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第7話   新たな家族の絆




何もせず、独りで考え、じっとしていても事は前には進まないし、誰も助けてはくれない。


それは、この世界でも、元いた世界でも一緒のこと。


ここ(異世界)には私の知る人も、知っている人も誰もいない。


ひとりではないけど、ひとりぼっちなのだから……。


さっきまで魔法だ、ファンタジーだって、はしゃいでいたけど冷静になって考えたら、小説やアニメのようにはいかないし、そんな簡単で単純な話じゃない。

(うん!だから、やるしかない!!前に進む手掛かりを探さないと。文字通り、とりつく所、手をかける所を見つけないと先には進めないんだから!)


(そうよ!わずかな窪みでいい、それを手掛かりに必ずこの得体の知れない岩場を登りきってやる!!)


あの後、泣いて立てなくなったハイメをナタリーと一緒に自室まで連れていき、私は彼女に後をお願いして一階奥の広間に戻った。


この、落ち着かない大きな部屋で、あれこれ考え、情報を整理していたから、どのくらいの時間が経ったのか憶えてないが、ハイメが一人の男性を伴って戻ってきた。


「やぁ、はじめまして……と、言った方がいいのかな?」

困惑と、隠しきれない悲しみを(たた)えた瞳。


「あっ、は、はじめまして!」

「やはり、ハイメ。君の言った通りだな……。あっ、すまない!自己紹介がまだだったね。僕はこの家の主人でローランツ、ハイメの夫だ」


ローランツも私と話した途端に寂しそうな顔になった。

(……シャロンのことね)


自分のせいではない。けれど、愛娘を失った父親の顔を見るのは、胸の奥がチクりとする。


「あの……私は、……その何と言っていいのかな。信じてもらえるかわからないけど、この世界に呼び出された異世界人です。呼び出された理由は分かりませんが、今はシャロンさんの体をお借りしています」

「……異世界人?」


「はい、私が生まれ育ったところとは歴史も種族も文明も全然違うから多分、私は、違う世界から来たと思います」

「なっ、なるほど。……しかし、現実にそんなことが起こせるんだな。でも、君の口から出たことだ。真実なんだろう」


「信じて、いただけるでしょうか……」

私は覚悟を決めていた。疑われるのが前提だ。けれど、この二人の協力を得られなければ、私は完全に詰んでしまう。


「当り前じゃないか、君にはアルテナ様の加護『真心』が備わっている。君の口から出たことは、紛れもない真実だ。疑う余地などどこにもないよ」

意外だったのは、これら全てを疑いも無くふたりはあっさりと信じてくれた事。


(……あ。そうか。そうだった!「嘘がつけない」という最悪の呪いだと思っていたこの加護は、この世界における「絶対的な信用状クレディビリティ」なんだ!だったら話は早い!!思ったこと感じたことを噓は言わず正直に話す!ふたりに信用してもらい協力を得る為に)


鈍りかけていた私の思考回路が、加速しだした。


「あ、あの、ローランツさんハイメさん。身勝手なのは十分承知しています。ですが、どうか……どうか私に力を貸し下さい!お願いします!」

ローランツとハイメは顔を見合わせた。するとローランツは、頭を下げたままの私の肩にそっと温かな手を置いた。


「もちろんだ!確かに君は以前のシャロンでは無い。だがあの子が昨日、私達夫婦に最初で最後のわがままをお願いしに来た。『これから来る女の子を、助けてあげて』……とね。それは必ず叶えてやりたい」

「そうね……。それに、あの子は、今頃アルテナ様のお力で、自分が幸せだと感じられる人のもとへ連れて行ってもらって、穏やかな日々を過ごし始めていると、私は信じたいわ」


「うん、僕もそう信じてる。だから君への協力は、僕たちの娘だったあの子の最後の願いだ。たとえ、私達の財産全てを投げ打ってでも君を守ると誓おう。何も心配はいらないよ」

「あっ、ありがとうございます!!」

信頼できる味方ができた。この残酷な世界で、独りぼっちじゃないと思えた。目頭が熱くなるのを(こら)えながら、私は力強く頷いた。


「任せておきなさい」

ローランツの言葉に私は、ここへ来て初めてホッとできた。


   本当に嬉しかった……。


信頼のおける人が、協力してくれると言ってくれた。こんなに心強い事はない!


私達は早速、三人で今わかっている事、それからこれからの事を話し合うことにした。それと、シャロンの手紙を基に私も『真心』という加護が、どんなものかおぼろげに見えてきた。


(……やっぱり、この『真心』って加護、かなり厄介だわ!)


嘘がつけない。隠し事ができない。


もしこれが、商談の場なら一瞬で手の内を(さら)して終わる、全てにおいて致命的なハンデだ。


けれど一応、表現をぼかしたり、言い回しを変えることで「事実の隠蔽(いんぺい)」はできるようだが……それには恐ろしく高度なエバシブ(回避的)・トーク術が必要になる。


こうなれば、できるだけ人との接触はさけるのが無難?と、いうわけなんだけど、手掛かりを探すのには逆効果。


「はぁ~、思っていた以上に無理ゲーだわ……ありがとうございました。ローランツさんハイメさん、私なりに色々と把握できました。」

テーブルに突っ伏して溜息をつく私に、ローランツが鋭く指を差した。


「そう、それだ! その不自然な話し方は良くないぞ、シャロン! 他人行儀なままだと、周囲に怪しまれた時に『真心』でボロが出る!」

「えっ、そうですね。気を付けます」


ローランツは、小さく咳払いをしてこちらをチラリと見た。


「ならば、手始めに私を『お父様』と呼んでみなさい」

「えっ?あっ、はい……お父様」

その瞬間、ローランツは、落涙(らくるい)(こら)えるようにガバッと天を仰ぎ、握り締めた拳をプルプルと震わせた。


横ではハイメも「次は私よ!」と言わんばかりに自分を指さして身を乗り出している。


「ん~、もう一度、そしてハイメの事も!」

(えっ?何?何なの?この期待の眼差しは? 怖いんだけど)


「……お父様、お母様」

言い終えるや否や、二人は崩れ落ちるようにソファへとへたり込んだ。


「こ、これは……なかなかの破壊力だわ、ローランツ」

「ああ、ごちそうさまでした。女神様……っ!」

(……一体、何の話をしてるのよ、この人たちは)


でも、二人の顔に少しだけ明るさが戻ったのはよく分かった。


「……よし。これから僕たちも君をシャロンと呼ぶ。本当の名前は別にあるだろうが、この世界で君は、僕たちの愛する娘だ。いいかい?」

「はい。よろしくお願いします、お父様」

二人の嬉しそうな顔を見ていると、まあ、形だけでも親子を演じるのは悪くないと思えてきた。


先ずは、「この世界の常識と転生。それから女神アルテナについて知りたい」と私が言ったら、ローランツは、「役に立つ古書があるはずだ」そう言って、彼は弾かれたように部屋を出ていった。


この世界の本……か、知りたい事とは別にしても、それには凄く興味がある!


「こんな状況なのに、少し楽観的じゃない?」なんて誰かに言われそう。


だけど、不安な気持ちを打ち明けられる人が側にいて協力してくれる。それは、こんなにも心を安定させ前に進む力を生み出してくれるのだと、二人のおかげで身に染みてわかった。


「『ありがとう。お父様、お母様』」


本当は声に出すつもりは無かったのに、あの、「ポンコツ女神」の「ヘボ加護」が……勝手に発動しちゃった。

   最後までお読みいただきありがとうございます!


もし「続きが気になる!」と思っていただけたら、下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援いただけると執筆の励みになります。「期待外れ」という方は、正直に★1つでも構いません。

あわせて【ブックマーク】で、二人の行く末を最後まで見守っていただけると嬉しいです。


皆様のリアルな反応が、シャロンたちの物語を空高く押し上げてくれる【翼の羽】となります。


【予告:40話付近のサプライズ】

実は、第40話を超えたあたりで『大きな仕掛け』を用意しています。

この世界がより深く、切なく繋がる「特別な体験」をお届けできるはずです!


毎日【21:20】に1話ずつ、完結の100話まで一気に走り抜けます。


次回更新もお楽しみに!

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