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図書館での会話

「最近あまり来られなくてごめんね」

カリはそう言って、私と一緒に図書館の二階のテーブルに座っていた。あの蛇は、上の梁にぶら下がっていた。幸いなことに、この階を利用するのは私たちだけだった。誰でも上がれるはずなのに、まるで立ち入り禁止の場所のように、他の人たちはこの階を避けている。

「謝る必要なんてないよ」

私は首を振ってそう返した。「忙しかったんだろ?」

カリの唇が嬉しそうにほころび、うなずいた。

「うん!エリックがくれた錠剤、言われた通りに使ってるよ。それが本当に効いてるみたい。ブリュンヒルド教官も私の成長にすごく驚いてくれて、最近はさらに厳しい訓練をしてくれてるの。それに霊術の使い方もかなり上達して、学院の先生たちにも注目されるようになったの。だから、いつもより忙しくなっちゃって、なかなか来れなかったの」

カリと会うのは、およそ十六日ぶりだった。あの錠剤の効果が出始めたのは、ちょうどそれくらい前のことだろう。錬金術で精製された錠剤は、人によって効果が現れるタイミングが異なる。特に修行の助けとなるタイプの錠剤はその傾向が強い。私の場合は四日ほどで効果が出始めたが、カリにはもう少し時間がかかったようだった。

「効果が出てるならよかった」

「すごく効いてるよ」

カリの表情は明るく、希望に満ちていた。

「ブリュンヒルド教官はね、『このまま成長を続ければ、実力はともかく技量ではゲイロルフと肩を並べられる』って言ってくれたの」

「ゲイロルフって、君の兄弟の中で一番下なんだよな?」

「そうだよ」

カリはそう言って、顔にかかった髪を耳にかけた。彼女の瞳はずっと私を見つめていた。

「今は十八歳だけど、あと二ヶ月で十九になる」

「じゃあ、君より二歳上ってところか」

「二歳半だね」

私は彼女の兄たちについてあまり知らなかった。というのも、カリ自身がその話題をあまり出さなかったからだ。前の人生でも、数えるほどしか名前を聞いたことがなかった。この人生では一、二回程度。それも、話が深まることはなかった。もしかしたら、彼女は意図的にその話題を避けているのかもしれない。

「魔獣山脈を探索させてもらうには、どれくらい強くならないといけないと思う?」

私の問いかけに、カリの笑顔はゆっくりと消え、代わりに戸惑いの色が浮かんだ。

「わからない……。正直に言うと、その話題を出すのが怖いの」

カリは首を横に振った。「前に一度、母様にそのことを聞いたら、『あんな危険な場所に行く必要はない。二度とその話をするな』って言われて……」

「そうか……」

私たちの間に、気まずい沈黙が流れた。何を言えばいいのかわからなかった。せっかくの明るい雰囲気を壊してしまったことに、胸の奥が痛んだ。

カリとヒルダ皇妃の間に何があるのかは、私にはわからなかった。だが、少なくとも今のカリは、自分の願望を母親に打ち明けることに強い不安を抱えているようだった。

それが、彼女が私にだけ素直に話してくれる理由なのかもしれない。

「エリックも修行してるんだよね?」

カリが自然に話題を変えてくれた。「調子はどう?」

「順調だよ」私はうなずいた。「霊力の制御もかなり上達したし、身体能力も着実に伸びてきてる。今ならCランクの魔獣くらいなら倒せる自信がある」

もし武器さえあれば、Bランクの魔獣とでも戦えるかもしれない。だが、私の武器は“定規”――ただの大きな金属の塊だ。本来なら戦闘に向いているとは言い難い。

もちろん、前の時間軸で私が使っていた定規は“定規”と呼べる代物ではなかった。

“ドラゴンテイル・ルーラー”は、ニザヴェリルに住む種族・ドワーグたちが、私のためだけに鍛え上げてくれた武器だ。

残念ながら、今の私は彼らに武器を作ってもらうどころか、ニザヴェリルへ行くためのワープゲートすら見つけていない。

「それって、本当にすごいよ!」

カリが目を見開き、素直に驚いてくれた。「Cランクの魔獣を倒すには、普通はスピリチュアリストの小隊が必要なんだよ? 隊長クラスの人なら一人で倒せるって言われてるけど、それでも相当な訓練と霊力が必要だって」

私は笑いながら首を振った。「まだ実戦で魔獣と戦ったことはないからね。今の実力は、あくまで自分での推測にすぎない。本当に倒せるかどうかは、戦ってみなきゃわからないさ」

「それでも、十分すごいと思う」

カリはまっすぐ私を見つめ、瞳を輝かせていた。だがすぐに頬を赤らめて、視線をそらした。

「今のエリック……前よりずっと強くなってるのが、ちゃんと伝わってくるよ」

「わかるの?」

私が尋ねると、カリはうなずいた。ただ、視線はまだ私を見ていなかった。

「えっと……その、エリックの体、前よりずっとたくましくて、鍛えられてる感じがする」

「……ああ」

何と返せばいいのかわからなかったが、彼女が変化に気づいてくれたのは素直に嬉しかった。

実際、肩幅は広くなり、胸や腕の筋肉も以前よりはっきりと浮かんでいる。脚も引き締まり、力強さを感じられるようになった。腹筋も割れてきている……まだうっすらとしか見えないが、それでも自分でも違いがわかる。

薬用の錠剤を使って鍛錬を始めて、もうすぐ一ヶ月。六十三日間、修行を積んだ結果、身体は確実に強くなった。

だが、それでも一般的な筋骨隆々の戦士たちのような体つきではなかった。肩や胸、腕、脚は少し大きくなったとはいえ、私はまだ“細身”の部類に入る。

私の筋肉はしなやかで無駄がなく、それゆえに気づかれにくい。

だからこそ、カリがその違いに気づいてくれたというのは、つまり……よく見てくれていたということなのだろうか。

「ありがとう」

私は小さく呟いた。ほんの少し、頬が熱くなるのを感じた。

カリは視線をあちこちに彷徨わせながら、私を見ようとしなかった。

「ど、どういたしまして……」

またしても気まずい沈黙が流れる。

何か言って、この空気を変えるべきだと思った。

――思い切って「筋肉、気に入った?」なんてからかってみようか。でも、今それを言ったら、また逃げられてしまうかもしれない。前みたいに。

けれど、最近の彼女はもう、あの頃とは違っていたような気もする……

「エリック……実はずっと黙っていようと思ってたんだけど……」

からかってもいいかどうか迷っていた、その時だった。

カリがふいに口を開いた。

私は彼女の方を向いた。

だが、カリはこちらを見ていなかった。視線は天井の梁にだらりと身を預けている、あの蛇に向いていた。

「……どうして図書館に蛇がいるの?」

彼女の問いに私は上を見上げた。

その瞬間、蛇もこちらの視線に気づいたのか、ゆっくりとこちらを見返してきた。

舌をぺろりと出して、それからまた、我が物顔で寝そべり始めた。

「それ、こっちが聞きたいくらいだよ……」

私はぼそりと呟いた。肩が力なく下がり、ため息混じりに項垂れた。

これで次の章が完成しました。読んでいただき、ありがとうございました!楽しんでいただけていれば嬉しいです。

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