普通の転校生
邪院寺真はごく言えば普通の転校生であった。
普通に笑いかけ、普通に楽しみ、普通に学園生活を送っていた。
「いやはや、ありがとね。色々と教えて貰えて嬉しいよ」
「うんうん、そんな事無いよ」
女子に親しげに話しかけ、嫌われもせずにいて。
「なぁ、この問題ってどう解くんだ?」
「……う――――ん。これはこうじゃないかな、山田君?」
「あぁ、そうか。なるほど、ね」
男子と友好的な関係を作り出して。
クラス内で楽しみながら、それなりの立場に立っていて、嫌われもせずに、ただ一個体として存在する。正直、彼は普通の人間として立ち振るっていた。
”たった3日で”。
何ら可笑しな事は無く、何も可笑しな事は無い。
けれども何か可笑しな感じがした。
邪院寺真。
そんなどこか可笑しな名前の彼を、僕は可笑しく思って居た。別に彼自身は何も可笑しくないのに。
どことなく可笑しく、どことなく歪んでいて、どことなく醜く、そしてどことなく黒い。
彼からそんな感じが漂っていた。
「ハハハ……。皆、可愛いね。ボクはこんな良い学校に転校出来て、本当に嬉しく思うよ」
その頃の僕は知らなかった。
邪院寺真がどう言う人物で、いったいどんなことをしようとしていたかなんて。




