最終手段は料理でした
「何か言う事はあるか、夕映?」
「……ありません。完全に、私の説明不足です。すいませんでした。
だからさ、早く。早く。
その”お菓子”を私にください!」
と夕映は、僕が持っているクッキー(甘露お手製)を物欲しそうな目つきで見つめながらそう言う。
最終手段。
甘露のお菓子を使っての強請である。まぁ、あまり褒められた手では無いけれども。これはとても良く聞くからある意味最終手段として残している。
僕の幼馴染、江戸川甘露はこの妹と違って女らしさに溢れている。特に家事においては、ある意味僕の母親と同じレベル、いやそれ以上と言っても過言ではないほどである。何せこの中二病真っ盛りの妹、尾張夕映が甘露のお菓子を見るだけで、
「ハァハァ……。甘露お姉ちゃんの……料理」
……ご覧の有様である。いくらなんでもいきすぎだと思うかもしれないが、これくらい甘露の料理は美味しい。
中学生時代、彼女の作った料理を食べたクラスメイト達があまりの美味しさに、数週間の間彼女を崇拝していたくらいである。彼女は
『わ、わ、私はそんな存在じゃないよー。気にしなくて良いよー』
と言っていたくらいの謙遜ぶりだったけれども。
まぁ、とにかくそれくらい彼女の料理は凄い。
甘露には後で礼を言っておこう。甘露のおかげで、夕映からヴァンド・バトル卿とアリア・ネバーランドダークの事について聞く事が出来た。後で甘露からお礼を言っておこう。
彼女の事だから謙遜するとは思うけれども、礼は言うべきだろう。
何せ、
「あぁ、後さ。最後に言うとすれば、お兄ちゃん。
後、数週間ほどすればヴァンド・バトル卿は悪魔に変貌を遂げるだろうから早めに倒してね?」
と、クッキーを嬉しそうに頬張る夕映から明らかに大事そうな情報を聞く事が出来たんだから。
やっぱりまだ情報を隠し持っていたか……夕映。




