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悪役令嬢の烙印を押され追放されましたが、辺境でたこ焼き屋を開業したら、氷血公爵様が常連になりました  作者: 緋村ルナ


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第十一章:食覧会決戦! 真実の味と偽りの聖女

 建国祭当日。王宮の広大な庭園に設けられた食覧会の会場は、朝から大勢の人々で賑わっていた。

 私たちの「オクト・スマイル」のブースは、その物珍しさも手伝って、開始直後から大変な盛況ぶりだった。

「おおっ! これが噂のたこ焼きか!」

「いい匂いだ! 一つ頼む!」

 私と従業員たちは、息の合った連携で次々とたこ焼きを焼き上げていく。特注の鉄板は絶好調で、外はカリッと、中はとろりとした、最高の状態のたこ焼きが、飛ぶように売れていった。

 そんな私たちのブースの、すぐ隣。そこに、リリアナが陣取っていた。

 彼女のブースにも、同じようにたこ焼きが並べられている。しかし、それは形だけを真似た、粗悪な模倣品だった。

「皆様、こちらが『聖女の祝福を受けた』真実のたこ焼きですわ! あちらのお店は、わたくしのアイデアを盗んだ偽物ですのよ!」

 リリアナは、聖女という肩書を最大限に利用し、大声で嘘を吹聴し始めた。彼女の信者や、聖女の威光に弱い一部の貴族たちが、彼女のブースに集まっていく。

 だが、その客足も長くは続かなかった。

 味は、あまりにも歴然だったのだ。

「……なんだこれ。生焼けじゃないか」

「ソースも、ただ甘ったるいだけで……」

 一口食べた客たちは、すぐに顔をしかめて離れていく。そして、その足で、私たちの「オクト・スマイル」の行列に並び直すのだ。

「やっぱり、こっちが本物だ!」「美味さが全然違う!」

 リリアナのブースの前は閑古鳥が鳴き始め、私たちの店には、さらに長い行列ができていた。

 その様子を、視察に訪れた国王夫妻も、興味深げにご覧になっていた。そして、ついに私のブースの前へと歩み寄られた。

「そなたが、オリヴィア・クライネルトか」

「はい、陛下」

「噂のたこ焼き、朕にも一つ頼む」

 緊張しながらも、私は心を込めて焼いたたこ焼きを献上した。国王陛下と王妃殿下が、それを一口召し上がる。

 そして、お二人の顔が、ぱっと輝いた。

「……うむ! これは誠に美味である! 外の香ばしさと、中のとろりとした食感の対比が見事だ。この甘辛いソースも、他に類を見ない革新的な味よ!」

 国王陛下の絶賛の声が、会場中に響き渡る。これ以上の宣伝はない。

 完全に面子を潰され、追い詰められたリリアナは、ついにヒステリックに叫んだ。

「お待ちください、陛下! その女が、私のアイデアを盗んだのです! 私が考えた料理を横取りして、自分のものだと偽っているのです!」

 見苦しい嘘。しかし、聖女の涙ながらの訴えに、周囲はざわめき始める。

 その、瞬間だった。

「――お待ちください、陛下」

 静かだが、有無を言わさぬ力強さを持つ声が響いた。人垣を割って前に進み出たのは、今まで黙って成り行きを見守っていた、レオニール公爵だった。

 彼は国王の前に進み出ると、恭しく一礼した。

「聖女リリアナ様の訴えには、いくつか疑わしい点がございます」

 レオニールは懐から分厚い書類の束を取り出した。

「まずはこちらを。これは先日、オリヴィアの店に忍び込み、食材に毒を盛ろうとしたならず者たちの証言録です。彼らは、依頼主が聖女リリアナ様であると証言しております」

 会場が、どよめきに包まれる。

「そ、そんなのでたらめですわ!」

 顔面蒼白で叫ぶリリアナを、レオニールは氷の視線で一蹴する。

「さらに、こちらがリリアナ様の王宮での支出記録です。聖女として清貧な生活を送っていると公言しながら、その裏では高価な宝飾品やドレスを買い漁っておいでですな。その資金源はどこから?」

「そして、これが決定的な証拠です」

 レオニールが最後に突きつけたのは、薬師からの証言だった。

「リリアナ様が、民衆への『癒しの奇跡』と称して行っていた行為。それは、聖なる力などではなく、極めて高価で希少な回復薬を、水に薄めて分け与えていただけのこと。薬の代金は、信者からの寄付金を着服して支払っておいででしたな」

 次々と暴かれる悪事。もう、言い逃れのしようもなかった。

 聖女の仮面は、音を立てて剥がれ落ちた。そこにいたのは、ただの嘘と見栄と嫉妬にまみれた、一人の浅はかな少女だった。

「……リリアナ・ベルンシュタインを捕らえよ」

 国王陛下の、冷たく、威厳に満ちた声が響く。

 衛兵に両脇を抱えられ、連行されていくリリアナは、最後まで私を憎悪の目で睨みつけていた。

 こうして、たこ焼きを舞台にした食覧会決戦は、真実の味が、偽りの聖女に完膚なきまでの勝利を収める形で、幕を下ろしたのだった。

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