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新しい装備

商人区に到着する頃には、すでに大勢の人で賑わっていた。

露店には商人たちが並び、それぞれが声を張り上げて商品を売り込んでいる。

焼きたてのパン、香ばしい肉、甘い果物の香りが空気を満たしていた。

荷車が石畳をきしませながら行き交い、買い物客たちは巧みにそれを避けながら歩いていく。

だが、俺には関係なかった。

今日の目的はただ一つ――修練用の重り付き衣装を受け取ることだ。

露店を抜け、大通りから一本入った通りに入ると、お目当ての仕立て屋が見えてきた。

鍛冶屋と薬草店に挟まれた控えめな建物だ。

針と糸が描かれた簡素な看板が、鎖に揺れていた。

扉を押し開けると、頭上で小さな鈴の音が鳴った。

中には、以前俺の採寸をしてくれた中年の女性がいた。

針を指に挟み、腕には布地を掛けている。

俺の姿を見るなり、鋭い目つきでこちらに手招きした。

「――ああ、あんたか。特注の修練服を頼んでいた若いのだね」

彼女は手にしていた作業を脇に置き、カウンターの向こうに出てきた。

「運がいいよ。今朝、最後の調整が終わったばかりさ。あんたみたいな歳の子がこんなものを頼むなんて珍しいね。兵士にでもなるつもりかい?」

「――まあ、そんなところです」

俺は肩をすくめて答えた。

女性は含み笑いを浮かべると、奥に引っ込んだ。

俺はその間、壁に掛けられた様々な布地を眺めた。

綿、絹、希少な魔獣革――目が飛び出るような値段が付けられている。

ここで服を仕立てるのが、どれほど贅沢なことかがよく分かった。

やがて、女性が布に包まれた大きな包みを抱えて戻ってきた。

「はい、これだよ。頼まれていた一式――上着、ズボン、ブーツ、それに手袋だ。重ねた布地の間に鉛の薄板を縫い込んであるからね」

カウンターの上にそっと置き、誇らしげに手で叩いた。

「上着とズボンで合計二十キロ、ブーツと手袋でさらに五キロ。これなら負担をかけすぎず、しっかり鍛えられるはずだよ」

「……完璧です」

俺は感心しながら頷いた。

重り付きの衣装は、ネヴァリアでは珍しい修練方法だ。

だが、かつての俺はそれを当然のように使っていた。

動くたび、歩くたび、常に負荷がかかる――だが、それこそが必要なものだ。

俺はあらかじめ用意していた四千五百ヴァリスを支払い、重い包みを受け取った。

財布が軽くなる痛みを覚えたが、強さを手に入れるには犠牲が伴う。

それは昔から変わらない真理だった。

包みを小脇に抱え、俺は店を後にした。

鍛錬を――本当の意味での鍛錬を、始める時が来た。

目的地を思い浮かべながら、仕立て屋の店へ向かった。

中に入ると、何人かの客が服や生地を見て歩き回っていた。さらに奥へ進むと、仕立て屋の女性が自分より数歳若い少年を採寸しているのが見えた。少年は年上の彼女に夢中らしく、顔を真っ赤にしながら彼女から目を離さなかった。

彼女が作業を終えるまで待った。少年が台から飛び降りると、俺は歩み寄って声をかけた。

どうやら俺が来るのを予想していたらしく、仕立て屋の口元に艶やかな微笑みが浮かぶ。

「今日あたり来ると思ってたわ。頼まれていた服、ちゃんとできてるわよ」

「ここで待ってるよ」

俺は両腕を広げ、どこにも行かないことを示した。

仕立て屋は奥の部屋へ入り、数分後に黒い衣服を何着か抱えて戻ってきた。

彼女はその中でも一番大きなもの、黒のズボンを俺に手渡した。

「一つずつ試着してちょうだい。サイズを確認したいから」

頷いた俺は、ズボンを脱ぎ、下着姿になった。

周囲の女性たちがこちらを見てクスクス笑っているのを感じたが、気にせず、新しいズボンに脚を通し、腰の紐をぎゅっと締めた。

「次はベストね」

仕立て屋はベストを手渡し、それをシャツの上に羽織った。

「それから、腕甲ワームブレイス。」

ワームブレイスとはいっても、実際には丈夫な紐で腕に巻きつけるタイプの布製だった。

「うーん……少しバランスが悪いわね」

仕立て屋は顎に手を当てながら、じっと俺を見つめた。

仕立て屋の言葉を無視して、俺は自分の姿を見下ろした。

ベストは黒い革製で、腕甲ワームブレイスも同じ素材だった。ズボンは厚手のウールで作られている。

ベスト全体には小さなポケットがびっしりと縫い付けられていた。腕甲やズボンにも同様のポケットがついているが、膝関節の動きを妨げないよう、ズボンのポケットは太腿とふくらはぎ周辺に限定されていた。

「正直、あんな奇妙な依頼は初めてだったわ。」

仕立て屋は腰に手を当て、胸を誇らしげに張りながら言った。

「でも、ちゃんと希望通りに仕上がったと思うわよ。」

「うん。まさに求めていた通りだ。」

俺の言葉に、仕立て屋は満足そうに微笑んだ。

残りの代金2,500バリスを支払い、これで所持金は10,000バリスになった。

今日やらなきゃいけない用事は、あと二つ。

まずは薬屋へ向かい、赤炎草せきえんそうを1,000グラム、スピリットエッセンスを1,500ミリリットル、ニルンルートを1本、それとDランク火属性モンスターコアを一つ購入した。

支払いは5,500バリス。手持ちはさらに減って、4,500バリスに。

……思ったよりギリギリかもしれない。

本当なら自分で素材を集められればいいのだが、ほとんどは魔獣山脈デーモンビーストマウンテンレンジにしか存在しない。

今の俺じゃ、許可証もないし、あの場所に踏み込んだところで生きて帰れるとは思えない。

最後の目的地は鍛冶屋だった。

店に入った瞬間、焼けるような熱気が顔にぶつかり、たちまち汗が噴き出した。

奥の炉では、轟々と炎が燃え盛っている。

店内には、鎧や武器が所狭しと並んでいた。

胸当て、鎖帷子、剣、杖、スタッフ、鎌──さらには、使いこなせる者が少ないモーニングスターまで目に入った。

店の奥、炉のそばでは、大男が溶けた鉄の塊を巨大なハンマーで叩きつけていた。

髪は長く、後ろでひとつに束ねられている。

広い肩幅と分厚い胸板は、毛のない獣人ウェアビーストを連想させた。

忙しそうだったので声をかけず、まずは武器を見て回った。

種類は豊富だったが、どれも俺が使いたいと思えるものではなかった。

やがて金属を叩く音が止まった。

振り返ると、大男が鉄の塊を水桶に沈めているところだった。

ジュッと音を立てて蒸気が立ち上り、数秒後には静まった。

男は鉄を引き上げ、じっと形を確かめた。

両刃の形と長さから見て、どうやら普通のブロードソードを鍛えているらしい。

ようやく俺の存在に気づいた男が声をかけてきた。

「何か買いに来たのか?」

俺は首を横に振った。

「いえ、依頼に来ました。」

「注文か。」

男は作業台にある新しく作った剣の束に鍛えたばかりの剣を置き、こちらへ歩いてきた。

身長差はそれほどなかったが、彼の圧倒的な体格のせいで、妙に小さく感じた。

「どんな依頼だ?」

男の問いに答えるように、俺は仕立て屋から受け取ったベスト、ズボン、腕甲ワームブレイスを見せた。

彼は興味深そうな目つきでそれらを見つめた。

困惑したような表情に、思わず笑みが漏れる。

「このポケットに収まる金属製の筒を作ってほしいんです。全部で七十八個あります。費用はどれくらいになりますか?」

「金属筒だけか。」

男はちょっと不満そうな顔をしつつも、すぐに頭の中で計算した。

「材料費と工賃を考えると……四千バリスってとこだな。」

ほっと胸を撫で下ろした。

「それでお願いします。支払いは先払いですか? それとも後払い?」

「先払いだ。」

男は顔をしかめながら、さらに続けた。

「この程度なら二日もあれば終わるだろう。」

「助かります。」

そう答えて、俺は四千バリスを支払った。

これで手持ちは五百バリス。

二日後には、本格的な修行を始められる──

そんな期待を胸に、俺は商業区マーセントディストリクトを後にした。

今回も読んでいただき、ありがとうございました。

実はこの投稿を書いている今、体調を崩してしまいました。

昨夜、雨に濡れてしまい、それが原因かと思われます。

お粥は少し食べられたのですが、食べ物の匂いだけで吐き気がしてしまいました……。


そして、今日は日本滞在の最終日でもあります。

明日にはアメリカへ帰国しますが、できる限り、帰国後も変わらず投稿を続けていきたいと思っています。


本当に、日本は大好きな国です。

また必ず戻ってきたいと心から思っています。


こんなふうに、皆さんに読んでいただけていることに、心から感謝しています。

これからもどうぞよろしくお願いします!

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