幼馴染との通学路は楽しい物です
今年から僕が通う高校、公立天王寺高校(通称、天高)はこの辺りでも普通で平凡な高校である。異常なほどの進学校でも無く、部活に重度の力を入れていない、本当に普通の高校です。三平な僕にぴったりの高校と言えよう。ちなみにこの高校の制服は王道とも言えるような男子は黒いブレザー、女子はセーラー服と言うスタイルである。まぁ、制服をきちんと着ていない生徒も居ても、別に構わないと言う校風なのだが。
ちなみに妹の夕映が通っている中学校は私立縁起橋中学(通称、縁中)と言うここいらでもそれなりに有名な名門の進学校である。夕映は性格はアレだけれども、容姿や成績はすこぶる良いからそんな中学でも十分に通う事が出来るのだろう。あいつと同じ中学など行きたくなかった僕は、近くの別の中学に通っていたのだが。高校と合体しており、エスカレーター方式的に上に行く事も可能である。ちなみにその高校の名前は、円中と同じく私立縁起橋高校(通称、縁高)である。
なお、一応言っておくが通称は本当に使われている物であり、決してネタで作られた訳では無い。なんかネタのような通称ではあるが。
良くある高校らしく、少し小高い丘の上に建てられた天高へと半分軽い山登りハイキングコース気分で登っていたのだが、
「あっ、ノブ君♪」
と、背後から可愛らしく優しい、甘いお菓子のような女の子の声が聞こえて来た。聞き覚えのある声に僕は振り返り、彼女の姿を確認する。
肩まで伸びる亜麻色の柔らかそうな先が丸まった髪。少女マンガを彷彿とさせる大きめの青い瞳。少し小さめの身体ながらも、しっかりと自己主張をしている大きめの胸(ちなみにサイズは妹と同じD。妹より少し大きいらしいが)。茶色の暖かそうなブレザーを着ており、全身から女の子らしいスイーツ的な甘いオーラがにじみ出ている。
彼女の名前は江戸川甘露。女子らしいイメージ満載の僕の小学校から仲良くしている幼馴染である。ちなみにノブ君とは僕、尾張宣長のあだ名である。
「高校もノブ君と同じで良かったよ~。ノブ君と別だと私、悲しくて死んでしまいそうだもん」
「いや、それくらいで簡単に自殺を決めるなよ」
「あはは~! まっ、ちょっと違うけどね。けど少しはそう思ってるよ。私、ノブ君好きだし」
そう言って、朗らかに笑う甘露を見てとても可愛らしいと思う。
と言うか、どうしてこんな女の子街道まっしぐらな幼馴染が居るのに、どうしてあの中二病妹は女の子の反面教師みたいな性格になってしまったのだろう。女とは不思議な者だ。
「あっ、そう言えば私とノブ君、一緒のクラスだったよ♪」
「どうしてまだ学校に着いてないのに、入学式初日でクラス分けが分かるんだ? あの夕映の変なウイルスが感染したか?」
「ち、違うよ~。夕映ちゃんは関係ないよ~、先に学校に行った友達からのメールで知ったの。
決して夕映ちゃんは関係ないよ~」
恥ずかしそうに顔を赤くして手を振る甘露を見て、本当にどうして妹があんなのになったのか分からなくなってくる。
そして僕達はそのまま2人で夫婦のように連れ添って、天高へと向かって行った。
クラスでの自己紹介の際、僕は今朝の妹の言葉を思い出していた。
そう、神様からお願いを叶えて貰ったと言う彼女の妄言を。
燃える炎のような赤色の腰より少し短いくらいの流れるような髪、金色の勝気な吊り目の凛とした顔立ちの小柄ながらもしっかりとした線を持つ少女。頭には竜の角のような物が髪の下から生えており、セーラー服の上に銀色の鎧を付けており、チェック柄のスカートと金色の西洋刀が変なミスマッチになっている。
そして彼女は耳を通る心に響く、生徒会長を思わせる強気で凛とした声で高らかに自己紹介をしていた。
「我は元ルフィア王国騎士団隊長にして、完全無欠の孤高の竜騎士。
硬い竜の鱗を容易く斬るこの愛刀、世龍剣エクスカリバー・ドラグナイトの正当後継者、龍王院竜禍。
貴君共、世界に不満があるのならば我と共にこの世界を変えようじゃないか!」
そう、妹のノートに載っていた中二キャラの1人、龍王院竜禍が僕のクラスに普通にクラスメイトとしていたのだった。
……と言うか、夕映。あれ、本当の事だったのか。てっきりただのネタかと思ったのだが。