ファーストコンタクト・後編
「これが罠ってわけ?」
エリカがぼそりとつぶやいた。「よく気づいたわね」
「でも、これが最初の罠よ」
カリは少し浮き上がった石板の上に手を置いた。「ここにももう一つある。このタイルを踏んだ瞬間に次の罠が作動するはず。多分、壁や天井が迫ってきて押し潰されるか、床が開いて下のトゲだらけの落とし穴に落とされるかね」
戦乙女たちはゴクリと唾を飲み込んだが、カリは気にする様子もなく立ち上がった。「行きましょう」
俺とカリが先頭に立ち、まだ作動していない罠を避けながら進んだ。遺跡の奥深くへと道は続いていた。階段は見当たらず、代わりに横道や分かれ道が多数あったが、ほとんどは罠付きの行き止まりだった。
部屋もいくつかあった。大半は空で、棺がずらりと並んでいるだけだったが、何部屋かは激しい戦闘があった痕跡が残っていた。
破壊されたゴーレムや、マントを着た死体がいくつも転がっていたのだ。
「これで少なくとも、カルトの連中がここにいるのは間違いないと分かったわね」
エリカがその一体の死体を見下ろしながらつぶやいた。
マントはボロボロに破れ、下に隠れていた醜い姿が露わになっていた。
それは以前見た、青白い肌に赤い目、尖った耳を持つ生き物と同じだった。
「けど…こいつが一体何なのか、まったく見当がつかないわ」
エリカは眉をひそめた。「魔獣には見えないけど、人間とは到底言えないし…私たちが知ってるどの種族にも該当しない」
「ここにいても答えは出ない。先を急ごう」
俺はそう言って、部屋を後にした。
俺たちはまた廊下を進み、罠を避けながら、さらに多くの死体と出くわした。
中には明らかにカルトの連中だと分かる者もいたが、村人と思しき遺体も混じっていた。
「こいつら、ほんと最低」
カレンが顔をしかめて歯ぎしりした。
「同感だ」
エリカも静かに同意した。
俺たちは、ついに巨大な空間へとたどり着いた。
二階建てのような造りだったが、各階は床というより“通路”といった方が正確だろう。
俺たちが立っている場所も、深い奈落の上に浮かぶ一本の橋のような通路だった。
左右を見下ろすと、果てしない暗闇が広がっており、底がまったく見えなかった。
その通路の先に、これまでで一番大きな扉があった。
まるで巨大な石の塊を削って扉の形にしたかのようで、そこには入り口の像と同じ人型の人物が描かれていた。
今回は、その人物が槍を持ち、異形の怪物たちと戦っている姿が浮き彫りにされていた。
その怪物たちは人に似ていたが、肩、肘、膝、頭から突起物のようなものが生えており、明らかに普通の人間ではなかった。
その中で槍を振るう彼は、古代神話の英雄そのものに見えた。
カリはその巨大な扉の前に立ち、手を当てた。
俺は彼女の隣に立ち、戦乙女たちも後ろに並んでいた。
やがてカリが振り返り、部屋を見渡した。
「この扉、押して開けるのは無理ね」
カリは断言した。「このタイプの扉は、重さを考慮してレバー式の仕組みで開くようになってる。たいていは、複数の床のスイッチを同時に踏むことで作動するの」
彼女は部屋を見上げ、指をさした。「あそこ。あそこ。あそこ。それと、あそこ。あの四箇所に誰かが立てば、扉が開くはずよ」
彼女の指差した場所は、最初は上階の崩れかけた通路の端に見えたが、よく見ると、頑丈そうな鎖で吊られていることが分かった。
しかも、上下の通路全体の形をじっくり観察すると、アルファベットの「E」に、もう一本“足”が生えたような形になっていた。
「ここからじゃ上に登れそうにないな」
俺は左側に目をやり、通路を指差した。「でも、あそこにある通路からなら、上の階に行けそうだ」
「じゃあ、そっちへ行きましょう」
エリカが頷いた。「カレン、あなたはここでカリと一緒に残って。私とジャネット、ルカ、それとエリックで上に行くわ」
「了解です、隊長」
カレンがきびすを返して敬礼した。
「気をつけてね」
カリが声をかけてくる。
「もちろん」
そう返して、俺は三人の戦乙女を連れて通路を進み始めた。




