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目にも止まらぬ速さで

ファイはこくりと頷き、俺が地面に引いた線のところまで歩いてきた。彼女の瞳の奥には、確かな炎が燃えている。十メートル先に引いたもう一つの線をじっと見つめ、目を細めたその顔には、頑固なまでの決意が宿っていた。その表情を見て、俺の中にある彼女への尊敬がさらに深まる。

多くの人間は、挑戦すらせずに諦める。「無理だ」「どうせできない」と口にして、自分を納得させてしまう。だが、本当に成功を手にする者は――何百回、何千回と失敗を重ねても、諦めなかった者だ。この娘がそこまで理解しているかは分からない。でも――諦めずに前を向く彼女の姿には、素直に感服する。

「ま、教えたのは今日が初日だからな」

俺はそう付け加える。「本当にフラッシュステップを使いこなせるようになるには、最低でも一ヶ月はかかる」

「とても繊細で、でも強力な技術ですから」

ファイはうなずいた。「完璧に使えるようになるまで、私は何度でも練習します」

「その意気だ」

俺は指で近くの木々を指した。「俺はあっちで鍛錬する。何かあったら呼んでくれ」

「はい」

ファイを練習に残し、俺は森の中へと足を踏み入れた。周囲を見渡すと、木々は一本一本が一~二メートルほど離れて立っており、密林というほどではないが、動きの訓練には丁度いい密度だった。

薬草袋を地面に置き、スピリチュアルリカバリーピルを一粒口に含む。 Spiritual Power(霊力)が一気に回復していくのを感じて、思わずため息を漏らす。

「……よし」

大きく深呼吸を一つ。

「やるか」

霊力を両足に集中させ、一歩を踏み出す。すると――世界が一瞬にしてぼやけた。

一秒も経たずして、目の前に一本の木が現れる。寸前で足を止め、木にぶつかる前にフラッシュステップで方向を変えた。さらにもう一度、別の方向へと跳ぶ。

俺は木々の間を疾走しながら、何度も何度もフラッシュステップを繰り返した。視界がかすむほどの速度で、木を避け、地を蹴り、風を裂く。

外から見れば、おそらく俺の姿は影のようにしか見えなかっただろう。ただの残像。これほどの速度に目がついてこられる者は、そう多くない。

この訓練には、いくつかの目的があった。

第一に――霊力を限界まで消費し、使い切ること。

第二に――フラッシュステップを連続で使用し、不規則な方向転換に慣れること。

そして第三に――視覚と脳の処理速度を鍛えること。

最初にフラッシュステップを使った時、すぐに気づいた。視界がぼやける。つまり、目と脳がこの速度についていけていないのだ。目が捉えた光の粒子を、脳が処理しきれていないということ。だからこそ、俺は何度も何度もこの技を使って、目と脳を高速移動に順応させる必要があった。

木の幹を蹴り、破裂させながらさらに跳ぶ。木から木へと跳躍を繰り返し、数分間もこの訓練を続けた。そして地面に着地し、またすぐにフラッシュステップで飛び立つ。

まだ視界は完全ではなかったが、確かに――鍛錬を重ねるごとに、徐々に視界が鮮明になっていくのを感じる。

気づけば、すでに二時間以上が経っていた。

霊力が底を尽きた頃、俺は頭上の木々の隙間から差し込む日差しを見上げた。太陽はすでに高く昇っている。

「……そろそろ図書館のシフトが始まるな」

そう呟きながら、カリが来ているかどうか、ふと思いを馳せる。

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