物語はこれでお終い?
「この度は本当にありがとうございました。私からもありがたいと思います」
と、真っ黒な身体のエルフ、アリア・ネバーランドダークはぺこりと頭を下げた。そして腕を銃に変えていた。どうやら本性が黒い銃、『夢殺し』であるアリア・ネバーランドダークは腕を銃に変える事が出来るのだろう。
そしてそんな腕に変えた銃をアリア・ネバーランドダークはヴァンド・バトル卿へと向けていた。
「では、失礼します」
そしてアリア・ネバーランドダークはその銃を発射した。
乾いた音。
彼は音も無く倒れる。
そして彼は一瞬にして消えてしまっていた。
「これが『夢殺し』の力……」
いや、『夢殺し』と言うよりかはアリア・ネバーランドダークの力だろうか? そしてゆっくりと彼女はその銃口を自分の頭へと……って!
「何、してんだよ!」
僕はそう言って走って彼女の腕を掴む。
「お前、何しているのか分かっているのか!? お前の銃を撃てば……」
「えぇ、どうせ私も消えると言いたいのでしょう?」
「分かっているのならばどうしてやろうとしているんですか! 自ら死を選ぶのは間違っています!」
龍王院もそうやって止める。僕なんかと違ってしっかりと腕が動かないように手首に関節技を決める辺り流石だと思う。僕の場合はただ手首を持つだけが精一杯だったのだから。
「分かっているのでしょう? この世界に居る以上、きっと私はサー・ヴァント様のようになるに決まっているのです。この世界は私の世界ではありません。だから私はこの世界から消えた方が……。
それに別に死ぬと言う訳ではありません。私は元の世界に戻るだけで……」
「だったら何で震えてんだよ」
ビクッ! と彼女の肩が震える。そう、震えていた。僕の手が掴んでいる彼女の手首はプルプルと確実に振るえていた。
「仕方ないですよ。私だって自分で自分を撃つなんてした事無いですし……。自分がどうなるか分かりません。けど、だからと言ってあなた達に迷惑をかけるのは筋違いと言うか……」
あぁ、ようやく分かった。
彼女が夢の世界であった後、どうしてヴァンド・バトル卿を止めるのに積極的になったのか。
それは確かに龍王院の事もあったけれど、アリア・ネバーランドダークの事もあったんだ。自分では気づかなかったけれども、だからと言って彼女の事を気にしていない事では無かったんだ。
自分でも思って居ない内に。
自分でも分からない内に。
自分でも良く分からない内に。
彼女も助けようと思って居たのだろう。
……全く。こんなの、僕のキャラじゃないと言うのに。龍王院編で自分にも出来る事があると思ってしまったのがいけないのか? いや、別に悪い事ではないはずだ。そう、決して悪い事では。
「ならばしなくても良いと思うぞ」
「えっ……?」
「そんな事をしなくても良いから。行く所が無いのならば僕の家でも……」
「えっ……? いや、別にちゃんとヴァンド・バトル卿が借りていたアパートがあるので大丈夫なんですけれども……」
はっ? あるの?
そう言えば何気に龍王院もちゃんと家があるんだよな。どんな家か知らないけれども、少なくとも野宿している訳では無いだろうし。
神様、スゲー。
……って、別にそんな話をしたかった訳じゃない。話を戻そう。
「えっと……私。知らないでしょうけど、暗黒の銃妖精ですよ?」
「知ってる」
「ダークエルフですよ?」
「知ってる」
……と言うか、2つともあの妹から良く聞かされたから、いや聞き出したというべきか。ともかく聞いたから何の問題も無い。
「だから別にこの世界で普通に青春を送れば良い……と思う。別に元の世界に戻らなくたって、この世界でのんびりと暮らせば?」
「……………………。そうですね。わざわざリスクを侵す事もありません」
そう言って、彼女は腕を元のすべすべとした女の子っぽい腕に戻してくれた。そして僕に手を差し出す。
「この世界では初めまして、2つの世界でまた会いましたね。
私の名前は、アリア・ネバーランドダーク。とりあえずあなたの友達にしてください」
「あぁ。こちらこそ。僕の名前は尾張宣長。こちらこそだ」
と言って僕は彼女の手を取る。
こうして僕とアリア・ネバーランドダークは友達になったのであった。
……良し。これでとりあえずこれから別の中二キャラが現れても送り返せるな。
意外と俗物的な事も考えている僕であった。




