竜騎士の設定は意外と穴だらけ
妹曰く、と言うか大体の作者曰く。
『1回書いただけで完璧なキャラは居ない』。
何回も幾度も繰り返してやっと、完璧なキャラクターへと変わる。妹、尾張夕映はそう言っていた。
そして、それぞれの人物にちゃんとした人生があるのだと言う。
龍王院竜禍の物語、それは破滅から始まる。と言うか、中二病ってそう言う絶望からのスタートが多いのだが。
『暗黒帝竜 デーモンドラゴ・アサルト』。
世界を緩やかと終焉へと導く暗黒の闇の炎をその龍の口から吐き出す、暗黒世界から来た破滅の竜。
その刃はあらゆる物を引き裂き。
その鱗はあらゆる物を通さず。
その翼は簡単に空中へと飛び去る。
刃と言う攻撃力、鱗と言う防御力、翼と言う機動力。その三位一体を兼ね備えた竜。
そんな無敵とも思えるような竜にも、たった1本の好敵手の武器が存在する。それこそが龍王院竜禍の持つ世龍剣エクスカリバー・ドラグナイトなのである。
『斬物非』(つまりはその剣では斬れる物が無いと言う意味らしい事なのらしい)がその世龍剣エクスカリバー・ドラグナイトにはあるのだと言う。そしてその剣こそが『暗黒帝竜 デーモンドラゴ・アサルト』を倒す唯一無二の武器なのだと。
そして物語上では龍王院竜禍が『暗黒帝竜 デーモンドラゴ・アサルト』をその世龍剣エクスカリバー・ドラグナイトで、『暗黒帝竜 デーモンドラゴ・アサルト』を倒してその力を自身の身体に封印して世界の危機を救い、世界に平和をもたらした。
これが彼女、龍王院竜禍の初期設定なのである。
しかし後になって、書き終えた後の話なのだが、彼女はこれの可笑しな点を発見した。と言うか、ただの僕にとってはどうでも良いような矛盾点なのだが。
少し前に画数の多い『龍』と画数の少ない『竜』との違いについて説明したが、その前に騎士と剣士の違いについてある事を言っていただろう。
そう、騎士も剣士も剣、もしくは刀を使う点に置いては一緒だが、その剣を振るう目的が違う。
騎士は仕えるべき主君のため、剣士は己のため。その剣を振るうのだ。
分かりやすく言うと、剣士は己の強さを誇示する為に剣を振るう事はあっても、騎士はそんな事はしない。騎士は自らが仕える相手、または尊敬する者のためにその剣を振るうのだ。
龍王院竜禍は『暗黒帝竜 デーモンドラゴ・アサルト』を倒したが、それは自己保身や世界救済と言ったそんな物では無い。ただ、彼女の仕えていた者が『倒せ』と言ったから、彼女の仕えていた者が暗黒帝竜によって殺されるのを防ぐため。
彼女はそう言う理由で剣を振るわないといけない。
しかし、彼女は竜騎士である前に、完全無欠であり孤高の存在。だとしたら、どうして『暗黒帝竜 デーモンドラゴ・アサルト』を倒そうと思ったのか? そこが気になった夕映は、その修正としてその者の仕えるべき者、『境界線上の絶対君主』なる者をその次のノートに書いた。
そして、彼女は納得していた。
……まぁ、『境界線上の絶対君主』ってなんだよと思うのだが。
さて、話を戻そう。
今朝、夢の中で彼女は神様によって1冊のノート、龍王院竜禍や『暗黒帝竜 デーモンドラゴ・アサルト』が載った1冊のノートをまるごと現実化して貰った。故に今、この世界に龍王院竜禍は高校1年生として入学し、『暗黒帝竜 デーモンドラゴ・アサルト』は高らかに空を舞う。
しかし、そのノートには龍王院竜禍の仕えるべき君主、『境界線上の絶対君主』は載っていない。
そして、ここに。
仕えるべき者のためにしか剣を振るわない竜騎士と、その竜騎士にしか倒せない『暗黒帝竜 デーモンドラゴ・アサルト』の2つが存在してしまったのである。
このままだと、暗黒帝竜は世界を滅ぼす。しかし、竜騎士は仕えるべき君主が居ない今、あの暗黒帝竜を倒すために剣は振るわない。
故に、妹はこの世界の終焉を言っていたのだった。
「なんつー、むちゃくちゃな」
あっ、ちなみに今のは僕、尾張宣長の心底呆れた台詞。
つーか、お前の設定ミスで世界が滅ぶって……。どんな物語だよ。