出会い
「極導光」
朝テストに書いた自分の名前を見て、俺は少し居心地の悪さを感じる。
そして心の中でつぶやいてみる。
(ごくどうひかり…)
やはり違和感を感じる。
この教室で自分の名前に違和感を感じているのは、俺ぐらいのものだろう。
クラスメートが必死に朝テストにしゃぶりついている中で、俺だけが上の空であった。
その間にも時間は過ぎる。あと5分くらいで担任の安藤から終了の声がかかる。
別にテストが嫌いなわけじゃない。勉強はそこそこできる。
ケンカも得意だ。運動神経は良い方だけど運動系の部活に入るつもりもない。だってしんどいし…。
「お前はやればできる」と何度教師から言われたことか…。
「やる気をだせ」とも言われたっけか。「やる気」なんて人生の中で一度も出したことがない(苦笑
「やる気」を出させる何かが俺には無い。そう。皆無なんだ!!!
「しゅうりょ〜〜う!!!」
静寂を斬る様に安藤の声が教室中に響いた。
しまった。名前しか書いてない。
「光ー。お前名前しか書いてねぇじゃん」
俺の独り言をさえぎったのは隣の席の桂智弘だ。
「あ?うるせぇよ」
怪訝そうに繭を上につり上げる。大半の奴は大体ビビッて黙るのだが(俺の柄の悪さも加算されてなのか)桂にはまるっきり通用しない。
「怒んなよ〜。何?分かんなかったの?いや、お前頭いいかんな。女のことでも考えてたんだろ?」
それどころか調子こいて更に話し掛けてくる。
「別に」
「あっそ」
俺のノリの悪さに見切りをつけた様に桂は他の奴に話し掛けに言った。
「女ねぇ〜」
ため息とともに独り言をもらしてしまった。
高2となれば彼女の一人は居て、文化祭などに心を躍らせるものなのだろうか。
あいにく俺の初恋はまだであり、彼女も居ない。親友とやらも居ない。
こう思うと何となく寂しい。
(俺は死ぬまでこんな人生なのだろうか)
絶望にも似た想いを抱いているとき回収したテストを数え終えた安藤が口を開いた。
「今日は転校生を紹介するぞー。園田ー入ってこーい」
(転校生??そういえば昨日言ってたな。まぁ俺には関係無いなー)
その転校生を見るまで俺はそう思っていた。
ガラッ…
戸を開ける音と共に教室に入ってきた女の子に俺は……心を奪われるとはこういう事をいうのだろうか…今までに感じたことのないモノを感じた。
彼女の名前は園田ユミ。
俺の心に稲妻は落ちたのであった。