邪院寺の弱点
邪院寺真は例によって、例のごとくボウガンから弓矢を発射する。
彼女の知る知識の通り、このような攻撃をしたらこっちに避ける。初手はこちらを避ける。今までの戦歴。その場の雰囲気。勘。そう言った癖。
その全てを理解して、邪院寺真は二本の弓矢を龍王院とアリアに当たるように発射した。
これは戦闘ではない。完璧なる流れ作業。彼の頭にはこれを戦闘と思っていない。だからいつものように、当たるのを理解して邪院寺は攻撃する。
「ふっ……!」
「やっ……!」
しかしそれを、龍王院とアリアは避けていた。しかも彼女達は何もしていない。邪院寺の弓矢は全く持って見当違いの方向に発射されていたのだった。あんなのは余程動かないと当たらない、全く持って見当違いの方向へ発射されていたのである。
「何……!?」
どう言う事だ、と邪院寺は驚く。邪院寺の強さはその的確なる行動予測から成り立っている。
行動予測でどこを攻撃すれば分かっているからこそ、攻撃が通る。どこを攻撃すればダメージが大きいかを理解しているからこそ、相手に絶大なる傷を与える事が出来る。相手の攻撃がどこを狙っているか分かるからこそ、攻撃を避ける事が可能となる。
邪院寺真の強さはそう言った的確な予想からなる、完璧な予測者で預言者であるからこそ出来る強さ。
何もかも見通す太古の使者、邪院寺真の戦い方がそれである。だからこそ、攻撃が通じなかった事に邪院寺は驚いていた。
「そして攻撃です!」
「……『夢殺し』 !」
いや、問題ない。龍王院とアリアが共闘したと言うデータはないけれども、それでも龍王院が共闘したと言うデータとアリアが共闘していたと言うデータがある。それを理解して吟味して、2人の攻撃を避けようとして、
「えっ……!?」
2人の攻撃に翻弄されて邪院寺は倒れる。
「どうして……僕は知識を……この世界にある知識を……。
この世界で書かれているほんの知識を全て知っているはずなのに!」
そう、彼の能力は『書物知識』。同じ世界にある全ての書物――――――発行、未発行、完結済み、未完結問わず―――――――彼は全ての書物の知識を得る事が出来て、その書物の知識を全て万全に使える。その全ての知識を完璧に分析して、自分の知識とする事が出来る。
恋仲とする方法も恋愛の本での知識だし、この度の幸福を犠牲にしての世界変革も前の世界で得た禁術の本の知識である。龍王院とアリアの攻撃の知識は尾張夕映のキャラメイキングの知識である。誰と誰を恋仲にするのに相応しいのかは、新聞部の情報や日記などで確認した。
この世にある書物ならば、どんな物だろうと自らの知識とする。そんな彼に死角は―――――――ないはずだった。
「いえ、あなたにも弱点はあります」
「―――――そう。例えば電脳世界に書かれた物は読めないとか?」
「――――――っ! だがしかし! 私はこの能力で世界を! このふざけた世界を――――――」
「「うるさい!」」
そして彼は龍王院とアリアに攻撃されて、倒されてしまったのであった。




