騎士と予言者の闘い
そもそも私、龍王院は予言者である邪院寺真と戦った場合、自分が勝つと思っていた。
そんなに体力がないから激しい攻撃は出来ないだろうし、それに体力差としても自分の方が勝っている。それに武器であるボウガンから放たれるだろう弓矢も100%、落とす事が出来ると思っている。自分には『暗黒帝竜 デーモンドラゴ・アサルト』の呪いによって傷つけられても数時間で治癒するだろうと思っている。
そんな訳で冷静に自分の能力と実力を審査した私は、世龍剣エクスカリバー・ドラグナイトを構え、地面で足を蹴って跳ぶ。跳んだ私は世龍剣エクスカリバー・ドラグナイトに龍気を纏わせる。龍気とは卓越した技を持つ人間のみが使う事が出来る気の一種で、人間の遺伝子の奥深くに刻まれたドラゴンの力を使う技術である。私の地方だと、この力を一番引き出せるのは私。私が一番強いのです。
この力を使う事によって私は世龍剣エクスカリバー・ドラゴナイトの力を今以上に使う事が出来る。この力を使うと、世龍剣エクスカリバー・ドラゴナイトは龍気によってその刃に龍の炎を纏わせる事が可能となる。龍の炎を纏わせる事によって、世龍剣エクスカリバー・ドラグナイトは最高の切れ味を手に入れる事が出来る。
「最高の切れ味の世龍剣エクスカリバー・ドラグナイトに敵はない!」
「そうかな? 意外と敵だらけだと思うよ」
邪院寺はそう言って、ボウガンを発射する。ボウガンから発射されたシアンブルー色の弓矢は真っ直ぐ私へと向かって来る。
「どんな弓矢だろうと、負けはしません!」
私はそう言って、世龍剣エクスカリバー・ドラグナイトを斬り捨てる。斬り捨て、私はそのまま向かって行こうとした。
「今すぐ! ……何!」
しかし行こうとしたが、全く動けない事に気付く。慌てて足元を見るとその足には薄い水色のねっとりとしたスライムが私の右足を覆っていました。粘着性の非常に強い物らしく、全く動きません。
「これはいったい!」
「どうだい、驚いたかい? ボクお手製の粘着ボウガンの御味はどうだい?」
そう言いながら、彼はまた別の弓矢を入れて構えます。その弓矢は先程の弓矢とは違っていました。椿のような花が矢じりに付けられた弓矢。
「奥儀、椿のかんざし」
彼はそう言って、その椿の花の弓矢を発射する。邪院寺が発射した椿の弓矢は、驚いた事に空中で大量の椿の弓矢となった。そしてその全てが私の前に飛んで来る。
「くっ!」
飛んで来た弓矢を私は自分の所に飛んで来る者だけを選り好んで斬り捨てる。斬り捨てられたその弓矢は私の後ろで無残な姿で存在していました。
「おやおや、流石。ドラゴンを倒すだけの実力派申し分ないと言う事でしょうか。
でも残念。あなたの負けです」
「な、何! 勝負はまだ……!」
まだ私には色々と手が……!
「ボクはこれからこの学校に恋愛をはやらせて、この学校を私好みの楽園へと作り変えるのです。残念でしたね、世の中にはその地域の人の幸福で発動する術もあるんですから。ボクはこの学校の生徒の恋愛エネルギーを引き換えにして、世界を作り変える術式を発動します!
決行は明日、この計画は誰にも止められないのです」
まさか彼はこの学校の生徒の恋愛にかける思いを贄にして世界改変の術式を発動するつもりですか? なんでそんな事を……。
「そんな事が出来るはずが……」
「フフフ。私は術の知識を得てその知識を十全に使えます。この世にはそう言った、一定量の幸せエネルギーで世界改変の術式を作動出来る術式が存在するのです」
あり得ない話では無い。もし彼がそのためにこの学校の恋愛を成就させまくっていたのだとしたら、それはこのため? でもなんで私にその事を?
「なんでその事をって、思ってる? ボクは全てを知る万能の存在。故にボクはボクにしか出来ない事を成し遂げる。前の世界だとボクはただの水先案内にすぎなかったけど今なら出来る。故にボクはこの世界で、ボクに相応しい世界に変えてみせる。
今君に教えたのは、単なる自慢。もう今日の夜、この学校の屋上で術を解き放てばお終いさ」
「何の私なら……」
くっ! 動けない!
「そのスライムは明日の朝にしか取れないよ。これで君はボクの邪魔が出来ない」
なんて奴です。初めから怪しいとは思っていましたが、まさか世界改変なんて馬鹿な事を考えているなんて……。
「じゃあね、おバカな騎士さん。ハハハハ」
そう言って、彼は笑いながら立ち去った。
不味い。非常に不味い。
このままだと宣長様と甘露様の思いまであいつのくだらない策略に利用されてしまう。それは駄目! せめて彼と彼女の思いはそんなよこしまな目的で作られて良いはずがない! 一刻も早く、この事を伝えないと。
どうにかしてこの事を伝えよう。そう思った私は、一刻も早くこのスライムをどうにかする方法を考えるのでした。




