この蛇は厄介者だ!
問題発生
「お前はついて来ない。」
俺は肩に巻き付いている蛇に向かって言い放った。こいつは今、俺の肩にずっしりと乗りながら、頑固そうな目で俺を見つめている。
「まず第一に、今日は図書館を開けるために行くんだ。そんな状態で仕事ができると思うか? 第二に、六メートルもある蛇が街中に現れたら、誰だってパニックになる。第三に――」
そこで言葉に詰まり、眉をひそめた。
「……まあ、三つ目はないけどな。とにかく、お前は連れていけない。」
蛇はじっと俺を見つめている。
「そんな目で見るな。いくら睨んでも、図書館には連れて行かないからな。」
不満げな鳴き声を上げながら、蛇はさらに視線を強めてきた。
問題が起きたのは、今朝、図書館に向かおうとしたときだった。部屋に置いていたこの蛇が、出かけようとする俺に巻き付き、ドアの前で動こうとしなかった。断っても、あたかも「連れて行くのが当然だろ」とでも言いたげに、俺の肩に巻き付きやがった。
「気持ちは分かる。家の中にずっといるのが退屈なのはな。でも、お前が自分の意思で俺についてきたんだ。気に入らないなら、また野生に戻ることを考えてみたらどうだ?」
蛇は首を横に振った。
その瞬間、俺の右目がピクリと痙攣する。
「連れていかないって言ってるだろ。それが最終決定だ。」
結局、蛇を連れて行くことになった。
あの頑固なヤツと押し問答している時間はなかったし、俺が急いでいたのに対して、蛇の方はまったく急ぐ気配がなかった。最終的に、肩に巻き付かせたまま、妙に長くて鱗だらけのスカーフのようにして出かけるのが一番手っ取り早かった。
「みんな俺を見てるじゃねえか……」
俺はため息をつきながら、肩の上の蛇を睨んだ。
「お前のせいだぞ、わかってんのか?」
すると蛇は――笑った。いや、本当に。ヒッシィィ……と妙に愉快そうな声を出した。こいつ、俺のことを笑ってやがるのか!? ふざけるな!
存在を無視するようにして、俺は無言で図書館へと歩いた。その道中、周囲からは驚愕の息遣いや、目を見開いた視線、悲鳴、さらには恐怖に駆られた人々が逃げ出す音が聞こえてくる。
どうやらこの街の連中は蛇が苦手らしい。すれ違った人の多くが後ずさりし、中には逃げ出す奴もいた。まったく、面倒くさい。
ようやく図書館に到着し、扉を開けて中に入る。ようやく視線から解放されて、俺は一息つこうとした。……が、俺の肩にはまだ蛇が乗っている。つまり、完全に一人というわけではなかった。
それでも、立ち止まっている暇はない。
「ほら、降りろ。」
蛇を宥めて肩から下ろし、俺は開館準備に取りかかった。蛇の方はというと、六メートルもある体を滑らせながら、図書館の中を好き勝手に動き回っている。
「人が来始めたら、大人しくしてろよ。」
俺は蛇に忠告した。
「邪魔にならないように、ちゃんと俺の側にいろ。」
蛇は適当な感じでうなずくと、本棚をよじ登り、屋根の梁の上に居座った。俺はその姿を見上げ、梁に身体をだらりと垂らす様子にため息をついた。今は無視するしかなさそうだ。やるべき仕事は山積みなんだからな。
図書館を開けてから約一時間後、人が来始めた。
うちの図書館はかなり人気がある。ネヴァリアにある四つの図書館の一つというのも理由の一つだが、それ以上に、香里がよくここに来るという噂が広まったからだと俺は思っている。もうそれは、ある意味「常識」と化しているらしい。
ところが、その人たちの何人かは、天井から蛇が突然降ってきて舌をチロチロさせる姿に腰を抜かし、そのまま逃げ出していった。
「こらっ!」と俺は蛇の頭をぺちんと叩き、真面目な説教をしてやったが――効果はなかった。
あまりにもしつこいので、ついに我慢の限界が来た俺は、梁から蛇を引きずり下ろそうと試みた。
「お前は厄介なんだよ! さっさと降りてこい!」
蛇はシューッと不満そうな声を上げる。
「その態度はなんだ! ちゃんと大人しくしてろって言っただろ! 梁に登る権利は没収だ!」
さらにしつこくシューッと鳴く蛇。俺はもうキレかけていた。
今は完全に蛇との綱引き状態だった。ヤツは体を支柱に巻きつけ、絶対に動こうとしない。力づくで引き剥がそうにも、支柱がギシギシと不穏な音を立てるため、全力は使えなかった。
「もういい、雷で焼くぞ……」
そう呟いて魔力を練り始めたその瞬間、図書館の扉が開いて、誰かが中に入ってきた。そして、聞き覚えのある声が響いた。
「えっと……何してるの?」
振り返ると、そこには困惑した表情を浮かべた香里が立っていた。
今回の章はかなり短めでした。正直、今にも寝落ちしそうなくらい眠いです。帰国してすぐに仕事に没頭していたのが、とうとう体にきたみたいですね。でも、今回の話を楽しんでいただけたなら嬉しいです。