プロローグ
初めてのファンタジーというか、なんというか。へったくそですが楽しんで見ていただければと思います。
カニカラTOY。世界初のVRシステムを開発した元中小企業。今や世界でも一位二位を争う程の企業へと成長した。そして、開発されたVRシステムは会社の方針上、ゲームに使用された。それは、VRMMORPG、「World Wide War」 通称『WWW』。謳い文句は「リアルな非リアル」。ゲームプロデューサーは、できないことがない。と豪語するほどだ。
このVRシステムだが、ヘッドギア型で、脳に電流を送り、感覚を刺激したのと同じ状態を作り出す。そうして、視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚の五感すべてを現実のように再現することができた。また、VR空間にいる間は現実の自分の体はレム睡眠と同じ状態で、体は寝ているのに脳が起きている状態である。これらの技術はカニカラTOYが特許を取っていて、カニカラTOY社製のVRヘッドギアしか発売されていない。
このVRヘッドギア1つにつき1つのIDがついており、ネットを介して本社から個人の特定もできるようになっている。また、このIDを使用し、WWWを遊ぶことができる。そして、このWWWのサービス開始が、目前まで迫っていたー
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「ふぁああああ・・・・眠い。」
知城 夏貴は机の上で頬杖を付きながら空を眺めていた。夏貴は滝川高校の2年生。特にこれといった趣味もなく、特にこれといった特技もなく、特にこれといった特徴もない、ごくごく普通の高校生だ。中学生の時は友達とバンドを組んだりしていたが、その友達と離れてしまった今、特に何かをしたいという気にはなれなかった。毎日、高校で出来た友達とバカ騒ぎをして過ごし、家に帰れば自宅警備員の巣窟である4ちゃんねるを徘徊し、11時に寝る。ただそれだけの生活を1年間続けた。
「う~ん・・・暇だー。」
「ほー。それはつまり先生の授業が退屈だ、ということかな?知城。」
教科書を丸めて肩に担ぎ眉毛をピクピクさせながら笑顔で夏貴に話しかけたのは、古典教師である芥川 竜介。生徒たちからは「一文字足りない!」とよく言われる教師だ。野球部の顧問で、筋肉質なため、よく体育教師と間違われる。
「あ、いや、全然!それどころかめちゃくちゃ楽しいですよ!古典が今日はもうないと思うと暇だなーって思ったんです!」
「そうか、じゃあ放課後に先生のところに来なさい。特別授業をしてやろう。」
「げ。」
クラスから笑いが起こる。となりの男子は額を抑えてため息をつく。夏貴は竜介に必死に言い訳をするが聞いてもらえず放課後に行くことになる。夏貴はこんな、楽しく、色褪せた日常を過ごしていた。
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「あーひどい目にあった・・・・。」
夏貴は自分の下駄箱に向かいながらため息をつく。あのあと、放課後に先生のところへ行くと、プリントが山のように積んであり、それが終わるまで帰らせてもらえなかったため、時刻は7時。校内に生徒はほとんどおらず、外で体育会系の部活が片付けをしていた。
「くっそ~。・・・・ん?」
下駄箱のところまで行くと、見慣れた人影があった。黒い長髪。身長は平均的で顔は美人と呼ぶにふさわしい顔立ちをしている。
「椎名じゃん。こんなに遅くまで何してんだ?」
「え?あ、知城君か。そっちこそ何してるの?」
椎名 美紀。夏貴と同じクラスでたまに話す程度だが、美紀は男らしい面があるため、話しやすく、一度話しだすとなかなか終わらないことがよくある。
「俺は竜介に掴まってこの時間まで課題させられたんだよ。」
「あはは。あれ本当にやったんだ。」
「全く。おかげでこの時間まで帰れずだ。で、お前何してんだ?」
美紀は部活に入っていないためこんな時間まで残る必要なないはずである。
「ああ、私?私は生徒会の仕事があってね。来週生徒総会があるでしょ?その準備。」
美紀が部活に入っていないのはこのためである。生徒会の2年副会長として学校を支えている。
「なるほどね。今終わったのか?」
「うん。ちょうど帰ろうとしてたとこ。」
「そうか。暗いし、駅まで方向一緒だから送るよ。」
「・・・ありがと。」
そう言って二人は昇降口を出た。
美紀の家は学校から3kmと近く、しばらく歩くとすぐについた。
「送ってくれてありがと。」
「おう。じゃ、また明日~。」
「ちょっと、今日は金曜日だよ?明日は土曜日!」
「あれ?そうだっけ?じゃあ明日は休みか。じゃ、また月曜日。」
「もー、しっかりしてよね!・・・じゃあ、おやすみ。」
「おー。」
美紀はそう言って家の中に入っていった。夏貴も駅に向かって歩いていく。住宅街を抜け、踏切を渡り、もう一度住宅街に入り、しばらく行くと、人気のない道に出た。
「・・・俺に用があるんだろ。出てこいよ。」
夏貴は振り返って言った。そこには暗闇が広がっている。
「・・・よくわかったな。知城夏貴。やはり私が見込んだ男だ。」
そう言って物陰からひとりの男が出てきた。茶色の茶色のダウンジャケットを着た見た目40歳くらいの男だった。
「なんの用だ。学校を出た時からついてきてただろ。」
「すごいな。流石だよ。」
男は手を叩いて夏貴を賞賛する。目が細く、笑っているように見えるが、本当のところ、何を考えているのかわからない。
「それで、なんの用だよ。俺は早く帰りたいんだ。今日はどら○モンがやるから早く帰りたいんだよ。」
「ははは、面白いな君は。要件よりまず先に自己紹介をさせてくれ。私は三原 秀夫。警察官だ。」
三原という男は警察手帳を見せてくる。
「警察官・・・。」
「驚いたろう。それで要件なんだが、君はカニカラTOYという会社を知っているかい?」
「ああ。知っている。」
「そうか。ならば話が早い。その会社の開発したVRシステムなんだが、あれがどうもおかしいと踏んでね、それを調査しようと思っているんだ。」
「そうか、どうぞご自由に。」
「ははは、君は本当に面白な。それができれば苦労しないんだよ。」
「なぜだ?」
「VRシステムの開発を始めたあたりから、カニカラTOYは怪しげな動きを始めてね。どうやら、あれの開発のために人体実験を繰り返していた疑いがある。それを捜査したいんだが、カニカラTOYはどうやら暗部があるようで、妨害をされてしまう。それで、解決の糸口として、逆にVRシステムを利用し、カニカラTOYのサイバーに侵入しようと思うんだが、VRシステムを使用するために必要なVRヘッドギアはIDによって個人を特定されてしまうんだ。そして警察だとばれるとやりづらくなる。そのため一般人を利用することにしたんだ。」
「それがどうして俺になる。」
「そんなもの・・・・適当に決まってるだろ。」
「・・・へ?」
声音、喋り方、空気まですべてが変わった気がした。
「いや、ぶっちゃけ誰でもよかったっていうか、まあそんなわけだから適当にえいっとね。」
「ちょ、ちょっとまって、そんなんで決めていいものなのか!?」
「いいんだよ。普通にVRシステムを使ってカニカラTOYが明日からサービスを開始する、World Wide War、通称『WWW』で遊び、変わったことがあれば報告してくれるだけでいいんだから。」
「だからって、捜査をするってのに・・・。」
「硬いこと言うなって。必要なものはこっちで揃える。そして、これが、VRヘッドギアだ。」
そう言って三原はカバンから箱を取り出し、夏貴に渡した。夏貴は無意識にそれを受け取る。見ると、紙切れが一枚、貼り付けられていた。
「その紙に書いてあるのは私の携帯の番号だ。『WWW』はVR空間からネットを通じて電話をかけれるようになっている。ログインしたら電話をかけてくれ。詳しい説明はそのときする。」
「いや、まだするって決めたわけじゃ・・!おい!待て!」
三原は言い終わると同時に走り去っていった。そこには箱を持った夏貴が一人佇むのみとなった。
ありがとうございます。更新はかなり遅くなると思いますが、どうか最後までお付き合いください。