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第9話   混迷の親睦会(ベルンツ)と、――黒王子の降臨




ごきげんよう。『シャロン=アルカイド』です!


皆さん、いかがお過ごしでしょうか?


以前は「樹里」、現在は別の名前「シャロン」を名乗ってます。


―――ええ、そうです!『只今絶賛異世界転生中』です。


―――私?


私は今、魔族領土でも有数な豪華でとても大きな屋敷に招待されています!


見てください!この豪華な装飾品や調度品の数々を。

「う~ん、実に素晴らしい!!」


そして、そんな物が、当たり前すぎて目にも止まらない人達の群れ。

きらびやかですねぇ〜」


私が!?あの中へ??

「無理、無理、無理、無理!!何を話しているのか、全くわかりませ~んっ!」


到底、同じ言語を()しているとは思えないほど、話の内容が理解できない!


と、言う事で、壁際でひとり置物になっていたら、今度は鼻の下を伸ばした男たちが次々話しかけてきたり、ダンスに誘ってきたりと、ひっきりなしにやって来る。


まあ、シャロンちゃん、めちゃくちゃ綺麗だから仕方ないし、親睦会ベルンツ―――なのだから、あたり前なんだけれどね。


あっ、『ベルンツ』っていうのは、人族と魔族との親睦を深めるのが目的で、色んな所で定期的に行われ、主に次の世代を担う若者中心に設けられた社交界という事らしい―――。


だから、あまり交流したくない私が、お誘いを断ったり、あしらったりするのが面倒になり、今はここ、窓際の椅子に腰かけ、『ひとり実況』を始めたというわけです。


「ハイッ!!」


なにせ、聞こえるか聞こえないか程度の声で、途切れなくブツブツ言うと、みんな意外と声をかけてきません!

「うん、実に快適です!」


ェッ?交流したくないのに何故、懇親会に来たのかって?

「フッ、フッ、フッいいところに気づきましたね〜」


実はあるお方、魔族の頂点ともいえる存在、「魔王様」に会うためなんですよ。この世界の魔族の頂点『魔王』なら、私が元の世界へ帰る方法を知っている可能性があるのではないか?って、事に気が付いちゃったからなんです!!

「フフ~ン。私えらい!!」


『あの~……』

不意に、(かたわ)らから声がしたが、自分に対してではないと思ったから、私は双眼鏡のようにした手を離さず、実況に没頭していた。


「おっと、そこの僕!平ですか?自由ですか?私と目が合った瞬間、凄い速さで目が泳いでますよ」

 『もし、……』


「今度は、そこのお嬢さん!ジト目は(とうと)いかもですが、私同性ですから、効果ゼロですよ。いえ、逆にマイナスです」

 『あ、あの!……もし!』


「おやおや?!何やら人だかり?もめ事かな?ザワついているわね。うん、かかわらないでおこう!」

そう、思いつつ野次馬根性から手で作った双眼鏡を人だかりの中心に向けた。


どれどれ、細身で背は高くなさそう。ん〜男の人、子かな?ん?頭を抱えているようにも見えるけど、どうしたのだろう?痛いのだろうか?あれ、何で誰も手を貸さないの?……。


「えっ!!ちょっ、片膝ついた!ダメなやつじゃん!!って、もう!何でみんな見てるだけで手を貸してあげないの?!」


『あのっ……もし!!あっ!行ってしまわれた……』

騒動に向かう私の背中に、声を掛けようとした人がいたが、私は全然気が付かなかった。


私は、無心で騒動の中心に走り寄ると、自分の胸のあたりを掴み何かに耐え片膝を折った少年に、手を伸ばした。


「ねぇ、大丈夫?」

そう言った私に彼は反応し、剣のつかを握って凄い目つきでにらんできた。


赤く綺麗な瞳の少年。

「『ドキ、んっ!!ちょっと待って、顔面偏差値が高すぎて直視できない!!……あ、でもショタ枠か。惜し〜い、現時点では「観賞用」の域を出ないわ。私の射程範囲(ストライクゾーン)からは数キロ外れてるわね』」


歳は、……。15歳前後かな?私よりかは幼く見えた。

「よし!大丈夫そうね。『顔が良き!ってことに免じて横柄な態度は見逃してあげるわ。見たところ、命に関わるほどじゃなさそうで』よかった」

本音がダダ漏れていることに気づきもしない私。


   バシッ!!


私は、思わず彼の後頭部を軽くはたいて言った。

「立っていられないくらいに、辛いのでしょう!?人が心配して来てあげたんだから、そういう態度とるんじゃないわよ。まったく!ほら、立てる?」


私以外は、全員目を丸くした。―――もちろん、赤目(この子)もだ。

「たにかく、どこか休めるところまで肩を貸してあげるから。本当に大丈夫?歩ける?」


「お前・・何で・・ハモらない?」

「はぁ?はもる?何の事?質問の意味が、よく分かんないわ!それより、医務室どこよ?」


少年は、少しよろけながら、一番近い廊下を指差した。

「あっちね。分かった!」


―――後で知った話なんだけど、この時、この男のヒースは、威嚇というスキルを使って人を近づけないようにしていたのだ。だから周りの人達はどうやら、皆、「近づかなかった」のではなく、「近づけなかった」ようだ。


だけど何故か私には効果がなく、それをかいくぐって、彼の懐(間合い)に入られたので一瞬、敵だと思ったらしい。


まぁ、分かりやすく説明すると、周りの人達には、「牙をむき出しにして(うな)り声で威嚇(いかく)している、目が良く見えていないドーベルマンに対し、私が頭をはたいて首根っこを掴み連れて行ったように見えた。」―――というわけだ。


無自覚とは恐ろしい……。



―――柱の陰から様子をうかがう二つの影。


「チッ、……」

シャロンたちを見て舌打する女がいた。


「これは一体全体どういうことだ?なぜ暴走しない?」

「いえ、暴走しなかったという事ではなく、近づいて来たあの女に止められた感じがしますが……」

ひょろっとした学者風の男が女に答えた。


「誰だい?あいつは?」

「存じません。どうされますか?」

男が女の耳元でつぶやく。


「あん?どうもこうも想定外じゃない、こんなの!出直すに決まってるでしょ。いくわよ」

「はっ」

ふたりは、シャロンたちとは反対の方向へと静かに歩き出した。



そして様子をうかがっていた者が、―――もう一人。


『―――凄い!あの状態異常を一瞬で?!……。あんなのわたくしにだって、できませんの。やはり、あのお方は、間違いなく、……。こうしては、いられませんの!!』

騒動が起きる前、シャロンに声をかけようとしていた女は、急いでシャロンの元へと向かった。



私は、ヒースに肩を貸し、言われた通りの通路へ向かい、入っていった―――。


騒ぎを聞きつけ、通路の奥から女性騎士が足早にこちらへやってくる。


「ヒース!」

周りを素早く確認して、私の反対側へ周り込みヒースへ肩を貸す。


こちらをチラリと見たが何も言わず、心配そうにヒースへ話しかけた。

「大丈……夫ではないな。お前、薬は?」

「セグナ・・か。あぁ、ここへ来て・・直ぐに飲んだが・・暴走状態に・・ハモりだした・・けど・・」

ヒースはその先を言わず口を閉じた。……何やらふたりの視線を感じる。


今、気が付いたけど、ヒースもこの女騎士の「セグナ」も身なりがきちんとしていて装備品もしっかりしている。どうやら、かなり高貴な方へつかえているのだろう。


(深入りは禁物、禁物!!早目に退散しないと……私の癒やしから学んだスキルが、そう囁いている)


一際ひときわ大きな扉の前で立ち止まり、ドアノブに手をかけるセグナ。

「……ともかく、中へ入ろう」


私は、おせっかいを止めるタイミングを見計らっていたので、ここぞとばかりに、

「知り合いみたいね。良かった。じゃあ、後はお願いして、私はここで、……」


そう、切り出した私にセグナは、

「すみません、ここでは何かと目立ってしまいます。ご令嬢も一緒に中へお願いできませんか?」

「『えっーと、もめ事は遠慮したいんですが、……』」

しまった!ヘボ加護が私の普段表に出さない言葉をそのまま、相手にぶつけてしまう。


「すみません、ご理解を」

「『こちらの事情は関係ないって事ね……』はぁ~っ、わかった!わかりました!乗りかかった船だし付き合うわよ」


―――通された控室は個室のようだが、かなりの広さだったから、使用者の身分の高さがうかがえる。私なんて合同の控室だったもんね。


「ご令嬢は、そちらへ」

案内されたのはひと組みのソファー。私は、そこへ腰を下ろすことにした。


「気分はどうだ?ヒース。問題無ければ私は所定配置へ戻るが?」

「あぁ・・問題無い・・あいつの・・お陰で・・暴走せずに・・済んだ」

と、ヒースは、私を指さした。


「えっ?私?いったい何のこと?」

「オレ・・もう少しで・・魔力の暴走状態になって・・制御不能になるところだった・・けど、あんた・・触れた瞬間・・暴走止まった」


「触れたって……。あぁ、あの頭をはたいた時ね。けど、私何もしてなかったけど」

「ん?どういう事だヒース?あの、失礼ですが、ご令嬢は魔力制御や浄化のたぐいのスキル持ちではないと?」

不思議そうに、私を見るセグナ。


「えぇ、そうね。ヘボい加護しか持たない、ただの一般人。魔力も多分ないと思うわ。『そんな優れた能力あるなら、私が欲しいくらいよ』」

おっと、まただ、ヘボ加護で、つい本音が出てしまった。


「確かにあの時・・過剰だった魔力が一瞬で・・正常値にまで下がって・・暴走しなかった・・けど、それより驚いたのは・・こいつハモらなかった」

「何だと?!ハモらない人間がいるのか?」

セグナが驚愕の表情で私を見る。


ヒースは、黙ってうなずき続けた。

「ハモらなかった・・人間は・・こいつが初めて・・魔力も・・持ってないのに・・不思議な奴・・でも・・何か・・気配を・・感じる・・何だろう?」


「……」

「……」

二人共考えがまとまらず、とうとう黙ってしまった。


「ねぇ、ちょっと、「ハモる」ってどういう事?ちゃんと説明して!それから、ヒースだっけ?私は、「こいつ」じゃなくてシャロンね。ちゃんと名前で呼びなさい!」


―――その時だった。


    ガチャ


私が、話し終わると同時に、私の後ろにある、一際(ひときわ)大きな扉が開き、そこから声がした。

「興味深いな―――」


一瞬で部屋の温度が下がったような錯覚。この空間に緊張感が走ったのがわかった。


「私も話を聞こうじゃないか?」


ヒースもセグナも即座に膝を折り、最上級の挨拶をしている。

(……え、これって、もしかして、カーテシー案件?)


この部屋の主だと、私は、すぐ理解した。


「『!!、えぇーっと、こう言う場合は、挨拶!そう!カーテシーでよかったのかな?』」

私は、緊張で強制吐露にも気が付かずソファーから立ち上がり、そして振り向きざまに声がした方へと目線をやった。


「こんな格好で済まない。今日はもう人前へ出るつもりがなかったものでな。失礼であれば着替えるがこのままで良いかな?」


―――人を見て、見とれたのは、生まれて初めてだった。圧倒的な存在感。一目見た瞬間に、全ての思考が焼き切られた。そんな感じ、……見入ってしまった。



  ―――息をするのを忘れたくらいに。



そこにいたのは、この国、カルヴィナ王国の第二王子。

「黒き王子」の異名を持つ―――、『ノエル』だった。


   最後までお読みいただき、ありがとうございます!


もし「ちょっと、続きが気になるかも?!」と思っていただけたなら、下の【☆☆☆☆☆】から★で、この作品を応援してもらえると嬉しいです!


「面白い!」という方は★5つ、「期待外れ」という方は★1つ、もちろん正直に、感じた気持ちで構いません。


あわせて【ブックマーク】で、二人の行く末を最後まで見守っていただけると、なお嬉しく、執筆の励みになります!!


皆様のリアルな反応が、シャロンたちの物語を空高く押し上げてくれる【翼の羽】となります。


【予告:40話付近のサプライズ】

実は、第40話を超えたあたりで『大きな仕掛け』を用意しています。

この世界がより深く、切なく繋がる「特別な体験」をお届けできるはずです!


毎日【21:20】に1話ずつ、完結の100話まで一気に走り抜けます。


次回更新もお楽しみに!

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