エリックの衝撃的な強さ
――カリ視点
エリックの霊圧があたりに放たれた瞬間、私は身体がビクンと震えるのを感じた。
まるで霊雷術を受けたかのように、背筋が自然と正される。
闘技場の中央を見下ろすと、地面を揺るがすような霊力の波が視界に広がっていた。
その波動は大地に亀裂を走らせ、床を覆い尽くすほどの力を持っていた。
青白い霊力の柱が、まるで水の竜巻のように渦を巻いて立ち昇る。
そこに雷のような光がバチバチと走り――まるで嵐そのものだった。
私だけじゃなかった。
周囲を見れば、兄たち三人も言葉を失っていた。
ゲイロルフは苦い薬でも飲んだような顔で、口をぽかんと開けたまま固まっている。
ミッケルは背筋を伸ばし、目を見開いてじっと闘技場を見下ろしていた。
そしてアーランドは――彼の瞳には、驚きというよりも、もっと鋭く強い光が宿っていた。
まるで、何かを見抜いたかのような眼差し。
「この霊圧……間違いない……同じだわ……まったく同じ……」
気がつけば、私は小さく呟いていた。
胸に手を当てる。
鼓動が速くなっている――まるで、檻の中に閉じ込められた魔獣が暴れているように、心臓が激しく跳ねていた。
霊力が、魂の奥深くにまで響いてくる。
「同じって、何が?」
母の静かな声に、私はハッと我に返る。
「三ヶ月ほど前に突然現れた、あの霊圧を覚えていますか?」
そう言ってから、母の返事を待たずに私はエリックを指差す。
「……今、彼から感じる霊力。あれと同じ感覚なんです。ただ――もっと洗練されてるというか……精錬された霊圧って感じがします」
「やはりね」
母がそっと呟く。
「私には、あなたほど彼の霊力を敏感に感じ取る力はないけれど……それでもこの子の霊的署名は、どこか特別なものだとは気づいていたわ。最初は気のせいかと思ったけど、あなたが同じことを言うのなら――間違いないのでしょうね」
母は眉間にしわを寄せ、低く呟いた。
「まったく……どうしてこの子が、これほどまでに我々の感知をかいくぐってきたのかしら……?」
私には、答えられる言葉などなかった。
ただ黙って、視線をエリックへと戻す。
――どうして、彼の霊力は、こんなにも私の魂に響くの?
***
――フェイ視点
「な、なんてこった……!」
誰かが控え室でそう呟いた。けれど、フェイには誰の声か分からなかった。
部屋の中は、ほとんど沈黙に包まれていた。
全員が窓の外を見つめている。闘技場で繰り広げられる戦いから、誰も目を離せなかった。
最初は単なる小競り合いに見えた――エリックとグラントの戦いは、それほど特別なものではなかった。
けれど今、それは次元の違う何かへと変貌していた。
まるで噴水のように、膨大な霊力がエリックの身体から吹き出している。
その霊力は彼の周囲を渦巻き、まるで水の渦潮のように形を成していた。
そこに混じる雷の閃光は、周囲に激しく弾け、破壊的な力を感じさせた。
……にもかかわらず、奇妙なことに、闘技場には何一つ損傷がなかった。
床に走ったひび割れだけが、彼の霊力の凄まじさを物語っている。
最初に霊圧を解放した時に生じた亀裂だけが残されていた。
「なんて強烈な霊圧……」
女性の一人が胸に手を当てて呟いた。
「こんなの、今まで感じたことないわ……」
「うわー、なんか戦いたくなってきた。相手、変更できないかな?」
「はっ!もし誰かがあの男と戦うとしたら、それはこの俺だ!」
「寝言は寝て言いな!」
カタリナとマルコ・クリガーが騒がしく言い合いを始める中、
フェイはゆっくりと胸に手を当てた。
心臓が――まるで獣のように、暴れていた。
ドクン、ドクン、と、耳の奥まで響く鼓動。
肋骨を突き破る勢いで高鳴るその音に、思わず手が強く胸を押さえてしまう。
……なぜ?
なぜ、こんなにも胸が騒いでいるの?
答えは――分からなかった。




