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勇者が騙して何が悪い!

 カラフルデイズで数日を過ごしたエイネルとリンカードは服の洗濯や保存食の調達を終えると、到着した時のように朝早くから宿を出発して輝かしい都市を後にした。

 砂漠の延長線上の様に植物が殆ど生えていなかった西側に比べ、今エイネル達が出発した南側は対照的に草木が生い茂っており、正面には既に横一戦に広がる森の木々がその姿を現している。

 強い日差しが東から降り注ぐがリンカード達はカラフルデイズから出発した幌馬車に乗っており、彼らの他にも数名の乗客を乗せて平らに慣らされた道は不快な衝撃を感じさせない。

 最初は初めて乗った幌馬車にエイネルは感動していた様だが周りの誰もが本を読んだり眠ったりと静かにしているのを見て、リンカードの横で黙って座っていたが朝だと言うのに徐々に眠気に襲われて来た。

 穏やかな天気の下で御者は悠々と馬車を進め、彼の横で剣と拳銃を携帯する鎧も着ていない簡易装備の兵士が胡坐をかいてナイフを掌の上でクルクルと回している。


「ふわああ……ねえリンク、今度の街はどれぐらいで着くの?」

「途中で馬を交換したりもするが、今日中に到着できる距離だ。見えたと思うがこの先には『シルバル森林』が広がっていて、森に入ってほどなくしてそれほど大きくないが街がある」

「森の中の街か、楽しみだなぁ。そこではどんな美味しいものが食べれるんだろ、想像すると涎が出ちゃう」

「お前って、何でどこか行く度にとりあえず食べ物の期待をするんだ。別に食べるものに不自由してたわけじゃないんだろ、一応アレなんだから」


 他にも乗客がいるのでリンカードは魔王と言う単語を避け、エイネルもそれを分かっていて言葉を紡ぐ。


「うん、でもやっぱり行かなくちゃ食べれない物ってあると思う。パパも良く言ってたよ、『当地に向かい食してこそ、そこの食を知ることが出来る』って。それに食べ物って、旅の醍醐味じゃん」

「まあ俺も全部を知ってるけじゃないがある程度その土地のことを知っちまうと、そう言った好奇心ってのはどうしても湧いてこないもんだ」

「一人で行くのと二人で行くのでは、また旅の見え方は違うと思うよ。そう言えばリンクってずっと一人で旅をしてるの? その、途中で誰かと一緒だったことはないの?」

「いるにはいた。けど、なんて言うかな……目的が合わなかった。俺は純粋に生きるため、あいつは名誉のために旅をしていた」

「じゃあ、どっかで別れちゃったんだ」


 昔のことを思い出すリンカードは俯いたままエイネルの推測には答えず、縁に背を預けると両手を組んで瞳を閉じる。

 これはエイネルが最近知ったことなのだが、リンカードや答え難い質問や答えたくない時には寝た振りをしたり、全く関係ないことに注意を逸らしたり最悪逆切れ気味に会話を断ち切ろうとする癖があるように思えた。

 恐らく今回は後者。これ以上触れられたくない過去だからこそリンカードは黙ったわけであり、二人の関係が最悪の結末で幕を下ろした可能性も考慮してエイネルはそれ以上追求しない。

 幌馬車は緑豊かな草原から森の入口に近づくにつれて道が若干の凹凸を帯び始め、程良くリズミカルな自然のテンポがエイネルの眠気を誘い、ゆっくりと瞼が降りて目の前の景色が暗くなっていった。



◇ ◇ ◇



 馬車が止まる僅かな振動で目を覚ましたエイネルはリンカードの肩に預けていた頭を起こすと大きく背伸びをし、目を擦って周りを見るともう夜になったのかと間違えるほどに辺り一面は薄暗い。

 木々の隙間から零れる少量の太陽光が一筋の線となり立体感を思わせ、理屈では無理だと分かっていても触れるのではないかと思ったエイネルが少し身を乗り出して手を伸ばすが、当然ながら光を触ることは不可能。

 少しばかりガッカリして項垂れるエイネルは後ろから聞こえて来たほくそ笑む様な笑い声に反応して振り返ると、こんな薄暗い中で本を読んでいる男が眼鏡越しに横眼でエイネルのことを見つめていた。


「そんなに変だったかしら」

「いや、少し微笑ましかったからついて口が緩んでしまっただけさ。それに理屈や常識では分かっていても、自分自身で体験しなければ分からないことは多い。いや、世の中すべてそんなことだらけさ」


 穏やかな表情のままエイネルを見る彼は白のポロシャツに黒ネクタイ、ベージュ色のカーゴパンツを履いており、お世辞にも旅をするほど武芸に秀でていると言う見た目ではない。

 髪は薄い金髪で瞳の色も金色に輝いており、シャツの胸ポケットにサングラスを入れているスタイルはカルティナ王国で良く見るタイプの人間だ。


「旅人や勇者って感じじゃないね。もしかして、教師とか学者とかそういうタイプの人?」

「あぁ、僕はフリット・マルセリアス。地質研究学者だけど、歴史や科学にも興味津々だよ。今回は仕事でカラフルデイズに居てね、ようやく終わって帰れるってところさ」

「私はエイネル・レヴィ・シモン。学者さんなんだ、パパに聞いてたのとは随分と印象が違うね」

「お父さんにはどんな風に聞かされてたんだい」

「えーっとね、白い服を着て目の下は隈だらけで三色全部挽肉でも食べてるんじゃないかってほど不健康、ガリガリに痩せてる人が多くて今にも倒せそうな人種だって教えられた」

「まあ、部分的には合っているけど今の時代はそんな人は稀だよ。君のお父さん、随分と偏見が強かったんじゃないのかい」


 さすがにストレート過ぎる酷評にフリットは少し表情を顰めたが、エイネルが慌てて「それでも頭の良い天才が多かった」っと謝りながら付け加えると機嫌を直したのか先ほどの様な穏やかな表情に戻る。

 歴史や科学に興味があることは別にして地質学者であるはずのフリットがどうしてカラフルデイズにいたのかエイネルは少し気になったが、教えてもいいことならフリットが自ら喋りそうだったので先ほどのリンカード同様余計な詮索はしない。


「エイネルちゃんは今こうして旅をして、僕と言う学者に触れることでお父さんから教わった知識を上書きした。それでいいのさ、知識は常に上書きされるものさ」

「良く分からないけど、学んだってことで良いんだよね。あぁもう一つ思い出した。『学者は簡単なことを回りくどく表現する』って」

「あはは、それは結構的を射ているね。分からないことを分からない人に分かるように伝えるって言うのは難しい、全容が分からずとも概要が分かるように説明できる人は凄いって僕は思うよ」

「フリットさんはどうして地質学者になろうと思ったの? もしよかったら、聞かせてもらっていいかな」

「特にこれと言った理由はないね。強いて言うなら、大学でたまたま取った地質学の成績が良かったからってところ。仕事にしてみると中々面白くて、当たりだったって今は思っている。エイネルちゃんはどうして旅をしているの? もしよかったら、聞かせてもらえるかな」

「私は小さい時から家にずっといて、外に出る機会が無かった。でもそんな私の背中を押してくれる人がいた。私は世界を見て回りたい、ただそれだけ」

「いや、素晴らしいね。外に対する憧れを抱き、危険だが旅をして世界を見ようとするその行動力。うちの学生にも分けて欲しいね、最近の子はインドア派が多いから」


 どうやら学者であると同時に教鞭も振るっているらしく、フリットはエイネルの旅の理由に素直に感心しながらも小さく愚痴を漏らす。

 馬の交換が終わったのか御者が人数を確認してから馬車の周りを警備していた兵士を呼び戻し、彼が御者の横に座ったのを確認してから再び馬車は目的の街を目指して出発した。

 先ほどまでは寝ていて気付かなかったがしっかりと舗装されていない山道は予想以上に凸凹していて揺れが激しく、とてもじゃないが先ほどの様にぐっすり眠る気にはなれない。

 エイネルは風に煽られて揺れる木々のさざめきや鳥達の囀りに耳を傾け、同じく先ほどまで読んでいたであろう本を閉じたフリットは絡め取る様な視線でリンカードとエイネルをじーっと観察する。

 ただでさえ人より視覚と聴覚などが優れているエイネルだが第六感も相当なもので、フリットが俯きながらも何気無しに自分達を見ていることを察して彼の方に振り向いた。


「そんなに私達って見てて楽しい?」

「ありゃ、一応ばれないように見てたつもりなんだけどな。そうだね、なんて言うか不思議な組み合わせだ。そっちの男の人は勇者だと思うけど、エイネルちゃんも剣を持っているところを見ると勇者なのかな」

「私は魔お……自称勇者だよ。彼も自称勇者、私よりずっと長く旅をしてる」


 自称勇者――この単語が出た瞬間にフリットの表情に一瞬険しさの様なものが宿った気がしたが、エイネルが細かくそれを察するよりも早く彼の感情は表情から消えていた。

 フリットが軽く「そうなんだ」っとだけ答えると会話が終了し、張り付くような視線は感じなくなった代わりにフリットの表情が些か鋭さを増したように感じられる。


「フリットさんって、自称勇者が嫌いなんだね。がっくし」

「顔に出てたかな。勿論自称勇者が全員嫌いなわけじゃないんだけど、色々とあってどうしても好きになれない。でもエイネルちゃんは嫌いではないよ、好きでもないけど」

「それで良いと思うぞ。自称勇者云々の前に出会ったばかりの相手をいきなり好き嫌いで判断しろと言うのは、無理ってものだよ」

「だね。君は子どもなのに随分と達観してる。さっき僕が言ったことだけど、僕も少しずつ自称勇者に関する知識を上書きしていくとしよう。君はその変化の一部だ、隣の彼がどうかは知らないけどね」

「リンクは良い人だよ。ちょっと厳つかったり金に五月蠅かったりするけどさ、それでもやっぱり良い人なの。本当だよ」

「僕には『君の眼を見れば分かる』なんて小説染みた根拠なしの言葉を言うつもりはないけど、君の表情を見れば何となく分かる。良い信頼関係だ。あの時もし、頼んでいたのが君たちだったなら、あるいは……」

「あの時って?」


 エイネルが疑問に思ったことを口にした直後、突然馬車が大きく振動しながら落下して通路に作られていた落とし穴に馬を残してすっぽりと嵌ってしまった。

 眠っていた乗客達は一斉にして目を覚まし、頭や腰を打った人達は痛そうにその箇所を手で抑える。

 明らかに自然の段差による振動じゃないことに気付いたエイネルは耳を澄ませ外の様子を窺うと、茂みを掻き分ける大型動物――勿論人間だ――の気配が複数で馬車の周りを一斉に包囲。

 馬車が穴に落ちたことで無理やり後ろに引っ張られた馬が苦しそうに悲鳴を上げて暴れながら横転し、御者の横に座っていた兵士は剣を抜くと逸早く穴から抜け出したが両足が左右から放たれた矢によって撃ち抜かれる。

 続いて御者が脱出したが兵士の苦悶の悲鳴に驚いて手綱に足が絡まってしまい、倒れたところを茂みから飛び出して来た大柄の男が掴み上げて首にナイフを突き付けた。


「おい、こいつか?」

「御者だよ馬鹿。奴はもっと貧弱そうな服装だ、とりあえず面倒だから乗客全員を降ろせ」


 悲鳴を上げそうになった御者を筋肉隆々の男はナイフを首に軽く押しつけて黙らせ、倒れていた兵士が矢を折って強引に足から引き抜くが別の男に木の棒で後頭部を殴られ気を失う。

 幌で外の様子が全く確認できないが何者かの襲撃を受けたことは確かであり、乗客が一斉に騒ぎ始めるとようやく目を覚ましたリンカードが大きく欠伸をして周りを確認した。


「なんだ、もうトライセンターに着いたのか。随分と賑やかなことだ」

「呑気なこと言ってる場合じゃないよリンク。この馬車、何でか分からないけど強襲された。聞こえた声は二人だけど気配は五人分、誰か探してるみたい」

「フリット・マルセリアス! この馬車に乗っていることは確認済みだ、大人しく出てくるが良い!」


 騒ぐ乗客を制する大声で首謀者だと思われる男が叫び、いきなり名指しで呼ばれたフリットは恐怖と驚きの表情を浮かべながら身を低くして口を塞ぐ。


「貴様のせいで我々のボスが魔石の取り扱いを行ったなどと言う不名誉な罪を負わされ、バックフォースの手によって投獄された。我らは彼の恨みを晴らすべく立ち上がった者達である。貴様が大人しく出て来るなら、ほかの乗客の命は保証する。だが貴様が名乗り出なければ、無差別に幌目掛けて剣を刺すことになるだろう!」


 男の声と同時に乗客はパニックになると数は少ないが我先にと馬車の後部を目指し出ようとするが、それよりも槍を持った二人の男が出口を塞ぐように立ち塞がった。

 割を綿密に計画された計画としっかりとした指揮系統による動き、一介の山賊やゴロツキよりも軍隊と呼ぶに近い行動で馬車はあっと言う間に制圧される。

 恐らく名乗り出れば惨殺、少なくともリンチは免れないであろう状況にフリットは顔面を蒼白させながら必死に息を殺し、戸惑いと静寂が場を支配すると一本の剣が突如幌を突き破って鋭い輝きを乗客の前に見せつけた。

 痺れを切らした犯人達は笑いながら幌を外側から剣で突き刺し、死を覚悟するように両手を合わせる人々をリンカードは頭を抑えて無理やり地面に叩き付けた。

 無意味に立っていてはそれこそ格好の的、確実に避けられるとは言わないが少なくとも立っているよりは剣のきまぐれに貫かれる可能性は格段に低い。

 それでも立ち上がろうとする乗客がいたのでリンカードは彼の頭を踏みつけると強引だが気を失わせ、その光景を見た乗客がリンカードから逃げようとしたが次々と頭を殴って気を失わせる。


「黙ってしゃがんでればいいのによ、手間掛けさせやがる」

「相変わらず手荒いね、リンクって」

「それでフリット・マルセリアスってのはどいつだ? そいつを引き渡せば奴さん方は帰ってくれるんだろ。だったら引き渡すぞ。おら、フリットってのはどいつだ。お前か、それともお前か?」

「い、いや僕はその違う! 断じてフリット・マルセリアスなんかじゃない! そもそも馬車にそんな人が乗ってない可能性だって――」

「可能性云々はどうでも良いんだよ! フリットじゃないならテメーがフリットってことで良い、簡単だろうが。てかお前嘘が下手なんだよ、明らかに動揺しまくりやがって」

「ちょっとリンク! 乱暴は良くないって。大体、狭いんだから暴れないでよ!」

「や、止めてくれ! 放してくれ!」


 馬車の内部に響き渡る不自然な騒がしさに剣を刺していた男達が妙な面持ちを浮かべ、馬車の出入り口を塞いでいた男二人も中で行われている暴行に顔を顰める。

 やがて馬車の後方からぐったりとしたフリットを肩に担いだリンカードが姿を現し、その後ろに不安な表情を浮かべるエイネルが続く。


「お前らの首謀者はどいつだ。お望み通り、フリット・マルセリアスを連れて来てやったぜ」

「私がそうだ。態々連れて来てくれて礼を言おう、これで君達の命は保証する」

「おっとただでくれてやるとは言っていない。お前らが殺そうとしている男、こいつのせいで俺は安眠を妨げられたんだ。俺にもこいつに暴行する権利、もっと言えば殺す権利がある。ただで渡すってのは納得いかないな」

「テメー! せっかく無傷で見逃してやるって言ってるのに、なんてふてぶてしい野郎だ!」


 ふてぶてしいなど本来山賊のような真似事をしている彼らが言えることではないのだが、今回に限ってはリンカードの態度があまりにも大胆不敵なので誰もが心の中で『良く言った!』と彼に称賛を贈った。

 しかしフリットを全く赤の他人が、それこそかなりどうでも良い理由で殺してしまったのではプライドにも関わるので、首謀者の男はため息交じりにリンカードに視線を送る。


「では、我々はどうすれば良いのだ。目的は何だ、金か? それとも武器か?」

「お前達がこいつを引き渡して俺達を無事に返す保証が無い。戦力にならない人質も、まだ馬車に沢山いる」

「なるほど、身の安全が確保されるまで交渉には応じないと言う訳か」

「そう言う訳でもない。俺はこいつを渡す代わりに、アンタらは御者と兵士を返してくれればそれで良い。ついでに有り金を全部俺に渡せ」

「リンク、盗人猛々しいってレベルを越えてるよ。さすがにその要求はどうかと思う。やれやれ」

「有り金は無理だが前半の交渉は飲もう。おい、御者と兵士を連れて来い」


 首謀者の男の指示に従って筋肉隆々の男が御者と気を失っている兵士を前に運び、リンカードも一歩二歩と前に出て抱えていたフリットを地面に荒々しく放り投げる。


「持って行けよ。御者と兵士は確かに返してもらったぜ」


 先ほどまで御者と兵士を抱えていた男が地面に倒れるフリットを拾い上げようとしたその直後、リンカードはその男の顔を靴の裏で思い切り蹴り飛ばし、交渉が終わったことに安心し切っていた男達が一斉に驚いて肩を震わせた。

 男を蹴った反動で後ろに下がったリンカードは担いでいた御者と兵士を幌に空いた剣の穴から無理やり中に押し込み、気を失っていたと思われたフリットも素早く立ち上がって走り出す。

 フリットが穴から幌馬車の中に入ると男達が続けて雪崩れ込もうとしたがエイネルが構えていた剣を地面に刺すと、馬車全体を覆うように巨大な氷の塊が生まれ荒れ狂う男達と振り抜かれた金属性の武器を尽く弾き返して寄せ付けない。

 侵入は無理だと悟った男達の怒りの視線は自然とリンカードとエイネルに向き、二人は得物を構えてそれぞれ背を預けるように反対の方向を向く。


「貴様、黙って交渉していれば事無きを得たものを」

「さすがは学者様だけに随分と金の払いが良くてな、カラフルデイズでも儲けたし今の俺は気分が悪くない。お前らが大人しく退くって言うなら、見逃してやってもいいぞ」

「馬鹿が、見逃してもらうことを懇願するべきがどちらかも分からんようだな。我らを欺いた罪、神に祈りながら死をもって償え」


 首謀者の男も合わせて四人の屈強な男が剣や槍を持ってリンカードとエイネルを囲い、蹴り飛ばされた男も鼻血を流しつつも武器を構えてその輪に加わった。


「お主たちのボスが魔石の取り引きを本当にしていたかは分からないが、それで単純に相手を殺すと言うのは気に入らない。フリットは護らせてもらう」

「お前らを欺いた罪か……悪いが俺は無神論者でな、神に祈る様なことはしない。大体よ、勇者が騙して何が悪いってんだ!」


魔王と自称勇者のラジオステーション


『カラフルデイズと魔族について』


<<マイク:ON>>

エイネル「さて、今回も始まるよ『まおステ』。今回はシリーズで初めて七話も使った都市『カラフルデイズ』について説明するよ」

リンカード「カラフルデイズはかつて『ディッゴ』と呼ばれていた都市で、元々は民族衣装の染色などを得意としていた街だったが、若者の感覚離れもあって今では流行と芸術の最先端の都市に成長した」

エイネル「地図を見る限り位置的にはマウントデザートの東で、王都カルティネリアから見たら西北西だね」

リンカード「カラフルデイズで人気になったアーティストや芸能人は良く首都のカルティネリアに行き、ファンションやミュージックの最先端を王都に伝える」

エイネル「ソフィア達がカルティネリアに行くのも、人気だからお呼ばれしたって感じなんだね」

リンカード「そう言うことだ。カラフルデイズの芸術性が生み出す経済効果は凄くてな、最近では録音技術も上がって来ているらしい。まあ俺は音痴だから正直そこまで興味はないけどな」

エイネル「ふーん、リンクって音痴だったんだ。でもさ、音痴でも音楽を楽しめる人は沢山いるし、単純にリンクが音楽に無頓着なだけじゃないかなそれ」

リンカード「……え、そう言うものなのか? あ、あー時間だ時間。ここでCMだ」


<<CM中>>

エイネル「リンカードってもしかして、他人の歌が上手いと嫉妬するタイプ?」

リンカード「なわけあるか。単純に昔音楽の授業で音痴過ぎて、馬鹿にされたから嫌いになっただけだ。ちなみにその後は口パクだったな」

エイネル「練習すれば音痴なりに音程を外さないように努力することはできるはずだよ。ジュルジェだって凄い音痴だったけど、私が指導しまくったら上手くなったよ」

リンカード「誰だよジュル……あぁ、お前の部下か。可哀想に、上手い奴に言いたい放題言われたんだな」

エイネル「そうだ! せっかくだからリンクにも私が教えてあげ――」

リンカード「結構だ! 正直お前が魔王とは言え、こんな外見がガキの奴に教えられたら、俺のプライドが傷つくっての」

エイネル「そ、そう言うものなの? ふぅん、ジュルジェは喜んでたのに……」

スタッフ「CM終わります、準備して下さい」

エイネル「あ、はーい!」


<<マイク:ON>>

リンカード「カラフルデイズだが一般的に明るい都市なだけに、裏では結構黒いところもある。旅行で行く時は注意が必要だ」

エイネル「そうなの? あぁそう言えば、最初にリンクと言った裏路地も随分と治安が悪そうだったね」

リンカード「それほど複雑ではないが裏では裏のルールがある。俺達は守っていたから良いが、変に裏の世界を詮索しようとしたり警戒心がなさ過ぎるとカモられる。裏通りには基本、極力行かない方が良い」

エイネル「そうなんだ。夜ですら厄介なほど明るい都市だったのに、治安は絶対に安全って程じゃないんだね。もしかして危険なこともやってるのかな」

リンカード「本編にもあった様に魔石の裏取引も平然と行われることすらある。あとはちょっと俗な話だが、アイドルやアーティストが多いため人気が出ない奴らが裏商売をしている」

エイネル「裏商売?」

リンカード「簡単に言えば体を売ったり、違法な薬品を売ったりしてる。煌びやかな都市なだけに競争率も激しくて、全員が全員幸せを掴めるわけじゃない」

エイネル「それはどこでも同じだよね。望んでも手に入らないってものは、沢山あるよ。人間は寿命が短いから一度諦めると、リスタートする時間が中々無いのかな」

リンカード「それもあるだろうな。ちなみにエイネルの寿命ってどれぐらいなんだ?」

エイネル「ちょっとマイク切って」


<<マイク:OFF>>

リンカード「どうしたんだ?」

エイネル「リンク! 女性に年齢を聞いたり寿命を聞くのはあまり良くないって、パパが言ってたよ」

リンカード「いや、俺だって普段はそんなストレートには聞かないぞ? あいや、面倒臭かったら聞くけどさ。それにお前は魔王だろうが、寿命が気になるのは仕方ないだろ。人間界の治安にも関わるし」

エイネル「それは……そうだけどさ、私だって女の子なんだから、気にはするよ」

リンカード「それは悪かった。と言うか魔族にも性別ってあるんだな、てっきり漫画の魔族みたいに口から卵吐いて産むから性別の概念はないと思ったんだけど」

エイネル「いやいや、私はどこのナ○ック星人よ。でも確かに人間で言う交尾はしないわね」

リンカード「ほう、その辺をオンエアーで教えて欲しいもんだ。もうマイク付けるぞ、いいな」

エイネル「うん。まぁ、専門家なら知ってることだから良いかな」


<<マイク:ON>>

リンカード「それで、改めて聞くが魔王の寿命ってのはどれぐらいだ」

エイネル「うーん大体3000から4000歳かな。この辺は人間で言う誤差みたいなものだし、分からない」

リンカード「……1000歳の誤差ってなんだよ。それで、やっぱり子孫は口から卵なのか」

エイネル「だから私はピッ○ロ大魔王じゃないって! 下級の魔族は大地のエネルギーと生命……まあ殆ど人間ね、その邪気から生まれるの」

リンカード「なるほど、人間がいる限り魔物が消えないってのはそのせいか。それじゃあ上級の魔物は違うんだな」

エイネル「うん。私たちみたいに上級な魔族は、1000歳以上になると一度だけ、自分のエレメントを分離させて子孫をつくることが出来るの。まあノーライトは少し違うけど、普通は一人っ子よ」

リンカード「だから魔王は通常一人の子しか残せないのか。ノーライトは三つ子ってのは勇者界でも知られていることだが、一説には人間の女を使ったって言われている」

エイネル「そうだね。もっと話すことはあるけど、そろそろ時間みたい。また今度も聞いてね! パーソナリティーは私エイネルと、自称勇者のリンクでした! それでは、『魔王が旅して』!」

リンカード「何が悪い! それじゃあ、また来週」


<<収録終了後>>

エイネル「ところでリンク、本当に歌の練習しなくていいの?」

リンカード「しなくていい。そんなことより、今思ったんだがこのコーナー……何か、欠けてると思わないか」

エイネル「欠けてる?」

リンカード「ゲストだ。毎度毎度俺達二人で、この先大丈夫だとは思うが新鮮さに欠ける」

エイネル「なるほど、そうだね。今度上の人に相談してみようか!」

リンカード「さて、じゃあ帰るか。そう言えばソフィアから招待状が届いてたぞ。カルティネリアでライブをするから、それの特等席チケットだ」

エイネル「本当に! 行こう行こう! すぐに行こう! レッツゴー!」

リンカード「やれやれ、本当に忙しい奴だ」



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