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体育

白い肌に赤い頬が映える。黒い瞳には確かな光が宿っている。

はっきりと瞳を見たことはないけれど。


あの日俺にでっかい雷をお見舞いした少女、園田ユミ。

俺の遠く前方に座る、彼女の瞳には何が映っているんだろうなぁ。

…なんてストーカーじみたことを思う。今日この頃。


園田がきて一週間。

あの日から俺のあたまんなかは園田の事でいっぱいですよ。

そこは否定しない。初めての感情に戸惑ってはいるけど。

だけど今俺が進んでサッカーボールを追っているのは決して

園田の気を引きたいとかそんなんじゃぁ…ない。

うん。たまには一生懸命体育の授業も受けるのもいいかな〜と思っただけで。

おんなじグラウンドにいる園田の注目を浴びたいとかそんな下心だけで動かないよ。

あの日から…というか俺は園田と一度も言葉を交わしていない。

テニスラケットを握る園田が見える。周りの女子と楽しそうに談笑していた。

(クラスの奴とも馴染めたんだな…。)


「光いいいいいいいい!!!!!!!!!!」


野太い声が俺の名を呼ぶのでハッと我にかえった。

「てめぇこらぁ!!!!珍しくやる気だしたと思ったら、いつまでボウっとしてるつもりだぁぁぁ!!」

必要以上に大きな声で俺を呼ぶのはサッカー部の太田だ。

ふと向こうを見るとボールが転がっていた。

「ああ…取ればいいのね?」

気の抜けた質問をすると太田のダルマの様な顔がさらにダルマらしくなった。

「今同点なんだぞぉ!?チャンスは生かすんだろうがぁあぁぁ!!??」

俺はコイツが好きじゃない。そもそも熱血タイプは苦手だ。

(たかがクラス対抗のサッカーゲームだろうがぁー。)

そんな事を思いながらボールを追う。

案外早く転がるボール。後少しと思いながら追い上げるも先へ先へと行ってしまう。

1メートルほどの間隔をうまく保って転がるボール。

俺はヤッキになっていた。何だかボールに踊らされてる様な気がして。


コツンッ・・・


気がつくと、ボールは止まっていた。いや止められていた。

園田ユミによって。俺は驚いた。何故男子の方に園田が居るのかが理解できなかったんだ。

でもすぐに理解した。

ボールが女子の方に転がってきたんだった。あんなに大きく聞こえていた太田の声が犬の遠吠えの様に聞こえていた。

足元に転がってきたボールを園田が拾った。

俺の心臓は大変な騒ぎだった。ボールを追いかけていたせいか心拍数が異常だ。

園田の腕が俺の方に伸びてきた。そしてボールを俺の顔に近づけて一言いったんだ。



―俺は園田の声をよく知らない。

―俺は園田の事を全く知らない。

―ただ端麗に整った顔だけを知っている。

―中身なんか知らない。

―もしもこの気持ちが恋なのであれば、俺は園田の顔に恋をしていたんだ。

―――-だからギャップに驚くことはない。顔と性格が全く一致するなんて事ありえないんだから。



「何?ジロジロ見ないでくれる?」

「あ!ゴメン!」




…とっさに謝ってしまった。俺にボールを渡すと園田は何もなかったように笑顔で女子のもとに帰っていった。さっきの声が嘘の様に。さっきの顔が嘘の様に。明るく、魅力的な表情で。

何だかショックだった。

何でだろう。俺嫌われてる??

そんな事ばかり考えているうちに、チャイムが鳴った。


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