表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
179/206

エリックの強さ②

「ついに俺たちで、どっちが上か決着をつける時が来たようだな!」

男が叫び、剣を構えながら相手の女を睨みつける。

女はにやりと微笑み、その瞳には烈火のごとき闘志が燃え上がっていた。

すでに彼女の刃は男の剣と交差しており、互いに力を込めて押し合っている。

金属同士が擦れ合うたび、火花が散った。

(――力比べか)

同時に、二人の霊装スピリチュアルオーラが天へと伸びるように膨れ上がる。

女の霊装は水のように流麗で、青く輝くオーラが身体を包み込んでいた。

対して男のオーラは緑色で、まるで空気そのものを纏っているかのような、透明感のある光だった。

(風か)

「いいわね!今日こそ、どちらが強いか決めましょう!」

二人は刃を離し、地を蹴って円を描くように動いた。まるで剣舞のように美しく、鋭い動きだ。

そして――

剣を振るった瞬間、それぞれの霊術が放たれる。

女の剣からは奔流のような水の波が生まれ、男の剣からは三日月型の緑の斬撃――風の霊術が放たれた。

二つの技が空中で激突し、衝突点の周囲が歪んで見えるほどの圧力がぶつかり合う。

本来ならば相殺されて終わるところだろう。

だが――

「はあっ!」

男が再度、剣を振るった。

再び風の霊術が放たれ、最初の攻撃に重なるように加勢する。

風の霊術が二重になったことで、水の波は押し返され、ついには打ち破られた。

斬撃はそのまま女へと向かって飛び――地面へ着弾。

爆音と共に、地面に蜘蛛の巣状の亀裂が広がる。

だが、女の姿はすでにその場になかった。

彼女は風の衝撃波を利用し、空中へと跳躍していたのだ。

風に乗り、男の頭上を超えるように跳躍――

宙を回転しながら剣を何度も振る。

「はっ!やぁっ!」

そのたびに、水の弾丸――まるで砲弾のような圧縮水球が男へと飛んでいく。

男は真剣な表情で、身体を捻ってかわし続けた。

そのうちの一発が地面に着弾。

ドンッという重たい爆発音と共に水が四方八方に飛び散った。

水そのものに攻撃力はなさそうだったが――

爆発後の地面には、大きな凹みがいくつもできている。

直撃を受ければ、ただでは済まないだろう。

男も、それを理解しているようだった。

「この日のために、ずいぶん腕を上げたわね!」

男の剣が再び空を斬り、霊術が迸る。

女は笑いながら地面に着地し、その斬撃へ向かって剣を突き出した。

二人のネヴァリア霊装兵による戦いは確かに興味深い。

だが、俺にはそれを見守っている余裕はなかった。

残る二人の霊術士――あの女と男が、すでに霊装を展開して俺に向かって突進してきていたのだ。

女の霊装は濃厚な紅――燃え盛る炎のような色合いだった。

男の霊装は土を思わせる茶緑色。恐らく、主属性は【土】、副属性に【風】といったところか。

「二人がかりで俺を倒すつもりか?」

俺は肩に片手で定規ルーラーを担ぎながら、挑発気味に問いかけた。

「ふん、悪く思わないでね」

女が冷たく返す。

「ただの仕事だよ。ある人物から“お前に教訓を与えろ”って依頼されたんだ」

男も飄々と告げた。

――誰かに雇われた?

アルバートか? いや、あいつはこういう陰湿な手は使わないはず。

となると……グラントか。

どちらにしても、これは好機だ。

「なるほど。だったら――まとめてかかってこいよ」

俺はルーラーを両手で握り直す。

久々に、体をしっかりと動かす戦いがしたかった。

俺の挑発に、二人は目を細めた。何かを察したのかもしれない。だが、足は止めない。

地を滑るように足を踏み込む。

両手に力を込めると、革製のグリップがギリッと音を立てて軋んだ。

身体中を駆け巡る霊力――まるで雷のように鋭く、力強い。

そのエネルギーが腕を通り、ルーラーに流れ込む。

バチバチと白い雷光が定規の表面に走る。

――カチリ

仕込みが作動し、ルーラーの十一の節がロックを解除。

ガチャン、と音を立てて連結が外れ、鎖のように連なったルーラーの節が蛇のように前方へと伸びる。

巨大な爬虫類の尻尾のように――

俺はその全てを雷の霊力で繋ぎ、自在に操った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ