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霊力強化薬

「1,000ヴァリス!」 「1,100ヴァリス!」 「1,250ヴァリス!」

霊力強化薬の価格がどんどん上がっていくのを、俺は静かに見守っていた。優しき癒しの薬はそれほどの人気ではなかったが、霊力を強化できる薬という魅力には誰も抗えなかったようだ。

「2,000ヴァリス!」

突然の高額入札に、思わずむせそうになった。貴族にとっては大した金額じゃないかもしれないが、2,000ヴァリスは平民ならひと月は生きていける額だ。それに、俺があの薬を作るのに使った素材費の十倍以上でもある。

ミッドガルドでは、霊力強化薬二十錠入りの瓶でもせいぜい4,000ヴァリスだった。中級錬金薬であり、精製もそこまで難しくはない。

気づけば、ステリスが落札を宣言していた。

「3,200ヴァリスで落札! 落札者はクリゲル家!」

その名を聞いた瞬間、俺は背筋を正した。確か、クリゲル家は三大天家のひとつだったはずだ。正直なところ、あの家についてはほとんど知らない。前世の俺はただの図書館司書で、貴族との接点といえばカリとの関係だけだった。

唯一会ったことがある他の貴族は――グラント・ルヒト。

思わずため息が漏れる。これからのことを考えれば、三大天家についてもちゃんと調べておかなければならないのだろう。

霊力強化薬の次にオークションに出されたのは、肉体強化薬だった。これは霊力強化薬ほどの価格では売れなかったが、それでも2,500ヴァリスという金額は悪くない。落札したのは、ベラトル家という小貴族の一族だ。

オークションを通して、各種錬金薬の市場価値を測るのが目的だった。

結果として、霊力強化薬と属性薬が一番高額で売れた。どちらも霊術士や魔獣山脈に挑む冒険者たちにとっては実用性が高い。

次点は持久薬と肉体強化薬。価格はそれぞれ2,300と2,500ヴァリスだった。

最も評価が低かったのは、優しき癒しの薬と精神明晰薬で、それぞれ1,000と900ヴァリスで落札された。

個人的には、癒しの薬こそ最も有用だと思っている。ただ、それが最初に出されたために注目を集められなかったのだ。

次に錬金協会を訪れる時、フェインレアには優しき癒しの薬、霊力強化薬、持久薬、肉体強化薬の四種を優先して精製させるように伝えよう。

「さて、錬金薬のオークションが終了しましたので、ここからが本番です」

ステリスの笑顔が大きくなり、フェイが一度舞台から退場する。

「ご存知の方も多いと思いますが、ヴァルスタイン家は最近、Aランク霊術を手に入れました。その名も『五指火鞭ファイブ・フィンガー・ファイア・ウィップ』。この技を使えば、圧縮された炎の鞭を生み出せます。その熱量は鋼鉄すらも溶かし、熟練した霊術士であれば威力や温度を調節し、非致死性にすることも可能です」

ステリスの説明に、観客席からどよめきが広がった。

フェイが再び登場し、金の装飾が施された木箱を手にして舞台へ戻ってきた。中には紫色のクッションの上に、一巻の巻物が鎮座していた。

それは山羊の皮で作られており、やや茶色く古びた外見をしていた。

俺が意図的にそう仕上げたのだ。雷属性を使って軽く乾燥させ、まるで魔獣山脈の遺跡やダンジョンで発掘された古文書のように見せかけていた。

「ご存知の通り、Aランク霊術は非常に希少です。ネヴァリア全体でも百に満たないと言われています。よって、今回の入札開始価格は――3万ヴァリスからとさせていただきます」

俺は腕を組みながら前屈みになり、壇上に目を凝らした。

この霊術が、いくらで落札されるのか――興味は尽きない。


物語の展開が本格的に動き始めています。…本当に。ちゃんと進んでいます。

なので、起こることのすべてを楽しんでいただければ幸いです。

ありがとうございます。

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