ある雨の日
金曜日…今日でやっと長かった一週間が終わる。
家に居るからといって然して関係ないのだが。
キーンコーンカーンコーン・・・・
俺の望んでいたチャイムの音が学校中に鳴り響いた。
よし!家に帰ろうとバッグを持った瞬間、安藤に声をかけられた。
「極導、お前今日日直だろう?」
「へ?そうだけど?」
唐突な安藤の言葉に少し戸惑った。そして嫌な予感がした。
「今日は放課後掃除の日だから図書室に掃除にいってくれ。」
・・・・・・・・なんで俺だけが・・・・・・・・
何て言える立場ではない!それは俺が一番よく知ってる。
だって今日何もしてなかったから。おんなじ日直の優等生・五島にぜーんぶおしつけたから。
安藤のやつ、ちゃんと見てやがったのか…。
雨のせいで廊下がすべる。図書室は校舎の外れにあるからなお更だ。
雨で湿った空気が灰を湿らす。
図書室に入ると湿気でもんわりとした空間があった。
驚くほど静かだ。俺しかいない。
サボリたい衝動にかられたが、やることもないのでまじめに掃除をする事にした。
しかしホウキが見当たらない。
その前に、掃除のロッカーが見付からない。
この高校の図書室は結構大きくて有名で、一度も入ったことのない俺がいきなり掃除をしようというのも無理な話なのだ。
「あーーホウキどこだよーー」
ゴトンッ
俺がホウキを捜し歩いていると、隣の本棚の向こう側からにぶい音がした。
「…誰かいるのか?」
俺の声は静かに響いた。寒気を覚えた。だって此処には俺以外いないはずだから。
「誰だ!!!!!!」
自分の弱みを見せないように大きな声で叫んだ。
そして本棚の向こう側にいる影をつかんだ!
・・・・・のだが。
「これ…ホウキ…」
そういって一本のホウキを俺に渡したのは、園田ユミ。その人だった。
目が点になっている俺を不思議そうに見る園田。
何かいわなければ!
「あ…ありがとう!!」
力いっぱい言った言葉がこれ。格好悪。いくつだよ…
「うん」
クスッっと笑って、彼女は言った。
昨日とは別人のように、フンワリとした雰囲気だった。
どちらが本当の彼女なんだろう?
「園田、なんで居んの?」
率直な疑問をぶつけてみる事にした。
「いや…別に」
ハッとした様に園田の表情が少し固くなった事に気づいた。
どうしたんだろう?
チャンララ〜ン♪ダダーーーーン♪
そう思った瞬間に園田の携帯がなった。
俺から目を逸らす様に園田はいそいそと図書室を出て行った。
園田の態度の変化に違和感を感じた。
少し、何かに怯える様な目をしていたのだ。
彼女の足音が聞こえなくなると雨の音だけが寂しく鳴っていた。