波乱の転校生
4月中、『発砲魔』によって騒いでいた街もようやく平和が戻った。
ヴァンド・バトル卿は元の世界に戻り、彼がこの世界で借りていたアパートには別の住人、闇の銃妖精、アリア・ネバーランドダークが住みつく事になった。
そしてそれからはだいたい僕、尾張宣長の日常は平和そのものだった。
平日は幼馴染の江戸川甘露と竜騎士、龍王院竜禍。それから学校で出来た友達数人と授業を受けたり喋ったり。
休日は家で妹の尾張夕映と龍王院が喋って、僕の部屋には甘露、それから時たまだがアリアが遊びに来たりして。
まさしく、【青春】!
妹の中二キャラによって平和がどんどん侵された気になった気もしたが、ようやく青春と言う普通の人間が普通に受ける物を享受する事が出来る。
恋をしたり。
くだらない話で盛り上がったり。
それから、それから……。
やりたい事はやまほどある。最近は中二キャラも出て来てないし、出て来てる龍王院とアリアも大人しいし、これでやっと平和になる!
あれはそう思った矢先の出来事だった。
「――――――皆様、初めまして。父の転勤でこんな中途半端な時期の転校となりました、邪院寺真と言います。どうか皆様、よろしくお願いします」
ぺこり、とその少年は頭を下げた。
艶もありつつ乱雑に伸びた髪、女子の一番背の低い奴と同じくらい小柄な男としては未熟な体躯。何もかも見通すような蒼く澄んだ藍色の瞳に、腕には沢山の豪華なアクセサリーを付けている。
そんな少年はうちの高校の学生服の裾を大量に余らせながらも着ていて、先生の隣に立っていた。
子供に大人の服を着せたようなそんな少年、邪院寺真は一瞬にして女子の心を掴んだようで、女子達が
『可愛いー!』
と大きな声をあげた。
4月27日。
GWももうすぐと言う頃に、彼、邪院寺真はうちのクラスに転校してきた。




