サー・ヴァンド卿とアリア・ネバーランドダーク
平行世界王都、パラレランド。
それがヴァンド・バトル卿の居た世界。
ここは空間と空間の狭間に世界が存在しているために空間のひずみが多く出現してしまい、その空間から多くの別世界の者が出て来る。そしてヴァンド・バトル卿は王に直属に仕える名門貴族である。ヴァンド・バトル卿には『夢殺し』と言う先祖代々続く銃を持っていた。
『夢殺し』、それは特殊な銃である。
その銃はこの世界と違う者を殺す銃。
この銃で撃たれた者は別世界の者の場合のみその世界から消滅する。消滅して元の世界へ戻る。
ヴァンド・バトル卿はその銃を使って別世界の者を殺す。そしてヴァンド・バトル卿は全てを殺して業績を上げていた。
その最中、彼は1人の女性に恋をした。
彼女の名前はニュートリウム。
ヴァンド・バトル卿の恋人で、彼女の手助けになって働いた麗しく美しい女性である。
ヴァンド・バトル卿はそんな自分を手伝ってくれる彼女の事を本気で愛していたし、ニュートリウムもそんな王国のために別世界の者を元の世界に戻す彼の事を本気で愛していた。2人とも、両想いで本当に愛し合っていた。
ある時、ヴァンド・バトル卿は仕事の最中、つまりはこの世界の者では無い者、――――――ネームレスと言う名前の怪物を殺すのに苦戦していた。その敵が無意味に、そして何の変哲も無く強すぎたからである。そしてその際、ヴァンド・バトル卿を助けるためにニュートリウムはそのネームレスを羽交い絞めにした。
「私が逃がさないようにする。だから撃って」
彼はそう言われて、彼女の事を心配せずにネームレスを撃つ事にした。
このヴァンド・バトル卿が持っている銃、『夢殺し』はこの世界の者では無い者を撃った場合は、元の世界に戻る。けれども、この世界の者の場合は何も起こらない。
故に――――――――ヴァンド・バトル卿は撃ったとしてもニュートリウムは傷つかずにネームレスは元の世界に戻るのだと。
だから、彼は『夢殺し』を放つ。
――――――――――そして、撃たれたネームレスとニュートリウムは元の世界へと戻って行く。
「な、なんだよ! なんでニュートリウムまで、帰るんですか! 可笑しいだろ、お前はこの世界の者で、俺の恋人で―――――――――」
「残念ながら違ったようですね」
と、『夢殺し』から声がする。そしてヴァント卿の手から『夢殺し』が離れて、『夢殺し』が消えて1人の黒いエルフが現れる。現れてヴァンド卿はお辞儀をする。
「こうして会うのは初めてですね、我がマスターのヴァンド卿様。
私の名前はアリア・ネバーランドダーク。その『夢殺し』に宿ったダークエルフです」
「な、何だってんだよ! 俺は、俺は! ニュートリウムの事を本気で愛していて!」
「愛していようといまいと関係ないんですよ。この私が宿った銃は、好き嫌いや姿や形状、そう言った些細な物を無視して、この世界で無い者ならば、全て元の世界に戻すのです。
―――――――――――マスターが愛してようと居ないと、関係は無いんです」
それを聞いて、ヴァンド卿は頭を押さえて悲鳴を上げる。
「ば、馬鹿な! 馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な……」
「それが事実なのです」
それを聞いてヴァンド卿は頭を押さえて、こういう。
「…………。……そうか。そうなんだ。お前さえいれば良い。お前が見極めてくれれば良いんだ。
もう俺は自身の目は信じられない。だったら、―――――――お前の攻撃が聞いた奴だけ攻撃してれば良いんだ。そうだ、そうだ。それが一番良いんだ。良いに違いない」
彼はそう言って、「ハハハ……」と笑う。
「や、やるぞ。もうやるぞ。俺は良いんだ。
……俺は悪くない。この世界の者でない以上、戻るのは仕方ないんだ」
彼はそう言って、王国の物を全員撃ちまくった。
結局、王国に居た人間の8割は―――――――――この世界の者では無い者だった。
彼はもうどうでも良かった。
撃てばいいんだ。
何せ相手はこの世界の者でないんだから。
戻せばいいんだ。撃って戻せばいいんだ。
そいつがどんな相手だろうと、倒せば良いんだ。
うん、それで良いんだ。




