笑うべきか、泣くべきか
笑えばいいのか、泣けばいいのか、赤面すればいいのか……フェイにはもう分からなかった。
エリックは、そんな心に響く言葉を何の苦もなく口にできるのに、自分がその言葉をどう受け取っているかなんて全く気づいていない様子だった。
きっと彼にとっては、ただの友人に向けた何気ない言葉に過ぎないんだろう。
でも――自分にとっては、それ以上だった。
「その服……」
エリックが彼女を上から下まで見て、呟いた。
「……あたしの服、何か変か?」
思わず、ちょっとだけ気恥ずかしさが滲むような声になってしまう。
フェイの服装は、黒と赤を基調としたコート。裾は太ももの辺りで広がり、金の縁取りが施されていた。
胸元には、黒と金の胸当て。それを革のストラップで固定している。肩当ては左側だけにあり、小さく控えめなデザインで、全体と同じ黒と金の配色だった。
右肩は露出しているが、そこからは革のバンドで固定されたタイトなスリーブが、手首までしっかりと覆っていた。
そのほかには、白いインナーシャツ、黒いズボン、そして赤と金の膝当てがついた黒いブーツ。
「いや……」
エリックは首を振った。「変なとこは何もない」
そして顔を逸らす。その瞬間――フェイは見逃さなかった。彼の頬が、ほんのり赤く染まっていた。
「……似合ってるよ」
「……っ!」
思わず息が漏れる。顔が一気に熱くなった。頬が火照る。
それからは、待合室での時間が気まずい沈黙に包まれたまま過ぎていった。
やがて、誰かが部屋に入ってきて、一同にアリーナへの移動を促す声が響いた。




