きみの生涯年収見ぬいちゃう
あたしに名前は金山銭子14才。
中2だよ。
お金が大好きなのでカネゴンって呼ばれてる。
お金があればおいしいものいっぱい食べられるしおしゃれな服も買えるし大きな家にも住める。
小学生の頃から新聞配達のアルバイトをして、そのお金で食べたいものや買いたいものを買ってきた。
とはいえ時給で働いたり、サラリーマンでは稼げるお金に限界がある。
大企業に勤めたりやり手の弁護士ならいっぱい稼げるんだろうけど、あたしは勉強は苦手だ。
美少女だけどアイドル戦国時代のさっこんアイドルになっても大成功する可能性は低い。
あたしのスペックを俯瞰すれば上振れしても生涯年収は3億円といったところか。
正直、ぜんぜん足りない。
こんなんじゃぜいたくな暮らしはできない。
遊んで暮らせない。
起業する度胸も才覚もないしどうしたものか。
他力本願寺のあたしはお金持ちの男の子と結婚することにした。
それが1番てっとりばやい。
将来、有望そうな男の子と付き合って結婚してもらおう。
将来、大谷翔平になりそうな運動神経が優れた男の子やビル・ゲイツになりそうな頭脳が優れた男の子に目をつける。いや、でも将来性はあっても確実に成功してお金持ちになるとは限らないよなぁ。
確実性は担保されて欲しい。
生涯年収の見える眼でもあればいいんだけどなぁ。
あたしは世界中のお金持ちを研究することにした。
もともと人間観察は得意だ。
人を見たら泥棒だと思え、が座右の銘だし。
ちょうど夏休みだから自由研究だね。
誰にも成果は発表しないけど。
ゲームと漫画も我慢してお金持ちの特徴、思想、価値観を徹底分析する。
その結果、ついに念願の生涯年収が見える眼を手に入れた!
お金持ちになる人間の相とお金持ちになる者だけが発する独特のオーラを見極めることで不可能を可能にした。
人間の金銭的な価値がわかる眼だから金眼と名付けよう。
特別な力を周囲に誇示するために黄金のカラコンも装着する。
まずは家族から鑑定した。
父は生涯年収3億。ママは1億だ。
平均的な一般家庭はこんなもんだね。
あたし?
鏡で確認したら6億だったよ。
お金大好きだからね。
飲食店でも開業して死ぬまで働き続けるのだろう。
道ゆく人たちも鑑定していく。
1億、2億、3000万、3億、3億、10億!?
お金持ってなさそうなくたびれおじいさんがいがいにお金持ちだ。
人は見た目によらない。
さて、こんな感じで学校のみんなも鑑定してあげよう♩
あたしは早朝に登校して校門の前でみんなを待ち伏せる。
「カネゴンおはよー。なにしてるの?」
「おはよー。学校のみんなにあいさつするチャレンジだよ」
「へーえらいね」
あいさつしながら頭上に浮かぶ生涯年収をチェックする。
2億円。まあまあだね。
こんな調子で全校生徒と教師の年収をチェックした。
1番高いのは1000億円だ。
科学部の男子生徒。一年後輩だ。
さえない感じだけど将来性が高い。
きっと人類が進歩するような大発明をするに違いない。
年下だしおとなしそうだからお尻に敷けそう。
この子でもいいな。
あとはサッカー部のチャラい先輩が300億だ。
将来、すごいサッカー選手になるんだろうな。
すでにプロのスカウトが何人も試合を観に来てるってウワサだ。
複数のガールフレンドがいるみたいだから勝ち抜くのは大変そう。
あたしあんまり媚びるの上手くないんだよねぇ。
上目遣いとかもじもじしたり。
作ったお弁当や焼いたクッキーはプレゼントするより販売するか自分で食べたい。
これはいさぎよく撤退したほうがいいかも。
競争率が低くて勝ち目の高い恋愛をしたい。
ほかにも男子の生涯年収を上回る生徒が何人かいたけど、この2人が頭ひとつ抜けてる。
科学部の子に決めよう。
名前はアトム。名前の由来はきっと科学の子からだね。
科学部の部室に乗り込んだ。
「やあやあこんにちは。ロボット工作してるっていうからぜひ見学させていただきたい」
「ご自由にどうぞ」
科学部の部員たちは熱心に動物型のロボットを作っていた。
あたしはアトムくんが作っている猫のロボットに注目する。
「近い将来、これがドラえもんになるんだね」
「あはは。可能性はゼロじゃないですね」
「触っていいかい?」
「もちろん」
猫の頭をなでる。
「みゃー♩」
「おっ。かわいいなぁ。飼いたい」
「首の下をなでてみてください」
首の下をなでる。
「ゴロにゃ~ん♩」
「すごい芸が細かい!」
「ユーザーによろこんでもらいたいんです」
「さすがだね」
ここで衝撃の事実に気づいた。
あたしが横に並ぶとアトムくんの生涯年収が著しく下がる。
1000億円が1億円だ!
この現象はいったい?
たぶん相性が悪いんだろうなぁ。
あたしがそばにいると研究の邪魔になり研究に没頭できなのだろう。
まさか生涯年収にパートナーとの相性まで関係するとは。
あたりまえか。
「色をつけてくれるならやっぱりピンクがいいなぁ。現実に存在しない色の猫を飼いたい」
「女の子はピンク好きですよね」
「ピンクにもいろんな種類があるからね。あたしは桜色が好き」
「ボクはショッキングピンクが好きだなぁ」
「それも好き。いろんなピンク色をとりそろえてほしい」
「わかりました。商品化した時はそうします」
「楽しみだ」
あたしは猫をかかげて鼻にキスをした。
科学部の部室を去る。
お金持ちの男の子と結婚する計画は振り出しに戻った。
あたしとくっついても生涯年収が下がらないお金持ちの男の子を探さないといけない。
これは世界中を旅しないといけないかもしれない。
いちおうサッカー部のチャラ男にもそっと近づいてみたけど、やっぱり生涯年収は下がってしまった。どうみてもあたしと相性が悪いもんな。
たった2人ダメだっただけでお金持ちの男の子と結婚するという野望はあきらめない!
あたしは路地裏で占いをはじめた。
水晶玉とローブと机があればできるんだから開業資金は安い。
仕入れもない。
自分の生涯年収を知りたい人を占ってあげたり好きな人の写真を持ってきてもらって将来性を占ってあげる。
好きな人と並んで写ってる写真なら相性がいいかどうかも占ってあげた。
料金は500円。
すぐによく当たると評判になる。
ネットでもホームページを開設して占い部屋をはじめた。
写真を送って貰えばいいだけだから楽だ。
テレビにもよく呼ばれるようになる。
「あなたの彼女サゲマンだから別れたほうがいいよ。あなたの彼氏はアゲチン。逃しちゃダメ。あなたの生涯年収は1円。努力すれば変化するから血反吐吐くほどがんばったほうがいい」
ウケるコメントを意識して占った。
スタジオもお茶の間も大ウケだ。
あたしは新進気鋭の占い師として稼ぎに稼ぎまくった。
今朝、鏡を見ると生涯年収が100億になっていた。
人相とオーラが変化して生涯年収がアップしたのだ。
これならお金持ちの男の子と結婚しなくても良くない?
いや、超億万長者と結婚したいのだ!
生涯年収100兆円とかの男の子がいい!
せっかくこの眼があるんだから高嶺の花を摘んでやる!
あたしは稼いだお金で世界中を旅した。
さすがに世界は広い。
生涯年収8000億の子どもや30兆円の王子様もいた。
けど、あたしがそばに行くとガクンと下がる。
あたしがサゲマンじゃないかって?
いやいや男の足を引っ張るような真似はしない。
金運アップのために徳も積んでるし運は悪いほうじゃない。
ただたんに相性が悪いだけ。
世界一のお金持ちになるという野望は捨てたくない。
壁にぶちあたったあたしは北海道に旅行に行った。
流れる雲の下で柵に寄りかかりぼんやり牧場を眺めているとピンと来た。
そうか。人間の男がダメなら人間いがいの男を恋人にすればいいんだ!
あたしは寄って来た馬の頭をなでなでした。
1年後、あたしは世界一のお金持ちとなる。
どうやって稼いだか?
競馬よ。
馬を研究して馬の生涯年収も見抜けるようになったの。
競走馬の生涯年収とはすなわち獲得賞金額だ。
馬主になって稼ぐ馬を買い漁り自分の馬に賭けるだけ。
ネットから海外のレースにもかけられるし鼻歌うたいながら賭けまくった。
だいたい1位はわかってるからその馬を軸に四連複に挑戦してみたりする。
獲得賞金額が高い馬たちを選んで賭けてるからかなり的中率は高い。
競馬の勝利は空からお金が降ってくるみたいで楽しい。
馬と結婚したようなもんね。
人間の男とは相性が悪いみたいだから世界中のお金持ちイケメンと遊びで付き合ってる。
ずっとそばにいなければ影響は少ないみたいだしこれが最良だ。
人間の男とは最悪だったけどあたしと馬の相性はよかった。
馬は好き。
お礼にブラシをかけてあげたりエサをあげたりしてる。
あたしが買うと獲得賞金額が増えるから馬にとってあたしはアゲマンね。
夢を叶えたあたしは愛馬に乗って空を飛ぶような気分で草原を駆け抜けた。




