?』


「ほー。そんなにすごいのか?」


『ああ。スキル名は「擬態」説明はスキルを見てくれ。・・・おっと、私は忙しいので失礼するよ。』


「あ、スキルってどうやって・・・・切れたか。」


 結局なにも分からなかった。仕方なく今まで通り村を探す。


「くっそー。もうだいぶ歩いたぞ~。どこにも村なんて見えねー!てかその前にここどこだよ!」


 夏貴は先ほどの場所から歩き続け、森の中にまで足を進めていた。そして迷っていた。どうやらさっきまで夏希がいた場所は森で囲まれた草原だったらしく、村を探すためには森を抜けなくてはならなかったのだ。そんな時、夏貴の耳に何かの音が聞こえてきた。


「これは・・・水の流れる音か?」


 微かにではあるが、水が流れる音が聞こえた。


「こっちか?」


 音のする方へと歩いていく。すると、幅は小さいが、川が流れていた。


「よし!これを下っていけばどっかの村にはつくだろ!」



 ―――――



 しばらく歩くと民家らしきものが見えてきた。しかし、それは川を挟んで夏貴と反対側に位置していた。そのため、村に行くためには川を渡る必要があった。


「困ったなー。橋なんてないし・・・。」


 川は幅はないものの、深く、水の量が多い。水の中に手を入れてみると見た目より随分と流れを早く感じた。


「泳いで渡るのも結構きつくないか・・・?」


 幅はないといっても、それでも50mはある。今の夏貴の非力な体では泳ぎきれるか不安だった。ただでさえ水泳は得意でないというのに・・・。夏貴の今までの水泳最高記録は25mである。


「でも・・・行くしかない・・・よな。」


 村に行くためには渡るしか方法はない。意を決して夏貴は長い髪を括り、木の棒を背中に固定すると川に片足を入れた。


「うおっ。冷た!」


 随分と再現されている。本当に川に入っているようだ。


「よし・・・・とりゃっ」


 そこから一気に川に飛び降りる。しかし、川底に足をつけようとするが、足がつかない。


「あ、あれ?ちょ、わぶっ!」


 水に体の自由が奪われ、流される。


「うわわ。やばい!」


 急いで体勢を立て直そうとするが体は言う事を聞かず、どんどん流されていく。無理に動こうとして、返って体制が崩れ、顔が水の中に入ってしまう。流れが速く、そこから体勢を戻すのは至難の業だった。ましてや夏貴はそんな技術を持ち合わせてはいなかった。息ができず、夏貴は気を失った。



 ―――――



「ん・・・・。」


 目を覚ますと、木の天井が広がっていた。所謂ログハウスというやつだろうか。どう考えても自分の部屋ではない。


「あら、目が覚めたのね?」


 横から女性の声が聞こえて夏貴は驚いて声のした方を向く。すると、金髪碧眼の美しい女性が夏貴の寝ているベッドの隣で座っていた。


「えっと・・・ここは・・・・?」


「ここは私たちの家よ?私が川で洗濯してたらあなたが流れてきたからビックリしちゃったわ。どこかの国にある童話みたいだったわ。」


 そう言って笑う女性。それを聞いていて、夏貴は自分がさっきまで何をしていたかを思い出した。


「あ、そうか・・・俺、溺れそうになって・・・。」


「俺?」


「あ。」


 夏貴は自分が女の姿であることを忘れていた。不審に思われないためには女であることを演じきるしかない。


「えと、私・・・おほん。溺れそうになっていたところを助けてくださったんですか?ありがとうございました。」


「いえいえ。一時はどうなるかと思ったわ。でもこんなに可愛い子、ほうっておけないからね。」


 可愛いと言われても全く嬉しくなかった。それより、可愛くなかったらどうなっていたんだろうと夏貴は身震いした。


「そんなことより、あなたのことをいろいろ教えて頂戴?私の名前はアリスよ。」


 そう言ってアリスという女性は腕をかざした。すると、手首のあたりからウィンドウが出てきた。そこには、


 名前:アリス・マーシャ

 年齢:22

 種族:人間

 性別:♀

 レベル:32

 職業:農民

 備考:マーシャ家長女。温和な性格。家族構成、父、母、妹、弟


と書かれていた。


「これは・・・・なんですか?」


「え?これ見るの・・・もしかして初めて?」


 アリスという女性は驚いた様子で夏貴を見た。


「はい・・・。」


「そうなの。じゃあ説明するわ。これは、キャスターと言って、個人情報を表示させることができるの。その人の名前とか、職業とかね。心の中で「キャスター」って唱えると表示させることができるの。表示の発信源は手首ね。誰か人を指定すれば、その人だけに見せることもできるわ。」


「へー。」


「やってみて?」


 夏貴は心の中で「キャスター」と唱えた。すると手首から光が出てきた。顔の前に腕を持ってくると、そこには


 名前:ナツキ・トモシロ

 年齢:17

 種族:人間

 性別:♀

 レベル:1

 職業:無職

 備考:なし


と書かれていた。


「ナツキちゃんね。よろしく。」


「よろしく、お願いします。」


「それにしても、どうしてナツキちゃんは川で溺れたの?」


「泳げないんです・・・。」


「泳げないのに川で遊んでたの!?」


 アリスは驚いて夏貴を見る。夏貴は慌てて首を振る。


「いえ、遊んでたわけではないんです!」


「え?じゃあどうして?」


 首をかしげるアリス。垂れる金髪が色っぽい。


「いや、あの・・・森で迷って、そのー、どこか村を探してたんです。」


「あー、もしかしてノウムの森?」


「ノウムの森?」


「そう、ナツキちゃんが流された川の向こう側の森。」


「あ、多分それです。」


「そうなの・・・。あそこはとても深くてモンスターも多くて大変なのよね。しかも、たまにすごい霧がかかることがあるから、迷う人が多いのよね。よくここまで来れたわね。でも、どうしてノウムの森になんか入ったの?」


「それは・・・あはは。」


 気づいたら森の中だったなんて言えるわけがない。


「まあいいわ。家はどこ?さすがに送ってはいけないけど、手伝いくらいならするから。」


「えっと・・・・あはは。」


 家はありませんなんて言えるわけがない。


「もしかして・・・記憶喪失?」


 心配そうに声をかけるアリス。かなり勘違いをされているようだ。しかし、こうしておいたほうが後々楽かもしれないと思った。


「はい、実は・・・自分の家とか、名前とか思い出せないんです・・・。気づいたら森の中だったんです。」


「そうだったの・・・辛かったわね・・・。」


 そう言ってアリスは夏貴を抱きしめた。夏貴は恥ずかしいと思いながらも、騙していることに後ろめたさを感じていた。


「でも、それじゃあこれからどうするの?」


「はい。もう自分が誰かもわからない。家もどこかわからない。それじゃあ帰れないので、記憶を取り戻すために旅に出ようと思います。」


「そう・・・・。でも、外にはモンスターがたくさんいるわよ?」


「はい。森で遭遇しました。」


「なんですって!?大丈夫!?怪我はない!?」


 身を乗り出してくるアリス。


「え、はい。大丈夫です。一匹は倒しましたし、あとは隠れてきましたから。」


「一人で・・・?」


「え?はい・・・。」


「嘘・・・・。」


 アリスは心底驚いているようだった。


「倒したって・・・どうやって?まさか、持ってたこの木の棒?」


 そう言ってアリスはベッドの横に立てかけてある木の棒を指差す。


「はい。」


「嘘・・・・。服や木の棒に血が付いてるのに怪我してないからおかしいと思ったけど、そういうことだったの・・・。」


 深く考えているアリス。するとおもむろに顔を上げた。


「わかったは。少しだけだけど、協力するわ。」


「本当ですか!?」


「ええ。でも今は体を休めてね?」


 いたずらっぽく微笑むとアリスは部屋を出ていった。アリスが出て行くと夏貴は大きく息を吐いた。


「はぁー・・・。きっつ。」


 夏貴は女としてしゃべることが大変だと実感した。普段口が悪い分余計に辛かった。


「とりあえず、もう遅いだろうし、一旦終わるか・・・。」


 夏貴はログアウトするためにログアウトボタンを探す。しかし、


「・・・・どうやってログアウトするんだ・・・・?」


 ログアウトボタンはどこにもなかった。

名前をつけるのがすごく難しいです・・・。

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