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グラント・ロイヒトの腰巾着ども

俺は目の前のフード男の袖を掴み、強引に引き寄せた。

勢いよく身体がこちらに倒れ込んできたところで――

「ッふん!」

膝蹴りを叩き込む。

風を切る音と共に、男の腹部から空気が押し出される音がした。

膝が腹に深く埋まったのを感じたあと、素早く足を地面につけ、

回転するようにして拳を振るった。

「ぐぅっ!」

拳が相手の頬に命中し、男はよろめいた。

だが――倒れない。

「しぶといな」

俺は呟きながら二歩踏み込むと、素早く喉元へラビットパンチを見舞った。

……だが、どうやら狙いが少しズレたらしい。

“ゴキッ”という音がフードの中から聞こえ、鼻を砕いた手応えが返ってきた。

それでも構わず、俺は次の一撃を繰り出す。

拳が再び相手の喉元を打ち抜き――

「ゴホッ!」

苦しげな咳とともに、男は後退し、喉を押さえた。

だが、逃がす気はない。

さらに踏み込んで、俺は右足を男の左足の後ろに引っ掛けた。

もうほとんど体勢を保てない相手は、見事にバランスを崩す。

「……!」

後方に倒れ込んだ男の顔面に、俺は迷うことなく踵を叩き込む。

“バキッ!!”

乾いた破壊音が通りに響いた。

男の身体が数回ピクついた後、動かなくなった。

確認するようにその場を一瞥し、俺はもう一人のフードの男へと視線を移す。

ヤツは座り込んでいた。

だが、体の揺れ方からして、脳震盪を起こしているらしい。

あのアッパーカットで脳が揺れたか。

ゆっくりと歩み寄ると、ヤツは俺の存在に気づいて顔を上げた。

目を見開くのが見えた。だが――遅い。

「遅えよ」

蹴りを放つ。

俺の足はヤツの側頭部を直撃した。

その衝撃で身体が横に回転し、地面に激突。

再び、“ゴッ”という鈍い音が夜に響いた。

しばらくそのまま様子を見たが、ヤツは微動だにしない。

俺は無言でその身体を仰向けに転がし、フードを外す。

――顔が露わになった。

見覚えがあった。

「こいつ……」

あの時、グラントと一緒にいた二人の腰巾着のうちの一人だ。

となると――もう一人は、間違いなく兄弟の方だな。

「グラントが命じたんだな、俺を襲えって……」

低く呟きながら、俺は怒りを噛み殺した。

一瞬だけ怒りに身を任せそうになったが、すぐに冷静になって考える。

このまま彼らを放っておけば、グラントに今回のやり取りを報告されるだろう。

それは困る。俺の“力”が多少なりとも知られてしまう。

そして――

“平民が貴族を二人叩きのめした”という話が広まれば、

他の名家の標的になる可能性もある。

とはいえ、逆に彼らを殺してしまえば、それはそれで問題だ。

貴族だからこそ、死ねば必ず調査が入る。

ネヴァリアの霊術師団や帝国の王室親衛隊が本気で動けば、

俺がどれだけ慎重に立ち回ろうと、いずれ正体が割れる可能性が高い。

「仕方ないか……」

俺はため息を吐きながら、倒れた男のフードを掴んで引きずり、

その兄弟と思われるもう一人の男のもとへと運んだ。

まず兄弟のフードを外し、二人を並ばせる。

膝をつき、右手を上げると――

人差し指に淡い青の光が灯った。

霊力を指先に集中させ、まず最初に襲ってきた方の額に指を当てて書き込む。

イーサ、ペースロー、アルギズ、ダーガズ・メルクスターヴ

ルーンを一つずつ丁寧に刻み込み、霊力を流し込む。

光るルーンが肌へと沈み込み、やがて完全に消えた。

頷きながら、もう一人にも同じように刻み込む。

「……よし、これでいい」

立ち上がり、額に浮かび消えたルーンを確認して満足する。

「記憶封印のルーンを解除できる奴なんて、ネヴァリアにはいないだろう。

 しばらくは安心だな」

そう言って彼らを見下ろしたが、特にそれ以上何かをする必要はないだろう。

どうせこのやり取りも記憶には残らない。

余計なことをすれば、それこそ自分の首を絞める。

踵を返し、再び帰路に就こうとしたその時――

ぞくり、とした感覚が背中を走った。

“誰かに見られている”――

そんな感覚に、俺はぴたりと足を止めた。

振り返って、建物の屋根を見上げる。

「……誰だ?」

だが、視界に人影はない。

そして、あの視線の感覚も――

すでに消えていた。

こんにちは!

最近あとがきを書いていなかったのですが、今回は少しだけご挨拶をさせてください。


すでにお気づきの方もいるかもしれませんが、最近はチャプターを少し短くして、一日に複数回更新しています。

というのも、ネット小説を読んでくださる方の中には、通勤・通学の合間に読んでくださっている方も多いのではないかと思いまして。

短めのチャプターにすることで、少しでも読みやすくなればいいなと考えました。


そうであれば嬉しいです。

それでは、今日も素敵な一日をお過ごしください!

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