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過去におけるエリックとメデューサ女王の初対面

目を覚ましたとき、腕がひどく痛んだ。

最初はその理由が分からなかったが、動かそうとした瞬間、「ガチャリ」と金属音が鳴り、ようやく自分の腕が頭上に吊るされていると気づいた。

…手首がヒリヒリする。擦り剥けたような感覚があった。

目を開け、ぼんやりとした視界で周囲を確認する。

そこは暗い空間――部屋のようだった。壁は見たことのない泥のような素材でできており、黄土色をしていて、表面には無数のヒビが走っていた。どう見ても脆そうだが、触れてみると意外にも冷たくてしっかりしていた。

部屋の中には自分以外、何もない。

腕を引っ張ってみると、金属の枷が両手首に嵌められていて、それが壁から突き出た鎖に繋がっている。しっかりとした作りで、雷属性を通さない限りは壊せそうにない。だが、今は霊力が鈍っているのを感じた。

諦めて手をだらりと下げたまま、どうしてこんな状況になったのかを思い出そうとした。

――そうだ、オアシスで水を補給していた時に、蛇人間に襲われたんだっけ。いや、その前に蛇に噛まれた…?

あの蛇は毒を持っていたかもしれない。その後の記憶は曖昧で、気づけばここにいた。

ということは、やっぱりあのラミア族に捕まったのだろう。

生きているのが不思議だった。いや、それよりも――

どうして殺されていないのか?

眉をひそめたその時、妙な感覚に気づいた。

風通しが良すぎる。やけにスースーする。

下を見て、理由が分かった。

――全裸だった。

服がどうなったのか考えていると、「ザリ…ザリ…」と砂が擦れるような音が聞こえてきた。

ただの足音ではない。何かが引きずられているような、独特な音だった。

視界の端にある布のカーテンがはためき、眩しい太陽光が差し込んできた。

焼けつくような暑さ――その光を遮るように、何か大きなものが部屋へ入ってくる。

それは、ラミア――蛇の下半身を持つ種族の女だった。

他のラミアと同じく、褐色の肌に長く黒い髪。だが、彼女は金色の装飾を頭に身につけていた。

蛇を象った黄金の冠のような飾りが、彼女の高貴さを際立たせていた。

金色の瞳に、整った顔立ち。

だが、なによりも目を奪われたのは彼女の裸体だった。

一糸纏わぬその体は、まるで芸術品のように滑らかで、力強い筋肉と官能的な曲線が共存していた。

豊かな胸が揺れながら、蛇の尾を引きずるように艶めかしく進んでくる。

腰下から蛇の鱗が始まり、ちょうど股間の辺りから下半身が完全に蛇の姿へと変わっていた。

彼女の後ろ姿は見えなかったが、人間の尻の形があることは何となく分かった。

「この女王は、お前がようやく目覚めたことを喜んでいる」

冷たく、それでいて柔らかな声が響いた。

「我が民が貴様を連れてきてから、すでに数日が経過している。この女王は、貴様が目を覚まさぬのではないかと心配していたのだ」

「……助けてくれたのか?」と、俺はかすれた声で問うた。

「助けたか?」

その女は首を傾げながら、しばし黙考した。そして数秒後、薄く笑みを浮かべた。

「この女王の民が貴様をここへ連れてきた。この女王が助けた――と言えなくもないだろうな。」

その話し方には、何とも言えない違和感があった。言葉遣いは丁寧で上品だが、冷たい皮肉が込められているように感じた。何より、俺はいまだに鎖で拘束されたままだ。

「じゃあ、できればこの鎖を外してもらえないか?」

俺は意図的に鎖を鳴らし、存在を強調した。

「それはできぬ。」

蛇の女はあっさりと答えた。

「残念なことに、貴様が連れてこられた理由はその強大な霊力ゆえ。この女王は数年前に子を失った。だからこそ、新たな後継者を産まねばならぬ。」

そう言って、彼女は自身の腹に手を当てた。

「この女王は、貴様の霊力を吸い取り、それを我が子の糧とするつもりだ。」

言葉を失った。まるで俺の雷の術で感電したかのような衝撃が走った。

俺の霊力を“栄養”に? そんなこと、可能なのか? 理屈も仕組みも理解できなかったが、本能的に――それは確実に命を落とす行為だと分かった。

「儀式が始まるまで、ここに留まってもらう。後で食事を運ばせよう。」

蛇女はじっと俺を見つめたまま、数秒の沈黙を挟んでから、くるりと体を回して出口へ向かった。

「この女王の名はメデューサ。この女王と貴様が共に過ごす時間は長くはないが――その命を我が子に捧げるのだから、せめて名くらいは知っておいてもよいだろう。」

その一言を残して、彼女はその場を去った。

まるで死の宣告をされたかのような――そんな余韻が室内に残った。

このままここにいれば、確実に殺される。だが、今の俺には抵抗する力も残っていない。身体も霊力も鈍っていて、何一つ満足に動かせなかった。

――ならば、やることは一つしかない。

俺は静かに目を閉じ、体内を巡る霊力を意識しながら、未だ残る毒素を少しずつ浄化していった。

ああっ、なんてこった!エリックが美しくて裸のラミア女王に捕まってしまった!羨まし…じゃなくて、俺だったら…いやいや、違う、そうじゃない!彼はこれから一体どうなってしまうんだ?!

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