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カリは数時間後に図書館を後にした。今日は稽古があるらしく、長くはいられないとのことだった。彼女はただ、俺と話をするためだけに来てくれたらしい。その後の数時間、俺は――正確には蛇と一緒に――一人で図書館に残った。

ナディン先生は、蛇をまったく気に入らなかった。

「次にその生き物をここに連れてきたら、首をはねて焼いてやるからね」

彼女の言葉は容赦なかった。無理もない。公共の場に六メートルの蛇を連れてきたら、文句の一つや二つは言われる。もっとも、それを言われた蛇の方もかなり怯えたようだ。ナディン先生のその一言を聞いた途端、シャツの中に頭を隠してしまったのだから。

俺は、今後は連れてこないと約束し、図書館を後にした。

最初に向かったのは自室だった。トレーニング用のベスト、重り用のシリンダー、それに薬用の錠剤を取ってくるためだ。部屋に入ると蛇はすぐに俺から離れ、布団の下に潜り込んだ。俺はため息をつきながら、必要な物をまとめて、ネヴァリアから数キロ離れた訓練場へと向かった。

現地に着くと、すぐに準備を始めた。

普段着を脱ぎ、トレーニング用のズボン、ベスト、前腕を守るヴァンブレイスを装着する。そして、重り用のシリンダーをひとつずつポケットに入れていった。全部で78個、ひとつ2.5キロ。内蔵されたルーンを起動させ、重さを6倍に増加させた。

合計:195キロ。

トレーニングは、軽いジョギングから始まる――とはいえ、俺の「ジョギング」はすでに常人のそれではない。

岩場の狭い通路を全力で駆け抜け、片方の岩を蹴って上昇、さらに反対側を蹴ってさらに高く跳ぶ。上昇の頂点で枝を掴み、その勢いを使って宙を飛び、近くの岩の上に着地。足で岩を蹴って、空中で回転しながら地面へと降り立った。

霊力というのは、技だけに使うものじゃない。外部に展開すれば、落下時の衝撃を和らげるクッションのようなものも作れる。ブレイヴ・ヴェスペリアの中に「音なき歩み」という技を使うやつがいた。足音すら出さない技だ。

着地した俺は、林の中を駆け抜けた。低い枝の下をくぐり、次の枝を跳び越え、浅い池の水面を駆け抜ける。その足元には、霊力で作った見えない橋が存在していた。

戦闘や回避の練習相手がいない俺は、自作の障害物コースを作ってジョギングの効果を高めていた。毎日ルートを変えることで、コースの景観も変わり、常に警戒を怠らないようにしている。毒を持つ動物や危険な魔獣に遭遇する可能性もあり、難易度はかなり高い。

コースを走り終えた頃には、全身がうっすらと汗で濡れていた。しかし、ここで止まるわけにはいかない。いや、止まってはいけない。過去を変えるために必要な力を得るには、限界を超えて鍛える必要があるのだ。

障害物コースを終えたその瞬間、俺は地面に倒れこみ、そのまま腕立て伏せを始めた。腕は震えていたが、「1」から「100」まで数を数えながら押し上げていく。次に仰向けになり、足を持ち上げて腹筋運動。腕立て伏せの倍の回数をこなす。そこからさらに、日が沈む直前まで休むことなくトレーニングを続けた。

すべてを終える頃には、呼吸が荒くなり、体は汗でぐっしょりと濡れていた。重り付きの服は汗を吸って、さらに重く感じられる。筋肉は悲鳴を上げていた。それでも、まだ帰って風呂に浸かる前にやるべきことがあった。

――瞬歩の練習だ。

そう思って体勢を整えようとしたとき、俺の霊的感知の端に、誰かの気配が引っかかった。すぐに振り返るが、誰の姿も見えない。だが確かに、存在は感じられる。霊感を研ぎ澄ませ、気配の主を追う。

「フェイか」

数メートル先の木を見つめながら声をかける。

最初は返事がなかった。しかし数秒後、木の陰からゆっくりと手が現れ、それに続いて、赤く輝く炎のような髪に囲まれた顔がのぞいた。

フェイ・ヴァルスティンだった。見つかったことが恥ずかしいのか、頬を赤らめながら俺を見ていた。小さく咳払いをしてから、彼女は木の後ろから姿を現した。

彼女の服装は、以前見た時とはまるで違っていた。最後に会った時の彼女は、霊毒によってできた黒ずんだ痣を隠すため、体のほとんどを覆う服を着ていた。しかし今の彼女は、はるかに肌の露出が多い服装をしていた。

まず、彼女の着ていたシャツは、以前の長袖とは違ってずっと短くなっていた。胸はしっかり隠れていたが、腹部は完全に露出しており、引き締まった平らな腹筋がはっきりと見えた。これを「シャツ」と呼べるかは疑問だ。

ショートパンツも同様に短く、もはや黒いスパッツのように彼女の下半身にぴったりと張り付いていた。丈は短かったが、その代わりに黒いストッキングが太腿から下を覆っていた。ガーターで留められたそれは、丈夫そうなブーツへと続いていた。ショーツとストッキングの間には、わずかに肌の露出があり、太腿の中央あたりが見えていた。

数秒間、彼女の服装と姿に見惚れていたことに気づいた俺は、慌てて視線を体から顔へと移した。

「エリック……」フェイが静かな声で言った。

「前よりずっと元気そうだな」

「あなたのおかげよ」フェイは微笑んだ。「霊毒はすっかり消えたわ。それに、不思議なことに、癒されたことで霊力が増したみたいなの」

俺はうなずきながら言った。「霊毒というのは、霊脈が詰まる厄介な症状だ。だけど、詰まりが解消された霊力は失われるわけじゃない。全身を巡って霊脈を広げ、最後には霊核に集まり、霊力の総量を増やすことになる」

「そうじゃないかと思ってたの」とフェイは返し、彼女の笑顔はほんの少し柔らかくなった。

「今日は修行か?」と俺は尋ねた。

「いえ、えっと……半分くらい?」フェイの頬が突然赤く染まり、目をそらした。唇を軽く噛みながら、ちらりと俺に視線を向けたかと思えば、またすぐに逸らした。彼女の足が地面の上に円を描き始めるのを見て、俺は少し眉をひそめた。

「半分くらい?」その曖昧な答えに俺は首をかしげた。

「わ、私……なんて言えばいいかわからないけど、変に聞こえたらごめんね。でも、正直に言うわ」フェイは深く息を吸い込み、まるで宿敵に立ち向かうかのように肩を張った。そして、真っ直ぐに俺の目を見つめてきた。その瞳には、無視できないほど強い決意が宿っていた。

「私を訓練してほしいの!」

「……は?」

脳が一瞬、ジリッと焼ける音がした気がした。

「訓練してほしいの」と彼女はもう一度言った。

「いや、聞こえてたよ」俺は手を上げて彼女の言葉を止めた。そして、決意と恥ずかしさを同時に放っている少女を見つめた。「でも、どうして俺に? 正直、今の俺はそれほど強くないぞ?」

「わかってる……でも、それでも訓練してほしいの!」

左腕を右手でぎゅっと掴む彼女の姿を見ながら、俺は、彼女がなぜ俺に頼ろうとしているのか考えていた。まあ、訓練ならできなくもない。前世では人を鍛える経験もあった。しかし、フェイがそれを知っているはずはない。では、何が彼女にこの自信を与えているのだろうか?

「俺が……霊毒を治してやったからか?」

俺の問いに、フェイの顔がみるみるうちに真っ赤になっていく。俺の言葉が、彼女の記憶を刺激したことは間違いなかった。俺自身も、あの“マッサージ”のことを思い出すと、ほんの少し顔が熱くなる。

「そ、それもあるけど……」とフェイは認め、すぐに首を横に振った。「でも、それだけじゃなくて……私、強くならなきゃいけないの。家族の誰も、私を助けてくれる人がいないのよ」

「ヴァルスタイン家は小貴族だよな? だったら、指導者を雇うことはできないのか?」

フェイは複雑な表情を浮かべ、首を横に振った。「ヴァルスタイン家は今、かなり困窮してるの。昔みたいな財力はもうないし……正直、貴族としての地位を失う寸前なの」

カリから、優れた指導者を雇うにはかなりの費用がかかると聞いたことがあった。そう考えれば、フェイが家の財産や地位を使わず、俺に助けを求めてきたのも納得できる。同時に、俺は少し驚いていた。なにせ、俺たちはほとんど面識がない。霊毒を治療した時以外、接点なんてなかったはずだ。

だが、霊毒を取り除いたことが、彼女にとって大きな決め手になったのは間違いない。あの時助けてもらえたから、今度も助けてもらえるかもしれない。そう思ったのだろう。

そして実際――俺にはできる。訓練を施すことも、導くことも可能だ。だからこそ、俺は迷っていた。

俺には、自分自身の修行がある。もっと強くならなければならない。フェイの訓練を引き受ければ、その分、自分の成長は遅れるだろう。それでも……

彼女の瞳に宿る切実な思いを見た瞬間、俺は断ることができないと悟った。

「強くなりたい理由って、やっぱり家の地位を守るためか?」と俺は尋ねた。

続きを翻訳しますか?

フェイは一瞬ためらったあと、答えた。

「それもあるわ。でも……家の問題がきっかけになっただけで、今私が抱えているのはもっと個人的な問題なの。だから、強くならなきゃいけないの」

「つまり、個人的な事情ってことか」俺が推測すると、フェイは頷いた。

俺は鼻をこすりながら、彼女をじっと見つめた。そして、覚悟を決めた。

「よし。俺の修行に付き合ってもいいぞ」

「ほんとに!?」フェイの顔がぱっと明るくなる。

「ああ」俺は頷き、彼女がお礼を言おうとする前に手を上げて制した。「ただし、いくつか準備してもらうものがある。俺の修行の一部には、錬金術で作られた錠剤や、今着ているような加重装備が必要だ。それらを君のために用意する余裕はないから、自分で用意してもらう必要がある」

フェイは首がもげそうな勢いで頷いた。「大丈夫! ヴァルスタイン家は昔ほどの財力はないけど、あまりお金がかからないなら、なんとかなると思う」

「そうか」俺は微笑みながら手を差し出した。「じゃあ、これからは一緒に強くなっていこうな」

「うんっ! 楽しみにしてる!」

朝日を浴びた向日葵のような笑顔を浮かべながら、フェイは俺の手をしっかりと握り返した。

この日、俺たちのパートナーシップは始まった。

だが、その先にどれほどの試練や困難が待ち受けているのか、俺はまだ何も知らなかった。

……もっとも、やがて彼女の存在が俺にとってどれほど大切なものになるのかを思えば、そのすべては些細な問題に過ぎなかったのかもしれない。

ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます!

この章で、第1巻は終了となります。これからも物語を書き続けていく予定ですので、読んでくださっている皆さんが、今後も楽しんでいただければ幸いです。

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