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ギャップに弱い

更新遅れて申し訳ございませぬ。




 そのままレオルドの首元にしがみついていると「ついたぞ」と声をかけられたため、ぱっと身を離した。

 やってから気づいたが道中ずっとしがみつくなんて握力凄いな私。

 これも奇妙な特殊能力のおかげなんだろうか。


 中に入るように促されるまま足を進めると、そこは一人暮らしするには少し広いような印象を持った。


「待ってろ」


 そう一言だけ残して彼は家の奥へと歩いていく。


「待てとは言われたけど、どのぐらい待てばいいんだろ……」


 そう長く待たされることはないだろうとは思うがこんな中途半端な時間をどう過ごせばよいのやら。


 あまり人の家をじろじろ見るのは気が引けたため、キマイラを倒した際に得た戦利品(ドロップアイテム)を確認することにした。

 アイテムインベントリを開き、画面をスライドさせていくと見覚えのない武器があることに気づいた。


 いつのまにこんな武器を手に入れていたのだろうか。


 驚いたものの、すぐに思い当たった。

 おそらくキマイラからドロップしたものだろう。倒すことに必死だったせいなのか今の今まで気づかなかった。

 指先を合わせれば【獅子王の宝剣】という名前とともに数値化された武器の性能も表示される。

 攻撃力は1200、特性に攻撃力90%増加と攻撃範囲拡大に強運とあり、見覚えのない特性に首を傾げた。


 【強運】強運の持ち主になる。


 このなんとも言えない気持ちは、最近にも抱いたような気がする。

 思わず頭を抱えたくなったが気を取り直して戦利品の確認を再開した。


 本来確認をしようとしていたドロップアイテムは二つだ。

 赤い宝石のアイコンは【キマイラの心臓】と表示され、説明文には『キマイラの体内で生成されるエネルギーの結晶』とだけ書かれており、活用法などは特に記述されていない。

 一方緑の鱗のアイコンには【毒蛇の鱗】とある。こちらは『鱗のみでは無害だが調合に使用すれば強い毒の効果を得られる』という説明で、ふと毒薬がこの世界で需要のあるものか疑問に思い、少し考えてみる。

 ――いや、需要があるにしてもないにしてもそもそも毒薬なんて作れないけど。


 試しに両方を取り出してみると、【キマイラの心臓】はブリリアンカットされたルビーのように美しく、【毒蛇の鱗】は手の甲ほどの大きさで緑色の水晶のような透明感を持ちながらところどころ黒や紫といった紋様が入っている。


「宝石っぽいけど高く売れるのかな」

「あんた、それ二つとも店売りするつもりか?」


 はっとして顔を上げれば呆れた目線のレオルドと目が合った。いつのまに戻ってきたんだ。


「……いくら一晩だけとはいえ女を床に寝かせるほど器の小さい男じゃないんだよ」


 何も言わずに見つめていると、ぶっきらぼうに返された。

 口ぶりから察するにどうやら私が一泊するためにその準備をしてくれていたようだ。無愛想に見せかけて案外世話焼きな男だ。

 確かにそれも聞きたかったことではあるのだが、今聞きたいことはそれではない。


「店売り以外で活用法あるの?」


 先ほど彼が呆れ顔で口にしたことだ。


「あんた……本当に何も知らないんだな」


 再び呆れたような表情で大きく溜息をついた。

 さすがに無知が過ぎると怪しまれるだろうかと不安が過った。


「素材を集めて装備品を強化するのは冒険者にとって基本中の基本だろうが」

「強化?」

「鍛冶屋で強化したい装備品とそれに見合った素材と金を用意して強化してもらうんだよ」

「強化するとどんなことがあるの?」

「そうだな……基本として武器なら攻撃力、防具なら防御力が上がる。あとは特性の数値が上昇したり新たに特性が加わったりもするな」


 色んなゲームでも魔物の素材を装備の強化に、ということはあったがまさかこの世界でも適用されるとは。

 ならば他の冒険者が自分の装備品を強化するために今私が持っている素材を欲しがる可能性もあるということか。なるほど、それだったら店に売るよりもその欲しいという人に売った方が利益がある気がする。

 といっても、その素材の相場を知らなければ利益を得ることも難しいことだとは思うが。


 どうやら私のこの無知さ加減を追及するつもりはないらしい。

 見事にお助けキャラよろしくと言わんばかりに説明してもらっているのだが、もしやレオルドがそれだったりするのだろうか。


「レオルドって……」

「なんだ」

「冒険者、なの?」


 ――地雷を踏んだのはこれで何度目だろうか。


「今は狩人をやっている」


 一瞬、瞳が揺れたのを見逃さなかった。

 今回ばかりは突っ込んだことを聞いてしまった自分に非があるとしか言いようがない。

 無表情という仮面を張り付けたかのように彼の表情は硬い。


「い、いや、凄い詳しいなと思って。深い意味はないんだけど……」

「それはあんたが物を知らなさすぎるからだろ。こんなの、冒険者じゃなくても知ってる常識だぞ」


 むしろ知らない私の方が非常識なのか。


「無駄話はこれまでだ。部屋まで案内する」


 気まずい雰囲気を打ち壊すようにぴしゃりと言い放った。

 これ以上何を話しても地雷を踏みそうな気がしてならなかったため、私もまた口を噤んで大人しく彼の後ろをついていくことにした。


 案内された部屋は思っていたよりも広く綺麗なところだった。

 先ほど待たされたのはここを掃除するためだったのだろうかと考えたが、それにしては早すぎる気もする。普段からマメに掃除をしていたのかもしれない。

 じっと部屋の中を観察していると、レオルドが指し示しながら部屋にある道具について軽く説明していく。


「油も補充しておいたから灯りがすぐに消えるなんてことはないと思うが、寝る前にはちゃんと消しておくように。

あと、泡晶石(ウィジュル)は一応こっちの方でも用意したが自分の持ってるやつを使いたいんなら別に使わなくてもいい。

他に足りないものがあれば……そうだな、この部屋を出て二つ目の部屋が俺の部屋だから三回ノックしてくれ」


 一息に話され、うんうんと頷きながら視線で指差された道具を追っていくが、あれ、と引っ掛かった。

 それじゃあと言わんばかりに部屋から出ていこうとした彼の腕を寸でのところで掴んだ。

 まだ何かあるのか、とでも言いたげな表情にそれとなく視線を泳がせる。


「あ、あのさ……」

「またお得意の『世間知らず』か?」

「……泡晶石(ウィジュル)って何」


「………」


 沈黙が流れた。


「……あんた今までどうやって体とか服とか洗ってたんだ」

「お風呂とか、洗濯とかで」


 あまりの真剣な表情につい真面目に答えてしまったが、果たして通じるのだろうか。

 ちらりと様子を窺ってみれば目元に手を当てて「予想はしてたが」だの「まじかよ」など何やらぶつぶつと呟いている。これはもう非常識人認定されたのかもしれない。

 やがて意を決してこちらへと視線を合わした。


「それは……俺みたいな村人とかが一般的に使う、あんたの言う風呂とか洗濯、あと掃除の役割を果たしてくれる石だ」


「どうやって使うの?」

「普通にそれを手に持って使えばいい」


 何だそれ普通に便利じゃないか。

 しかしよくよく話を聞けば、どうやらこの石は消耗品らしく、使えば使うほど小さくなっていくのだそうだ。

 この世界で言う石鹸のようなものだろうか。


 未知の物体である白い石を眺めていると背後から咳払いが聞こえた。

 振り返ると、レオルドが「もう部屋に戻ってもいいか」と視線で訴えかけている。


「今日はありがとう。おやすみなさい」


 慌てて声をかければ目を丸くされる。

 ――特にこれといって心当たりがないのですが。

 もしや挨拶すら地雷だと言うのだろうか。


「ああ、おやすみ」


 私の心境とは裏腹に彼の声は実に穏やかだった。

 今度はこちらが目を丸くする番だ。


「……笑ったらかっこいいっすね」


 正直かなりときめきましたよ、ええ。




思うように話が進まずヤキモキする今日この頃。

よくよく考えればこれがチュートリアル編だということに気付きました。

つまり主人公のお勉強編みたいなもんですよね。

どうにも色んなオンゲーとかの知識が混ざってごっちゃごちゃです。やばいです。


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