竜騎士は意外とうざい物である
僕の妹、尾張夕映が言うには騎士と剣士は違う者らしい。
妹はそれについて語っていた気がしたんだけれども、僕は興味が無かったから聞いていたが耳に残って居なかった。そして夕映が作っていたノートには彼女も乗っていた。
王国を破滅に導こうとしていた世界龍を殺し、その龍の力をその身に宿した騎士。
龍人騎士、龍王院竜渦。
しかしそれはノートに書いてあった設定上の、ノート上での人物だったが、今僕の目の前にはそんな竜渦が現れていた。
「尾張宣長……か。面白い名前だな」
「それはこちらの台詞だよ、竜渦」
燃える炎のような赤色の腰より少し短いくらいの流れるような髪。金色の勝気な吊り目。竜の角。銀色の鎧に金色の西洋刀。
どれもが現実離れした美しさながらも、しっかりとここに存在を示している。漫画の登場人物が現実に出ると、差が出たりするのかと思いきや全く持ってそんな事は無い。そんな感じである。
「ふむ……。名前の割につまらない容貌だな。だがしかし、同じ部隊に所属する者として名と姿を覚えておこうではないか。では他にも覚える人物が居るために失礼させてもらおう」
そう言って竜禍は別の人物の元へと向かって行った。恐らく僕と同じように顔と姿を覚えようとしているのだろう。どうやら今日だけでクラスメイトの名前と姿を完全一致を目指して頑張ろうとしているのだろうか? なんともまぁ、変な所に執着しているな。
けれども、竜禍よ。ここは部隊じゃないからな。
「あっ、ノブ君もやられたんだ。リュウちゃんの名前覚え♪」
「甘露、もしかしなくてもリュウちゃんってのは……」
「うん♪ 竜禍ちゃんだからリュウちゃん♪ 可愛いでしょ♪」
「可愛いって言うか……あいつの場合はカッコいいの方が良く似合う気がするんだが」
なんとなく、容姿もカッコいいし。つーか、学校に刀を持って来て良いんだろうか? 銃刀法違反の完全なる体現者なんだが。
警察による武力介入が無い事を祈るばかりである。
「でもね、ノブ君。リュウちゃんは女の子なんだから、カッコいいよりも可愛いとかきれいとかの方が嬉しいと思うよー?」
「まぁ、それも確かだな。でもあいつを見てると夕映と話している気がするんだよ」
主に女子らしさを感じさせないと言う点と、精神的に話していると扱いづらいと言う点に置いて。あの龍王院竜禍と尾張夕映は良く似ている。
と言うか、どう考えても龍王院竜禍が出現したのには尾張夕映が深く深く関わっているに違いない。だからこそ今日は帰ったら、絶対に竜禍について夕映から聞き出してみせる。
とりあえずまずは今日、心静かに学校で過ごす事を目標にしておこう。
「……あっ! ノブ君、ノブ君♪ リュウちゃんが呼んでるから来てよー♪」
「すみません、尾張宣長君。実は勉学で少し分からない事があるから教えてくれませんか? 他の人は何か教えてくれないので」
勉学が分からない竜禍に何故か僕が勉強を教えないといけないらしい。まぁ、明らかに皆遠巻きに見てるからな。残りは我関せずの人達と、笑っている甘露だけ。
と言うか、甘露。お前が教えてやってくれないか、僕はこいつの相手をしようと思うだけできついんだが。




