表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/14

第4話   シャロン〜水色の「記憶」と、前例なき「洗礼」〜



私が、通された広間もまた、置かれた調度品の一つ一つがこの屋敷の主―――、ローランツの権勢を物語っていた。


ローランツとハイメは、シャロンの血の繋がらない義理の父母にあたるらしい。


ハイメは、事の次第をナタリーから聞き、少し怪訝(けげん)そうな顔で私を見ている。


「ナタリー、話が終わるまで、この部屋に私とシャロンのふたりにしてちょうだい」

「かしこまりました、奥様」


ハイメの凛とした一言に、ナタリーはアイラを促して静かに退室した。重厚な扉が閉まり、二人で過ごすには広すぎる部屋に沈黙が降りる。


ハイメは私の顔をじっと見つめ、小さく、けれど重みのある溜息をついた。


「あなたは以前のシャロンではない、その……別人なのよね」

心臓が跳ねた。


私は、あのメイド二人の態度や会話から、二人は私のことを記憶をなくしたシャロンと認識していたように感じたが、ハイメは違う。


ハイメは私を別人だと認識している!

(……誤魔化せない。この人は、全部知っているんだ!)


これは、ハイメが明確な確信を持って、私にそう言ったのだと思い、私は、ありのままを答えることにした。


「……ハイ」

そう、小さく呟くように肯定した。


「やはりそうでしたか。……では、シャロンはもう、行ってしまったのですね」

「いく?」

ハイメは視線を落とし、寂しげに、けれど(いつく)しむように呟き、話しを続けた。


「そうね、これはあなたにとって、とても大事なことだから隠さずに話しておくわ。そして話が終われば今度は、あなたのことを教えてちょうだい」


そう言って、ハイメはシャロンとシャロンの加護『真心(まごころ)』について話を始めた―――。


ハイメが目を閉じると、記憶の蓋がゆっくりと開いた。


それは今から十数年前。シャロンがまだ幼く、本当の両親のもとで暮らしていた頃の話―――。

    


「おば様!ハイメおば様~っ!!」

「まぁ、シャロン!こんなところにいたのね」

噴水の向こうから、スカートの裾を(ひるがえ)して駆けてくる小さな影。幼いシャロンだ。


「どうしたの?おば様」

ハイメは膝をつき、愛おしげに少女の両手を包み込んで、おでこをこつんと合わせた。


「ん!シャロンあなた今度、洗礼式に行くのよねっ?」

と、片目を開けてシャロンに問いかける。


「うん!そう!これで私も一人前のレディーなんだから!」

ひらりと離れ、くるりと回って見せるシャロン。


自慢げに胸を張り仁王立つシャロンに、ハイメは後ろに隠し持っていた贈り物を見せることにした。


「そうね、そんなシャロンに舞踏会用のドレスを持ってきたのだけど、……どぉかな?」

そう言って、サッと綺麗な水色のドレスを差し出し、その後ろからチラリと顔を覗かせた。


「えっ?あっ!パーティー用のドレス!しかも水色の!!もうどこも売り切れだってお母様が言ってたのに……」

「えぇ、そうよ!今、流行りの水色よ」


「綺麗……これ、私に!? 嬉しい、嬉しいーーーっ! ありがとう、おば様!大好きーーーーーーっ!」

シャロンが勢いよく飛びつき、ハイメは倒れそうになりながらも、その温かな重みを抱きとめた。


「ねぇ、ねぇ、お母様!今、着てみたい!袖を通してもいい?」

シャロンは、母親の袖を引っ張ってせがみ始めた。


「もう、何ですの、もらって早々(そうそう)に、はしたない!」

「まぁ、いいじゃないの」

困り顔の母親を横目に、ハイメは茶目っ気たっぷりにウインクした。


「……シャロン!」

「なぁに?おば様」


「どうせ、そう言うと思って、一階の応接室に針子を呼んでいるわ。早くそれを持って合わせてきなさい」

「本当!?やった~!すぐ行ってくる!」

シャロンは宝物を抱えるようにドレスを握りしめ、一目散に屋敷へと駆けていった。


「義姉さん、悪かったわねぇ。見つけるの大変だったでしょう?」

「そうね、一年ほど前からずっと水色の生地が品薄だったから、私も諦めていたところだったんだけど。ローランツの知り合いに魔族の行商人がいて、運よく融通してもらえたのよ」


「そうか、隣町はもう、魔族領土だもんね」

「えぇ、おかげで、おちびちゃんには気に入ってもらえたようね。ふふふっ」


歩きながら屋敷へと向かうふたりに、一階の窓から大声でふたりを呼ぶシャロンが身を乗り出して大きく手を振っている。


ふたりは手で合図をし、待ちきれない様子のシャロンのもとへと向かった。


   【洗礼式当日】


そこは、パルテール教の総本山、『サルモラ大聖堂』の中。


今日は年に一回行われる行事、洗礼式―――。


「おぉぉーーーーーっ!!」


格式のある高い天井を揺らしたのは、祈りではなく、数百人の喉から漏れた驚愕のどよめきだった。そのざわめきが、極めて珍しい事を物語っている。


ぼんやりとした光に包まれる少女の姿が見えた。


そこには、両膝を床に着け、胸の前で手を組むシャロンがいる。


この場に集まった人々の注目を浴びるシャロン。


―――ぼんやりとした、不思議な光。


「……何だ、あの光は」

「前例がないぞ。一体、何の加護だ?」


まだ、加護の名前はわかっていない……。


   最後までお読みいただきありがとうございます!


もし「続きが気になる!」と思っていただけたら、下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援いただけると執筆の励みになります。「期待外れ」という方は、正直に★1つでも構いません。

あわせて【ブックマーク】で、二人の行く末を最後まで見守っていただけると嬉しいです。


皆様のリアルな反応が、シャロンたちの物語を空高く押し上げてくれる【翼の羽】となります。


【予告:40話付近のサプライズ】

実は、第40話を超えたあたりで『大きな仕掛け』を用意しています。

この世界がより深く、切なく繋がる「特別な体験」をお届けできるはずです!


毎日【21:20】に1話ずつ、完結の100話まで一気に走り抜けます。


次回更新もお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ