夢の中での出会い
正直言って、僕、尾張宣長は訳が分からなかった。何せいきなり目が覚めたら見知らぬ女性、アリア・ネバーランドダークと言う真っ黒なエルフが居たのだからか。このような存在をなんと言うか、僕は知っている。
ダークエルフ。
妹曰く、エルフとは森の民であり、そしてエルフの多くは肌が異様なまでに白いのだと言う。そしてエルフは七つの大罪、つまり傲慢、暴食、嫉妬、強欲、怠惰、色欲、憤怒の7つのうち、3つ以上持ってしまうとこのように身体中が真っ黒になって、ダークエルフと言う悪しき存在になるのだと言う。
人種差別も甚だしいとは思うが、日本には日本のルールが、アメリカにはアメリカのルールがあるように、エルフにはエルフのルールがあるのだろう。と言うか、僕としては感情を持つだけで身体が黒く染まってしまう身体のメカニズムの方が問題だと思うんだが。
「ダークエルフ……ね。君は何か大罪を犯してしまったのかい?」
「……随分と詳しいね。この世界の者は、そう言った知識に疎いと思っていたんだけど」
確かに……。普通の人間はこんな知識、知らない。
「たまたまそう言ったのに詳しい知り合いが居るだけさ。その際にダークエルフと言うのはそう言う体質だと聞いた者でね」
「乙女の事情を詮索するのは、野暮だと言う事は知ってるかい?」
「そりゃ、すまなかった」
まぁ、そりゃあそうだよな。誰にだって知られたくない秘密の1つや2つ、あって当然である。だからこの質問はするべきでは無かった。本当に誤算である。
「ちょっと気になっただけさ。言いたくないのならば言わなくても構わない。
お詫びに何か1つ、そちらからも質問してくれて構わない」
「……君は親切な人だね。ボクのマスターにも見習ってほしいよ」
……マスター? 普通はそう言った単語なんて使うはずが無い。もしやこいつも龍王院と同じく、神様によってこちらの世界に出現させられた中二キャラか?
「まぁ、そんな君の真摯さにボクも答えよう。
確かにボクはダークエルフのような物だ。そして君の思っている通り、ボクは3つの大罪を犯してしまっている。ボクが犯してしまった大罪は、強欲、怠惰、そして虚飾の3つだよ」
「……虚飾?」
……あれ? 可笑しいな?
7つの大罪は、傲慢、暴食、嫉妬、強欲、怠惰、色欲、憤怒の7つのはず……。そこに虚飾なんて7つの大罪なんて物は無かったと思うんだけれども……。
「あれ? 君が言っていた7つの大罪とは、”8つの枢要罪”の事じゃないのかい?」
「8つの柩要罪?」
そう言えば、夕映がそんな事を言っていた気がするな。
確か7つの大罪は、昔はそのように言われていて傲慢、暴食、強欲、色欲、憤怒の6つに、虚飾と憂鬱の2つ、合計8つだったとされている。そして長い年月を経て、今のようになってしまったのだとされている。つまりはアリア・ネバーランドダークの居る世界だとそう言う世界なのか……。
まぁ、その辺りは夕映なりの世界観と言う事なのだろうか。
まぁ、良いんだけれども……。
「それで、ボクも応えたんだから君もボクの質問に答えてくれないかい?」
「……。あ、あぁ。そうだな。僕に答えられる範囲ならば、答えよう」
……じゃあ、聞きましょう。
そう言って、アリア・ネバーランドダークは1つの事を質問して来た。
「この世界は、正しい世界なのかい?」
「え? 正しい世界?
それって、どういう……」
――――――――その答えに答える前に、僕の意識は消えて行き、
――――――――白い世界から、僕は消えて行ったのであった。
その最後、真っ白な世界にて―――――――アリア・ネバーランドダークは小さくこう言った。
「――――――今度会う時は、絶対に質問に答えてくださいよね。尾張宣長君」




